《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第2-10話「ガルシア・スプラウドの弟」
魔術学の講義が終わった。
ゴーン、ゴーン、ゴーン、という鐘の音が終わりの合図だった。たった1度の講義では、自分が成長した感はなかった。疲労感が頭にのしかかっていた。自分に興味のないことなら耐えられなかったかもしれないが、学ぶのは魔法のことだ。講義をひとつ受けるたびに、ヴィルザと対等な場所に上っているのだと思うことにした。
それより今、気になるのは――。
ケネスは隣席でうつむいている、ヨナに目を向けた。
「イジメられてるのか?」
「気にしなくて良いよ」
「そういうわけにはいかないだろ。相部屋なんだし」
ヨナは気まずそうに目をそらしていた。
もしかして、お節介かもしれないと思って、それ以上、センサクすることができなかった。
「よォ。ヨナ。パン買ってきてくれよ」
そう言って、ヨナに喋りかけてきた男がいた。プラチナブロンドの髪を短くした美青年だった。
どこかで見たことがあるような気がしたが、間違いなく初対面だった。
ヨナはすこし悲しそうな顔をしたが、半笑いを浮かべていた。その顔に、ケネスは見覚えがあった。仕方なく強者に媚びる。そういう表情だった。自分を見ているようで我慢できなかった。
「買いたいンなら、自分で行けば良いだろ」
と、ケネスが口をはさんだ。
プラチナブロンドの男は、まさか文句を言われるとは思っていなかったのか、ビックリしたような顔をしていた。そしてケネスを見て、納得したようにうなずいた。
「君は、編入生のケネスくんだったか」
「ああ」
「オレは、ロレンス・スプラウドだ。よろしく」
と、白い歯をのぞかせて、爽やかな笑みを浮かべていた。すこし香水の匂いのする男だった。
「スプラウド……?」
と問いかけると、ロレンスは笑みを深くした。
「良いところに気づいたな。オレは、帝国魔法長官ガルシア・スプラウドの弟だ。いずれはこのオレも、帝国魔術師部隊に入隊するつもりだ」
あのガルシア魔法長官の弟だと言われるとビックリだが、言われてみれば、たしかにその面影があるような気がする。
「……」
奇妙なめぐり合わせに、ケネスは唖然としていた。
「良いか。君は転校生だから、大目に見てあげるが、この学年ではオレがルールだ。それを弁えておいたほうが良いぜ」
ロレンスのその高慢な物言いに、ケネスはようやく我にかえった。
「ガルシア帝国魔法長官は、そんなに高慢じゃなかったと思うけど」
ガルシアの名前を出したことが気にくわなかったのか、ロレンスはサッと顔を赤らめた。
「ね、姉さんと、オレを比べるな!」
ロレンスはそう怒鳴ると、逃げるように教室から出て行った。その過敏な反応には、ケネスのほうも少し驚くものがあった。
他の生徒たちは事の成り行きを見守っていたようだが、ロレンスの退散とともに、興味を削がれたようだった。
「オレたちも次の講義だ。行こう。ヨナ」
「ありがとう。でも、あんまりボクに関わると、ケネスも彼のターゲットにされるよ」
「イジメられるってことか?」
「ロレンスはボクたち1年生のなかでは、イチバン魔術のあつかいに秀でてるんだ。顔も整っているし、運動神経も良い。冒険者でもないのに、ゴブリンを倒したこともあるそうだよ」
「気にすることないって、そんなこと。相部屋なんだし、仲良くしようぜ」
同じ部屋に住んでる相手とは、仲良くしておきたい。そう思うのが、普通だろう。
「君は、ロレンスが怖くないのか?」
「うん。まぁ……」
目をつけられるのは鬱陶しいとは思うが、怖いとは思わなかった。それなりに修羅場をくぐってきたのだ。
なにより、ケネスの背後には世界最恐の魔神が待機しているのだ。さっきから何かあれば、すぐにやり返してやるぞと言わんばかりの闘気をむき出しにしている。
小さなコブシを固めては、自分の手のひらに打ち込んでいた。ヴィルザを頼ろうというわけではなくて、この魔神に比べればロレンスなんて、そう怖れるような相手でもないと思えるのだった。
「ケネス。君は強いんだね」
と、ヨナは目を輝かせていた。
「強くないって。強くないから、この学校に来たんだし」
「ありがとう」
と、ヨナはうれしそうに笑った。
ヨナの笑みは、やっぱり直視できない色気を帯びていた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン、という鐘の音が終わりの合図だった。たった1度の講義では、自分が成長した感はなかった。疲労感が頭にのしかかっていた。自分に興味のないことなら耐えられなかったかもしれないが、学ぶのは魔法のことだ。講義をひとつ受けるたびに、ヴィルザと対等な場所に上っているのだと思うことにした。
それより今、気になるのは――。
ケネスは隣席でうつむいている、ヨナに目を向けた。
「イジメられてるのか?」
「気にしなくて良いよ」
「そういうわけにはいかないだろ。相部屋なんだし」
ヨナは気まずそうに目をそらしていた。
もしかして、お節介かもしれないと思って、それ以上、センサクすることができなかった。
「よォ。ヨナ。パン買ってきてくれよ」
そう言って、ヨナに喋りかけてきた男がいた。プラチナブロンドの髪を短くした美青年だった。
どこかで見たことがあるような気がしたが、間違いなく初対面だった。
ヨナはすこし悲しそうな顔をしたが、半笑いを浮かべていた。その顔に、ケネスは見覚えがあった。仕方なく強者に媚びる。そういう表情だった。自分を見ているようで我慢できなかった。
「買いたいンなら、自分で行けば良いだろ」
と、ケネスが口をはさんだ。
プラチナブロンドの男は、まさか文句を言われるとは思っていなかったのか、ビックリしたような顔をしていた。そしてケネスを見て、納得したようにうなずいた。
「君は、編入生のケネスくんだったか」
「ああ」
「オレは、ロレンス・スプラウドだ。よろしく」
と、白い歯をのぞかせて、爽やかな笑みを浮かべていた。すこし香水の匂いのする男だった。
「スプラウド……?」
と問いかけると、ロレンスは笑みを深くした。
「良いところに気づいたな。オレは、帝国魔法長官ガルシア・スプラウドの弟だ。いずれはこのオレも、帝国魔術師部隊に入隊するつもりだ」
あのガルシア魔法長官の弟だと言われるとビックリだが、言われてみれば、たしかにその面影があるような気がする。
「……」
奇妙なめぐり合わせに、ケネスは唖然としていた。
「良いか。君は転校生だから、大目に見てあげるが、この学年ではオレがルールだ。それを弁えておいたほうが良いぜ」
ロレンスのその高慢な物言いに、ケネスはようやく我にかえった。
「ガルシア帝国魔法長官は、そんなに高慢じゃなかったと思うけど」
ガルシアの名前を出したことが気にくわなかったのか、ロレンスはサッと顔を赤らめた。
「ね、姉さんと、オレを比べるな!」
ロレンスはそう怒鳴ると、逃げるように教室から出て行った。その過敏な反応には、ケネスのほうも少し驚くものがあった。
他の生徒たちは事の成り行きを見守っていたようだが、ロレンスの退散とともに、興味を削がれたようだった。
「オレたちも次の講義だ。行こう。ヨナ」
「ありがとう。でも、あんまりボクに関わると、ケネスも彼のターゲットにされるよ」
「イジメられるってことか?」
「ロレンスはボクたち1年生のなかでは、イチバン魔術のあつかいに秀でてるんだ。顔も整っているし、運動神経も良い。冒険者でもないのに、ゴブリンを倒したこともあるそうだよ」
「気にすることないって、そんなこと。相部屋なんだし、仲良くしようぜ」
同じ部屋に住んでる相手とは、仲良くしておきたい。そう思うのが、普通だろう。
「君は、ロレンスが怖くないのか?」
「うん。まぁ……」
目をつけられるのは鬱陶しいとは思うが、怖いとは思わなかった。それなりに修羅場をくぐってきたのだ。
なにより、ケネスの背後には世界最恐の魔神が待機しているのだ。さっきから何かあれば、すぐにやり返してやるぞと言わんばかりの闘気をむき出しにしている。
小さなコブシを固めては、自分の手のひらに打ち込んでいた。ヴィルザを頼ろうというわけではなくて、この魔神に比べればロレンスなんて、そう怖れるような相手でもないと思えるのだった。
「ケネス。君は強いんだね」
と、ヨナは目を輝かせていた。
「強くないって。強くないから、この学校に来たんだし」
「ありがとう」
と、ヨナはうれしそうに笑った。
ヨナの笑みは、やっぱり直視できない色気を帯びていた。
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