《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第2-19話「ケネスとヴィルザの関係」

 夕食は、5台の長机が並べられている食堂でいただいた。生徒たちがそろって食べるということはないらしく、おのおの好きな時間に食べることができるようだった。



 食事を注文するのももちろん、学院内の通貨を使うことになる。通貨は月に一度、生徒たちに配られるのだそうだ。決められた額を1ヶ月のあいだに上手くヤリクリしないと、金欠になるから気を付けるんだよ――とヨナから注意をもらった。



 夜――。



 7時から9時までは、生徒の自由時間になるのだということで、ケネスはベッドでくつろいでいた。休みたい生徒は休み、勉強する生徒は机に向かっているらしい。ヨナはシャワーに行っている。浴室のほうから水が床を打つ音が聞こえてくる。



「あの相部屋のヨナとかいうヤツ、女じゃないのか」
 と、ヴィルザが胡乱な表情でそう言った。



「たしかに女性っぽく見えるから、ドキッとすることがあるんだけど」



「なに? まさか私以外の女性に目移りしておるのか? しかも、あんな男か女かもわからんようなヤツに」
 と、ヴィルザは目を剥いた。



「いや、ドキッとするってだけだから」



「浮気したら許さんからな」
 上目使いでにらんでくる。



「浮気って、もともとオレとヴィルザだって、そういう関係ってわけじゃないだろ」



「なにを言うておる。人間たちの関係よりも、もっと強固に、結ばれておろうが」



 ヴィルザはそう言って、寝転んでいるケネスの胸元を人差し指で軽くつきさしてきた。



「オレたちって、どんな関係なんだろうな」



 ケネスの何気ないつぶやきを受けて、ヴィルザもふと考えてみる気になったらしい。アゴに人さし指をあてて、首をかしげていた。真っ赤な長い髪がフワッと揺れて、甘い香りをケネスの鼻腔にあたえた。



「雄と雌じゃ」
「人と神様だけど」
「最弱と最強とも言えるかな」



 ケネスとヴィルザの結びつき……。



 それはトテモ説明のむずかしいものだった。友人。夫婦。恋人。思いつくかぎり、近しいものを当てはめてみるけれど、どれもシックリとは来ない。ひとつ。イチバン近いものがあるとすれば。



「恋人とか友人っていうより、まるで共犯者みたいな感じだ」



 相手がいなければ、1人では立っていられない。でも、相手のことを完全に信用してるわけでもない。好きだけど嫌い。嫌いなのに好き。ずっと傍に居て欲しい。はやく消えて欲しい。信頼と疑惑に満ちていて、どこか背徳の香りがある。誰にも、打ち明けることのできない、関係。



「共犯者か。たしかにその通りかもしれんな。ケネスがボスで、私が手下かのぉ」



「逆だろ」
 どう考えても、ヴィルザのほうがボスだ。



「いいや。ケネスのほうがボスじゃな。私はケネスに振り回されておる。マッタク扱いにくいコゾウじゃ」



 まったく……と1人でブツブツ呟いている。



 お互い相手のことをボスだと考えているなら、対等なのかもしれない。この恐ろしい魔神と対等の位置にいると思うと、自分の存在が大きくなったような錯覚をおぼえる。



「ケネスのスキル《不可視》を使えば、ヨナのシャワーを覗くことが出来るんじゃないか?」
 と、急に話題を戻した。



「そんなことしないって」



 男だったとしても、相手に失礼だ。女だったら、なおさら失礼だ。今度からマトモに目を合わせられる自信がない。



「下着を漁ってみるとか」
「下着は男物みたいだけど」
「なんじゃ、漁ったのか」



「漁ってないよ! 同じ部屋で暮らしてたら、自然と見えるんだって」



「まあ、冗談はさておき。ケネス」
 と、ヴィルザは急に深刻な口調になった。



「なに?」
 と、ケネスもベッドから上体を起こした。ケネスのベッドは窓辺になっており、上体を起こすと外を見ることができる。夜空には月が光っていた。



「消灯後に、屋上へ来るようにロレンスに言われておるだろう。その前に、マディシャンの杖について、少しでも調べておこうではないか」



 マディシャンの杖――。
 忘れてくれてるんじゃないかと思ったが、まぁ、忘れるわけがない。ヨナがシャワーに行っているあいだに、ケネスは部屋を出ることにした。

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