《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第2-12話「売られたケンカは消灯後に」

 次は歴史学の講義だった。本校舎のなかは広くて、どこが歴史学の教室なのかわからなかった。ひたすら石造りの廊下が伸びている。



「どこが教室だっけか?」



「歴史学の教室は、3階の奥まったところにあるんだ。ボクが案内するよ」



 さすがにヨナは、もうこの校舎に慣れているらしく、確固たる足取りで廊下をすすんだ。廊下と言っても、かなりの広さがあった。10人は並べるぐらいの横幅はあるし、天井なんてジャンプしても届かない。巨大な石の蛇の体内をウロついている気分だった。



「どうした。迷子かよ」



 ケネスたちの前に立ちはだかるようにして、ロレンスとそのトリマキのハンプティとダンプティが現れた。ロレンスは細見だが、ハンプティとダンプティがいるおかげで、通行止めをされるカッコウになった。



 ヨナはケネスの背中に隠れていた。



「どいてくれ。歴史学の講義があるんだ」
「謝るンならどいてやるよ」
「謝るってなにを?」



「さっき、姉さんの話題を出したことさ。お前みたいなガキが、帝国魔法長官である姉さんを語るなんておこがましいんだよ。姉さんは、この学校だって首席で卒業しているんだぜ」



 ロレンスは、姉であるガルシアのことを強く意識しているようだ。もしかすると、劣等感でも抱いているのかもしれない。



 しかし、今はそんな話に付き合っている暇もない。



「いいから、どいてくれ。歴史学の講義に遅れる。そっちもだろ」



「はッ。歴史学なんて辛気臭い講義。選択するわけないだろ。オレたちは次は休みだ」



 講義が選択性なので、人によっては休みになったりもするのだと、このときはじめて学んだ。



 ちなみにケネスが、歴史学をとったのは、チョットでもヴィルザのことを勉強しようと思ってのことだ。



「おい。ケネス。邪魔なら私に任せろ。すぐに片付けてやる」
 と、そのヴィルザが耳打ちしてきた。



 この学校では、ヴィルザのチカラは使わないでおこうと決心していた。



 そしてなにより、ヴィルザの「片付けてやる」は、すなわち、「殺してやる」ということだ。



 いくらロレンスが気にくわないと言っても、殺すのはさすがにマズイ。ベルモンド・ゴーランの二の舞だけはゴメンだ。学院にいられなくなる。



「言っておくけど、オレは君の姉さんと面識がある。……あんまり、話したことはないけど」



 ガルシア・スプラウドも、ヴィルザのチカラに魅了されている1人だ。



「ウ、ウソを言うなッ。オレの姉さんと面識があるわけないだろ。転校生だからって調子に乗ってるんじゃねェぞ」



 ロレンスが魔法陣を展開した。



 咄嗟にケネスも身構えたのだが、ロレンスはすぐにその魔法陣を引っ込めた。いったいどうしたのかと周囲を見渡すと、どうやら教員の1人がやって来るところだったらしい。ロレンスはかわりに顔を突き出してきた。



「今晩、消灯後に男子寮の屋上で待ってる。覚えとけよ」 
 そう言うと、ロレンスは立ち去って行った。



「何か言われたのかい?」
 ロレンスの声は、ホントウに小さくて、すぐ近くにいたヨナにも聞こえなかったようだ。



「いや。なんにもないよ」



 ゴーン。
 鐘が鳴っていた。
 講義がはじまる合図だ。



「行こう。遅刻だ」
 と、ヨナが駆けだした。

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