《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第2-18話「ガルシア・スプラウドの恋慕」
「ふぅ」
ガルシア・スプラウドはシャワーを浴びていた。湯けむりを通して、鏡には、みずからの裸体が映しだされている。
もう25かという気持ちと、まだ25だという気持ちが拮抗していた。まだ充分な張りのある乳房を持ち上げた。
つい数日前までは、自分のカラダなどに興味はなかった。髪もバッサリと切り落としてしまっているぐらいだ。外見が気になりはじめたのは、あの帝国闘技大会の日からだ。ガルシアを満足させてくれるだけの魔法を見た。いまでも、まぶたの裏に思い描くことができる。
(ケネス・カートルド……)
騎士爵位を授与するという話まで運んでいた。あの青年が、この手に入ったかと思った瞬間に、スルリと逃げ出されてしまった。
(私が帝国魔法長官という立場でなければ……)
自分の足で彼を追いかけていたかもしれない。それほどまでに、ガルシアは、ケネスに恋焦がれていた。
ケネスの風貌はたしかに貧弱だ。指で突いたら吹き飛んでしまいそうな、風体をしている。しかし、その虚弱そうなカラダから発せられる魔法は、まさに暴風のそれだった。
闘技大会はこの目で見た。王国軍が帝都に奇襲をかけてきたさいには、ケネスの獅子奮迅の活躍によって救われもした。
(まさしく、帝国を救った英雄だ)
しかし、騎士爵位授与から逃げ出したということもあり、ケネスを英雄と知るものはごくわずかだ。
その獅子奮迅の活躍を、ガルシアは目撃することができなかった。が、副長官のバートリーが見ている。バートリーは、ゲヘナに殺されそうになっていたところを、ケネスに命を救われたのだ。
そのバートリーから、ケネスの活躍は聞いた。トンデモナイ大きさの土人形を作りだして、あの王国6大魔術師であるゲヘナ・デリュリアスを圧倒したのだ。バートリーから何度も説明を受けて、今では、ケネスの活躍を見たかのように、脳裏で再現することができる。
(あの王国6大魔術師のゲヘナ・デリュリアス。呪い師の異名を持つ男だぞ)
この私ですら、おそらくは五分の相手だった――とガルシアは思う。
それをケネスは圧倒したのだ。
信じられない。
ただの青年が――だ。
そう思うと、やはりケネスが欲しいと思うのだ。その暴風のような魔力に包まれてみたい。このカラダをメチャクチャにされたいという被虐心まで、カマクビをもたげてくる。
ザー……。
熱い湯が、描かれた呪術式から流れ出てくる。水滴がガルシアの盛り上がった乳房をつたって、流れ落ちていく。
カラダの芯が、うずく。
自分でも厭になるぐらい、強い、ということに惹かれてしまうのだ。チカラの前では、帝国魔法長官の威厳は抜け落ちて、ただの女になってしまう。
しかし。
非常に残念なことに、ケネスひとりに構ってもいられない。
ゲヘナの奇襲によって、デラル帝国とケリュアル王国の停戦が微妙なものになっている。またいつなんどき、戦争になってもオカシクはない。一触即発の緊張状態にあるのだ。こんなときに、ひとりの男の尻ばかり追ってはいられない。
「失礼します」
ふいに、シャワー室の向こうから声が忍び込んできた。バートリーの声だ。
ここは城の執務室ではなく、ガルシアの屋敷だ。が、いつでもいつ何があるかわからないので、バートリーには勝手に入室することを許可している。
バートリーは物静かな女なので、ソッと近づいてきて、ガルシアの神経を乱すことなく、静かに報告をする。
《通話》でヤリトリすることもあるが、こうして直接話すこともある。
「何かあったか?」
「ケネス・カートルドの行方をつかむことができました」
「なに!」
「マホ教のハーディアル魔術学院にいるということです」
「私の母校ではないか。あんなところでいったい何をしているのだ?」
「そこまでは、わかりませんが、所在だけはつかめました」
確保しますか――と、バートリーが尋ねてくる。
思わずガルシアは笑ってしまった。
「あの男を確保できるようなヤツがいるのか?」
「いえ」
「下手に手を出して、また逃げられては困る。私がじきじきに向かう」
「しかし……」
「私がいないあいだ、帝国魔術師部隊はバートリーにあずける」
「今は、王国との関係が微妙な時期です。ガルシアさまが抜けられては……」
「心配するな。数日で戻る」
バートリーは沈黙した。
いつもなら、バートリーは、物分りよく引き下がるはずだ。が、今日にかぎっては、まだトビラにバートリーの影が揺らめいていた。
「……私も一緒に」
「それはダメだ。お前までいなくなると、それこそ何かあったときに対処できんだろう」
「なら、私がケネス・カートルドのもとに向かいます。私が連れ戻しましょう」
「いや。心配いらん。私の母校でもあるのだ」
「承知しました」
バートリーは淡々と応じたが、その声音にはわずかに悄然とした響きがあるのを聞き逃さなかった。
(バートリー。お前も……)
ケネスに興味があるのだろう。バートリーは、ケネスに救われている。そしてその目で、絶大なる魔法を目撃している。恋とはいかずとも、何か思うところがあるのかもしれない。
(悪いな。しかし、あの男はゆずれん)
と、ガルシアは呪術式に手をあてて、湯をとめた。もう夜だが、関係ない。一秒でもはやく会いたかった。
ガルシア・スプラウドはシャワーを浴びていた。湯けむりを通して、鏡には、みずからの裸体が映しだされている。
もう25かという気持ちと、まだ25だという気持ちが拮抗していた。まだ充分な張りのある乳房を持ち上げた。
つい数日前までは、自分のカラダなどに興味はなかった。髪もバッサリと切り落としてしまっているぐらいだ。外見が気になりはじめたのは、あの帝国闘技大会の日からだ。ガルシアを満足させてくれるだけの魔法を見た。いまでも、まぶたの裏に思い描くことができる。
(ケネス・カートルド……)
騎士爵位を授与するという話まで運んでいた。あの青年が、この手に入ったかと思った瞬間に、スルリと逃げ出されてしまった。
(私が帝国魔法長官という立場でなければ……)
自分の足で彼を追いかけていたかもしれない。それほどまでに、ガルシアは、ケネスに恋焦がれていた。
ケネスの風貌はたしかに貧弱だ。指で突いたら吹き飛んでしまいそうな、風体をしている。しかし、その虚弱そうなカラダから発せられる魔法は、まさに暴風のそれだった。
闘技大会はこの目で見た。王国軍が帝都に奇襲をかけてきたさいには、ケネスの獅子奮迅の活躍によって救われもした。
(まさしく、帝国を救った英雄だ)
しかし、騎士爵位授与から逃げ出したということもあり、ケネスを英雄と知るものはごくわずかだ。
その獅子奮迅の活躍を、ガルシアは目撃することができなかった。が、副長官のバートリーが見ている。バートリーは、ゲヘナに殺されそうになっていたところを、ケネスに命を救われたのだ。
そのバートリーから、ケネスの活躍は聞いた。トンデモナイ大きさの土人形を作りだして、あの王国6大魔術師であるゲヘナ・デリュリアスを圧倒したのだ。バートリーから何度も説明を受けて、今では、ケネスの活躍を見たかのように、脳裏で再現することができる。
(あの王国6大魔術師のゲヘナ・デリュリアス。呪い師の異名を持つ男だぞ)
この私ですら、おそらくは五分の相手だった――とガルシアは思う。
それをケネスは圧倒したのだ。
信じられない。
ただの青年が――だ。
そう思うと、やはりケネスが欲しいと思うのだ。その暴風のような魔力に包まれてみたい。このカラダをメチャクチャにされたいという被虐心まで、カマクビをもたげてくる。
ザー……。
熱い湯が、描かれた呪術式から流れ出てくる。水滴がガルシアの盛り上がった乳房をつたって、流れ落ちていく。
カラダの芯が、うずく。
自分でも厭になるぐらい、強い、ということに惹かれてしまうのだ。チカラの前では、帝国魔法長官の威厳は抜け落ちて、ただの女になってしまう。
しかし。
非常に残念なことに、ケネスひとりに構ってもいられない。
ゲヘナの奇襲によって、デラル帝国とケリュアル王国の停戦が微妙なものになっている。またいつなんどき、戦争になってもオカシクはない。一触即発の緊張状態にあるのだ。こんなときに、ひとりの男の尻ばかり追ってはいられない。
「失礼します」
ふいに、シャワー室の向こうから声が忍び込んできた。バートリーの声だ。
ここは城の執務室ではなく、ガルシアの屋敷だ。が、いつでもいつ何があるかわからないので、バートリーには勝手に入室することを許可している。
バートリーは物静かな女なので、ソッと近づいてきて、ガルシアの神経を乱すことなく、静かに報告をする。
《通話》でヤリトリすることもあるが、こうして直接話すこともある。
「何かあったか?」
「ケネス・カートルドの行方をつかむことができました」
「なに!」
「マホ教のハーディアル魔術学院にいるということです」
「私の母校ではないか。あんなところでいったい何をしているのだ?」
「そこまでは、わかりませんが、所在だけはつかめました」
確保しますか――と、バートリーが尋ねてくる。
思わずガルシアは笑ってしまった。
「あの男を確保できるようなヤツがいるのか?」
「いえ」
「下手に手を出して、また逃げられては困る。私がじきじきに向かう」
「しかし……」
「私がいないあいだ、帝国魔術師部隊はバートリーにあずける」
「今は、王国との関係が微妙な時期です。ガルシアさまが抜けられては……」
「心配するな。数日で戻る」
バートリーは沈黙した。
いつもなら、バートリーは、物分りよく引き下がるはずだ。が、今日にかぎっては、まだトビラにバートリーの影が揺らめいていた。
「……私も一緒に」
「それはダメだ。お前までいなくなると、それこそ何かあったときに対処できんだろう」
「なら、私がケネス・カートルドのもとに向かいます。私が連れ戻しましょう」
「いや。心配いらん。私の母校でもあるのだ」
「承知しました」
バートリーは淡々と応じたが、その声音にはわずかに悄然とした響きがあるのを聞き逃さなかった。
(バートリー。お前も……)
ケネスに興味があるのだろう。バートリーは、ケネスに救われている。そしてその目で、絶大なる魔法を目撃している。恋とはいかずとも、何か思うところがあるのかもしれない。
(悪いな。しかし、あの男はゆずれん)
と、ガルシアは呪術式に手をあてて、湯をとめた。もう夜だが、関係ない。一秒でもはやく会いたかった。
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