《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第2-4話「魔術学院長アド・ブルンダ」

 魔術学院長のアド・ブルンダは、ホト村に滞在していた。村の子どもたちに、魔法の使い方を教えに来ていたのだ。



 カァン、カァン、カァン――という村に響く鐘の音に追い立てられるように、宿から跳び出した。



 ちょうどそのとき、1匹のミノタウロスが宿屋のほうに猛進してくるところだった。1人の青年が、その軌道に立っているのが見て取れた。青年はシリモチをついてしまっている。



「あ、危ないっ」
 助けに入ろうとして、魔法陣を展開した。
 が――。



 ブルンダよりも先に、シリモチをついた青年が魔法陣を展開していた。地面から巨大な岩の手が生えてきた。猛進してくるミノタウロスを握りつぶしてしまった。



「おおっ……」
 と、ブルンダは感嘆の声をあげた。



 土系基礎魔法の《岩の手ロック・ハンド》だ。



 ただの地面から、巨大な手のひらを錬成するという、シンプルな基礎魔法である。魔術師学校でも、1年生でも扱える者はいる。



 とはいえ、規模が違う。



 本来の《岩の手ロック・ハンド》は、対象の足首をつかんで、つまずかせる程度の魔法だ。しかし今、ブルンダの目の前で顕現された《岩の手ロック・ハンド》は、はるかに大きい規模ものだった。ミノタウロスの巨躯を、ひとひねりしてしまったのだ。



 ミノタウロスの血肉が、周囲に散った。



(す、凄まじい……)



 と、ブルンダはあやうく腰を抜かすところだった。同じ魔法でも、術者の魔力が強ければ強いほど、その効果は大きくなる。今、目の前で使われた魔法は、常人の魔力をはるかにしのぐものだった。



(ただの基礎魔法とはいえ、ワシでもあれほど大きな《岩の手ロック・ハンド》を出せるかどうか……)



「無事か? 青年」
 とブルンダは声をかけた。



「あ、はい。大丈夫です」
 と、青年はヨロヨロと立ち上がった。



 頼りげのない青年だった。たった今、あの魔法を行使した人物には見えなかった。こんな子供に扱えるような魔法ではなかった。しかし、何よりの証拠に、ブルンダはこの瞳で、その魔法を目撃したのだ。



「見事な魔法であった」



「あ……いえ。今のはオレが使ったわけではなくて……」



「謙遜することはない。魔法陣を展開するのをちゃんと見ていた。どこの魔術師学校の出身かね?」



「いえ。魔術師学校には通っていません」
「通っていない?」
「はい」



 たしかに魔術師学校に通わずとも、独学で魔法を扱う者はけっして少なくない。とはいえ、一流の魔術師になろうと思うならば、独学では限界がある。今の魔法が、独学の者のそれとは思えなかった。



「ほほぉ。ならば、よほど良い師がついていると見える」



「師匠なんて別にいないですけど」



「い、いない? なら、今の魔法は独学で習得したものというのか?」



「だから、今の魔法はオレが使ったわけではなくて……」
 青年はシドロモドロになっていた。



 どうも要領をえない。
 しかし、面白い人材を見つけた――と魔術師学院の学院長の血が騒いでいた。



「魔術師学校に通ったことがないというのなら、良ければうちの学校に来ないかね」



「学校?」



「ワシは、マホ教の枢機卿のひとりであり、ハーディアル魔術学院の学院長もやっておる。そのチカラ、学問によってさらに高みへと上り詰めることができると見た」



「でも、学費が……」
 と、黒髪の青年は困惑したように眉をひそめた。しかし、その黒瞳の奥には、興味の光が宿ったのを、ブルンダは見逃さなかった。



「学費など、ワシのほうで何とかしてやる。それほどの実力。このまま放っておくのは、モッタイナイ」



 10年に1人……あるいは、それ以上の逸材かもしれない。ここで見逃すにはあまりに惜しい。



「すこし、考えさせてください」



「良かろう。心が決まれば、この石を使うと良い。ハーディアル魔術学院への《転移石》じゃ」



 ハーディアル魔術学院には、巨大な転移術式が施されている。この《転移石》を使うことで、いつでも魔術学院へと転移することができるようになっている。



「ありがとうございます」
 と、青年は《転移石》を受け取った。



「ワシはアド・ブルンダじゃ」
「オレはケネス・カートルドです」
「よし。覚えたぞ」



 この子は優れた魔術師になるという、ブルンダの予感があった。ブルンダは魔法の神髄を見たいという欲望があった。しかし、自分ではその極致にたどりつくことが出来ないとも弁えていた。



 だから、学院長などやっているのだ。



 この子ならば――。



 魔法の神髄を見せてくれるやもしれん――とブルンダは腹から突き上げてくるような、期待を押し殺して、やさしく微笑みかけたのだった。

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