《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第2-17話「杖とロレンスのウワサ」

 寮に戻る。



 石造りの屋敷から玄関をくぐると、無数のトビラに囲まれた広間に入る。その広間の中央にはマディシャンの石像が鎮座ましましておられる。マディシャンの石像はジッと天井の一点を見つめていた。



「とりあえず夕食を食ってから、探索かな。でも、ロレンスとの約束もあるしな」



「あんな約束、破ってしまえば良かろう」
 と、ヴィルザが言う。



「そういうわけにもいかないよ。逃げたと思われるのは癪だし」



「なら、軽く探索して、今日のところはすぐに引きかえそうではないか」



「うん」



 ホントウは、マディシャンの杖なんか探しだしたくはない。それがヴィルザの封印を解く第1のカギとなっているなら、なおさらだ。しかし、口約束とはいえ、封印を解くという約束をしてしまったのも事実だ。



(まあ、ひとつだけなら……)
 と、ケネスは思っていた。



 八角封魔術というのは、8つの呪痕で形成されていると聞く。8つ壊さなければ、完全復活とはいかないとも聞いている。8大神だって、封印術を強固につくっているはずだ。すくなくとも、そのへんに生えているキノコ程度で封印を解けるようなものではなかった。1つぐらい壊しても問題はないだろう。



「あ、ヨナ」



 緑の髪をした華奢な後ろ姿を見つけたので、声をかけた。ヨナも夕食に行くところだったようだ。ケネスはまだ、食堂の位置があやふやだったので、ヨナに案内してもらうと助かった。



「この寮は――、寮だけじゃなくて、学校もだけど、物凄く複雑な造りをしてるからね」
 と、ヨナが言った。



「ヨナがいないと迷子になりそうだ」



「ボクだって、入学してからしばらく経つけど、まだ全部は覚えてないよ。同じ道を通っているはずなのに、ぜんぜん知らない場所にいることもあるぐらいだから」



「それはヨナが方向音痴なんじゃないのか?」



「違うって」
 と、ヨナが小さく笑って軽く小突いてきた。



 こういう友人とのなれ合いに、ケネスの心がジワッと潤った。いままでFランク冒険者だとバカにされることが多かった。ヴィルザと会ってからも、「圧倒的強者」として見られることはあっても、友達として見てはくれなかった。



 ホントウの自分を見てくれていて、なおかつ友人になってくれたのは、ヨナがはじめてかもしれない。だから、友人、という意味では、もうすでにケネスのなかで、ヨナは特別な人間だった。



「何か理由でもあるのかな。校舎とか寮を複雑にする理由が。単純なほうが覚えやすくて良いと思うんだけど」




「これはウワサなんだけど……」
 と、ヨナが口を寄せてきた。



「この男子寮には、マディシャンの杖が隠されてる――って」



 はたから見れば、ヨナとケネスが顔を寄せ合って話しているだけの光景だろう。ヨナの女性的な顔のつくりから、もしかすると恋人同士の語らいにも見えるかもしれない。が、実はもう1人耳を傾けている人物がいる。ヴィルザだ。マディシャンの杖、という単語が聞こえてきたようで、耳に手を当てて話を聞いている。



「オレもさっき、寮に戻ってくるときにロレンスたちを見つけてさ」



「大丈夫だったかい?」
 ヨナが心配そうな顔をした。



「見つからなかったから大丈夫なんだけど、マディシャンの杖がどうこう――って話が聞こえてきた」



「ロレンスは、マディシャンの杖を狙ってるのかもしれないね。姉のこともあるし」



「姉って、ガルシア帝国魔法長官のことか?」



 トビラをくぐると、長い石の通路が伸びている。他の生徒たちもその通路を歩いているから、食堂へ向かうところなのだろう。



「そうそう。本人から聞いたわけじゃないから、これもまたウワサになるんだけどさ」
 と、ヨナはさらに声の音量ボリュームを下げた。



「うん」



「ロレンスは、姉からあんまり好かれてないらしいんだよね。しかも、あの優秀な姉ってなると、コンプレックスもすごいだろうし」



「あー。それは辛いな」
 なんとなくだけど、ロレンスの痛みがわかってしまった。



 どうガンバっても、周囲に追いつけない。認めてもらうことができない。それはまさしくFランク冒険者だったころのケネスの悩みだった。



 だけど――。
 ケネスはチラリとヴィルザのほうを見た。



 無力なときは、チカラが欲しいと思うものだ。実際、ケネスも魔神のチカラを得てラッキーだと思ったこともある。しかし実際には、嬉しいことばかりでもない。扱いきれないほどのチカラを手に入れても、それはそれで困ることもある。



「ガルシア帝国魔法長官って、かなり強弱に固執する人らしいからね」
 と、ヨナが言った。



 ガルシア帝国魔法長官――。
 元気にしてるだろうか。

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