《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第3-5話「ヴィルザの揶揄」
丘のふもとに教会が見えてきた。緑の草地の上に、教会が白く輝いていた。まぶしくて直視することができなかった。この村にあるのも、マディシャンを崇めるマホ教の教会だ。ケネスが通っているハーディアル魔術学院と系列は同じだ。実際、マホ教は世界各国に強い影響力を持っている。魔法、という実在する奇跡があるのだから、それが信仰心を集めるチカラになっているのだ。
教会のトビラを叩くと、修道女が出てきた。冒険者ギルドのプレートを見せると、話が通じた。表の農園が、よくモンスターに荒らされる。見張っていて欲しい。あわよくば、モンスターがどこから来るのか突き止めて、ダンジョンを制圧して欲しい――とクエスト内容と同じことを言った。
ケネスたちは教会の中には入らずに、表の農園でサッソク見張りにつくことにした。草地に大の字になって寝転んだ。日差しが、ケネスのカラダを温めた。草地にも日光の温もりが漂っていて、ムワッとした青くさい臭いが鼻をついた。
「あの2人。楽しそうじゃな」
ヴィルザも隣に寝転んでいる。緑の地面に、紅色の髪が扇状に広がっている。色鮮やかな魅力があった。そのヴィルザの視線は、教会の白い壁にもたれかかっているロールとロビンに向けられていた。
「3人。この村では同じ世代なんだ。オレとロビンとロールと」
「ケネスだけ、帝都に行ったんじゃろう?」
「腐りたくなくってさ。こんなところで」
「おかげで私のことを見つけてくれたんじゃ、私とケネスは出会う運命であったということだな」
「……かもしれないな」
ヴィルザとの出会いは、ケネスの人生を一変させた。平和な地獄から抜け出したいと思ってケネスにとっては、良い出会いだった。大変なこともあるけれど、ヴィルザといる毎日は刺激的だ。
「しかし、ずいぶんと荒っぽい小娘じゃな。ロールだったか?」
「昔は、あんな感じじゃなかったんだけど……」
清楚な娘だった。
ケネスはひそかな恋心を抱いていたし、ロビンも同じだっただろうと思う。ロールの奪い合いだった。青春よりもっと青い過去が、胸裏によみがえってきた。
「あの娘より、私のほうが魅力的ではないか? どうだ?」
ヴィルザは上体を起こして、ケネスにしなだれかかってきた。甘い蜜の香りがフワッと漂ってくる。この可憐な魔神は、女性の香すらもあやつっているんじゃないかと、ときおり疑わしくなる。
「どっちが、どうとかないよ」
「ケネスはオクテじゃからなぁ。恥ずかしがらずに、私に告白してくれれば、乳ぐらいモませてやっても良いが」
「また、そうやってカラカう」
最初のころは、ヴィルザのその大胆な揶揄に、恥ずかしがったり照れたりしていたが、今ではスッカリ慣れていた。
「むぅ。面白くないのぉ。1年前まで、顔を真っ赤にして期待に満ちた表情をしておったのに」
「そりゃ、オレだっていつまでも子供じゃないからな」
今は17。
卒業するころには19だ。
「ほれ」
ヴィルザはケネスの手を取ると、みずからの胸元に押し当てた。ケネスの手のひらで、やわらかい肉がフニッと潰れる感触があった。
「うわわわわわッ」
「慌てておる。慌てておる。ヤッパリまだまだ子供じゃ」
「やめろよ!」
あわてて手を引っ込めたが、手のひらには、女の感触が残っていた。
「くひひひっ」
と、ヴィルザはイタズラっぽく笑っていた。
その悪ふざけは愛おしいと同時に、物悲しくもある。ケネスの興味が他にそれないように、ずっと自分にたいして反応してくれるように、構ってもらおうと必死になって見えるときがある。
どれだけ強い魔神でも、孤独には勝てないのだ。ヴィルザのまわりには、常に孤独の気配がまとわりついている。どれだけ揶揄してきても、明るく振る舞っていても、ケネスにすがりつくように生きている。
「ヴィルザの封印について――だけどさ」
「なんだ?」
「8つの封印のうち、マディシャンの杖を潰したから、あと7つだろ。そうなったら、封印を解いて出てくるんだろ」
「うむ」
そんなに寂しいなら、封印を解いてあげたいと思う。
でも――。
「世界征服しないって約束してくれるなら、もっと積極的に封印を解いてやってもいいけど?」
「それは厭じゃ」
と、こうなる。
何がなんでも世界征服をしたいらしいのだ。人間どもを千切っては投げて、世界を再び暗黒の時代に突き落としたいとかホザきはじめる。ウソでも、世界征服をしないと約束してくれれば、もっと封印解除に協力してあげるのに……。
あと7つ。
万が一、ヴィルザの封印が解けたら、そのときはもうオレは用済みになっちゃうのかなぁ――とケネスはときおりそんなことを考える。
「おーい。ケネス。こっちに来いよ。作戦会議だ」
と、ロビンの呼ぶ声がした。
教会のトビラを叩くと、修道女が出てきた。冒険者ギルドのプレートを見せると、話が通じた。表の農園が、よくモンスターに荒らされる。見張っていて欲しい。あわよくば、モンスターがどこから来るのか突き止めて、ダンジョンを制圧して欲しい――とクエスト内容と同じことを言った。
ケネスたちは教会の中には入らずに、表の農園でサッソク見張りにつくことにした。草地に大の字になって寝転んだ。日差しが、ケネスのカラダを温めた。草地にも日光の温もりが漂っていて、ムワッとした青くさい臭いが鼻をついた。
「あの2人。楽しそうじゃな」
ヴィルザも隣に寝転んでいる。緑の地面に、紅色の髪が扇状に広がっている。色鮮やかな魅力があった。そのヴィルザの視線は、教会の白い壁にもたれかかっているロールとロビンに向けられていた。
「3人。この村では同じ世代なんだ。オレとロビンとロールと」
「ケネスだけ、帝都に行ったんじゃろう?」
「腐りたくなくってさ。こんなところで」
「おかげで私のことを見つけてくれたんじゃ、私とケネスは出会う運命であったということだな」
「……かもしれないな」
ヴィルザとの出会いは、ケネスの人生を一変させた。平和な地獄から抜け出したいと思ってケネスにとっては、良い出会いだった。大変なこともあるけれど、ヴィルザといる毎日は刺激的だ。
「しかし、ずいぶんと荒っぽい小娘じゃな。ロールだったか?」
「昔は、あんな感じじゃなかったんだけど……」
清楚な娘だった。
ケネスはひそかな恋心を抱いていたし、ロビンも同じだっただろうと思う。ロールの奪い合いだった。青春よりもっと青い過去が、胸裏によみがえってきた。
「あの娘より、私のほうが魅力的ではないか? どうだ?」
ヴィルザは上体を起こして、ケネスにしなだれかかってきた。甘い蜜の香りがフワッと漂ってくる。この可憐な魔神は、女性の香すらもあやつっているんじゃないかと、ときおり疑わしくなる。
「どっちが、どうとかないよ」
「ケネスはオクテじゃからなぁ。恥ずかしがらずに、私に告白してくれれば、乳ぐらいモませてやっても良いが」
「また、そうやってカラカう」
最初のころは、ヴィルザのその大胆な揶揄に、恥ずかしがったり照れたりしていたが、今ではスッカリ慣れていた。
「むぅ。面白くないのぉ。1年前まで、顔を真っ赤にして期待に満ちた表情をしておったのに」
「そりゃ、オレだっていつまでも子供じゃないからな」
今は17。
卒業するころには19だ。
「ほれ」
ヴィルザはケネスの手を取ると、みずからの胸元に押し当てた。ケネスの手のひらで、やわらかい肉がフニッと潰れる感触があった。
「うわわわわわッ」
「慌てておる。慌てておる。ヤッパリまだまだ子供じゃ」
「やめろよ!」
あわてて手を引っ込めたが、手のひらには、女の感触が残っていた。
「くひひひっ」
と、ヴィルザはイタズラっぽく笑っていた。
その悪ふざけは愛おしいと同時に、物悲しくもある。ケネスの興味が他にそれないように、ずっと自分にたいして反応してくれるように、構ってもらおうと必死になって見えるときがある。
どれだけ強い魔神でも、孤独には勝てないのだ。ヴィルザのまわりには、常に孤独の気配がまとわりついている。どれだけ揶揄してきても、明るく振る舞っていても、ケネスにすがりつくように生きている。
「ヴィルザの封印について――だけどさ」
「なんだ?」
「8つの封印のうち、マディシャンの杖を潰したから、あと7つだろ。そうなったら、封印を解いて出てくるんだろ」
「うむ」
そんなに寂しいなら、封印を解いてあげたいと思う。
でも――。
「世界征服しないって約束してくれるなら、もっと積極的に封印を解いてやってもいいけど?」
「それは厭じゃ」
と、こうなる。
何がなんでも世界征服をしたいらしいのだ。人間どもを千切っては投げて、世界を再び暗黒の時代に突き落としたいとかホザきはじめる。ウソでも、世界征服をしないと約束してくれれば、もっと封印解除に協力してあげるのに……。
あと7つ。
万が一、ヴィルザの封印が解けたら、そのときはもうオレは用済みになっちゃうのかなぁ――とケネスはときおりそんなことを考える。
「おーい。ケネス。こっちに来いよ。作戦会議だ」
と、ロビンの呼ぶ声がした。
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