《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第2-22話「ガルシア・スプラウドの勧誘」

「やっと、捕まえた」



 ガルシアは男子寮の屋上に降り立つと、ケネスのことを抱きしめてきた。大きな乳房がケネスの顔をつつみこんだ。



「うぐっ」



 ヴィルザとは違う、もっと熟した果実の匂いに息がつまった。脳髄がジンと痺れてくる。ガルシアの抱擁から解放されてほんの少しだけ距離をとることが出来た。それでも、ガルシアの女の香みたいなのが、ベットリとケネスのカラダに付着しているような気がした。



「探したぞ。ケネス・カートルド」
「すみません。爵位授与式。逃げ出してしまって」



 咄嗟にそうあやまった。
 授与式から逃げ出したので、追いかけてきたのかと思ったのだ。



「どうして、逃げ出したりしたのだ?」



 まるで弟の身を案じる姉のような顔になって、ガルシアはケネスの顔を覗きこんできた。本来の弟であるロレンスは気絶してしまっているし、ガルシアは一顧だにしなかった。



「その……軍には入りたくなくて……あまり争いごとは……」



 ヴィルザのことは黙っておかなければならない。魔神ヴィルザハードが見えるだなんて、トテモじゃないが言えない。言っても信じてもらえないだろうし、信じられたら、それはそれで厄介なことになりそうだ。



「それだけの強さを持っているのに、争いたくないというのか。今の魔法も見事であった。私の《地獄の劫火ヘル・フレイム》をこうも簡単に鎮火させるとはな」



 ヴィルザが発した水だ。
 屋上はスッカリ水浸しになっている。



「弟さんが、死にそうになってましたけど」



「気にすることはない。それにしても、さっきの様子をすこし見ていた。わざわざ私の弟に合わせた《火球ファイヤー・ボール》を撃っていたようだが、訓練でもしていたのか?」



 ロレンスの実力に合わせたわけじゃないし、訓練をしていたわけでもない。説明がメンドウだ。



「ええ」
 と、うなずいておいた。



「愚弟が失礼なことをしているんじゃないかと思って、心配した」



「失礼だなんて、そんな」
 そりゃ大層失礼なヤツではあるが、姉のガルシアにそんなことは言えない。



「なら良いんだ」



「それにしても、どうしてガルシア魔法長官がここに?」



 どうも授与式をボイコットした件について叱りに来たわけではなさそうだ。



 普段の凛々しい表情からは見られない、慈愛に満ちた顔をガルシアはしていた。



「ケネス。君を迎えに来たのだ」
「オレを――ですか?」



 ガルシアの細くて白い指が、ケネスの頬にあてがわれた。心臓が激しく動悸していた。緊張のあまりケネスは動けなくなってしまった。



「君の実力は凄まじい。帝国闘技大会のベルモンド・ゴーランを倒したときから、私は君に目をつけていたのだ。君のチカラが今の帝国には必要だ。私の副官にバートリーという者がいるのだが、君も私の副官について欲しい」



 どう反応すれば良いのかわからなくて、助けを求める思いでヴィルザを見た。ヴィルザはさっきから、「こらーっ。私のケネスから離れろ!」と怒鳴り続けている。



「セッカクですが……」



「厭か?」
 ガルシアがあまりにも残念そうな顔をしたので、ケネスの胸がチクリと痛んだ。



「オレはまだ、そんな実力ではないんです」



「何を言う。君の実力は私が知っている。バートリーだって見ている。あのゲヘナを倒して、帝都を救った英雄ではないか。もっとも君が英雄だと知る者は決して、多くはない。それでも、私は知っている」



 話が通じない。
 そりゃ通じないだろう。



 ガルシアは、ケネスではなくて、その後ろにいる魔神のチカラに惚れているのだ。



「一から、勉強したいんです。魔法を」



「君のレベルは、この学校では低すぎる。魔法なら私が教えてやる。いや。私とて、君に敵うかはわからないのだが……」
 と、ガルシアは曖昧に笑った。



「卒業するまで、その返答、保留にはできませんか?」



 ガルシアは眉間にシワを寄せて、ジッとケネスのことを見つめてきた。夜風がビュと吹き付けてきた。ガルシアの短くなったプラチナブロンドの髪を揺らせていた。



「卒業まであと、おおよそ3年か。3年後には、私のもとに来てくれるのだな?」



「3年後。オレの実力をその目で確かめてください。そのとき合格なら、オレのことを雇ってください」



 3年、魔法について必死に勉強する。



 それでもヴィルザやガルシアのいる場所まで、手が届くかわからない。でも、この学校でやれるだけ、やってみたい。セイイッパイ手を伸ばしたときに――そのときに、ガルシアには本来の自分を見てもらいたかった。



「3年後となると、私はもう三十路前か……。しかし、ケネスが19歳になるわけだから、結婚はチョウド良いか……」



 なんだかよくわからないことを、ガルシアは指折り1人でつぶやいていた。



「あの?」
 いいだろう、とガルシアは意を決したようにうなずいた。



「3年、待つ」
「はい」



「しかし帝国は、そのあいだにも戦争をはじめるかもしれない。イザというときは君のチカラが必要になるかもしれない。でも、なるべく3年は待とう。それで君が納得して私のもとに来てくれるのなら」



「ありがとうございます」
「これを渡しておく。約束の品だ」
「これは?」



 帝国の旗印である、ドラゴンの刻まれたネックレスだった。



「もし、何か困ったことがあれば、それを見せると良い。それは帝国魔法長官である私の印だ。通行手形にもなるし、身分証明にもなるはずだ」



 ケネスの額に熱いものが押し付けられた。やわらかくて、熱くて、不思議な感触だった。キス、されたのだとわかった。



「約束だ。3年後まで待っている」
 ガルシアはそう言うと、身をひるがえした。



「弟さんには、会わなくても良いんですか?」
「そんなザコに用はない」



 ガルシアが、気絶しているロレンスを見つめる目は、怖ろしく冷たかった。本来の実力を知ったら、ケネスにも同じような目を向けられるのかもしれない。そう思うと、少し悲しかった。

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