《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第40話「ポーションの使い道」

 ゲヘナを殺したことで、瘴気は消えた。しかし、それで事態が良好へと向かったわけではない。



「うわぁぁぁ」
「キャァァッ」



 帝都は苦痛悶絶のルツボと化した。あちこちから悲鳴が聞こえる。ケネスのすぐ近くにいた親子も、苦痛にもだえていた。脂汗を流しているからよほど辛いのだろう。



「どうかしたんですか?」
「お、お腹が痛い……」



 子供のほうがそう言ってカラダを丸めている。ケネスは子供の着ていたブリオーをまくりあげて、お腹の様子を確認した。なんということか。そこには不気味な六芒星が、黒いアザのように浮き出ていたのだった。



「これは?」
 ケネスはヴィルザに問うた。
 ヴィルザは子供のお腹をのぞきこみながら応じた。



「おそらくだが、あのゲヘナとかいうコゾウの最後っ屁であろうな。呪術的な何かであろう」



「じゃあ、ホントウに殺したらマズかったんじゃ……」



 後悔してももう遅い。
 鉄の槍で貫かれたゲヘナは、背中にポッカリと大穴を開けて、倒れ伏している。



「殺さなくとも、いずれはこうなっておったであろう」



「どうすれば良いんだ?」



「呪術者が死んでも発動しているということは、おそらくこの世界のどこかに呪痕が存在してあるはずだ。ほれ、この私が永遠に封印されているのと同じようにな。以前にも、この話はしたっけな」



 ケネスの焦燥とはウラハラに、ヴィルザは平然としている。ヴィルザからしてみれば、人が何人死のうが、気にならないのかもしれない。



「まさか、それを探せっていうのか?」



 帝都の人たちが悶絶しているのに、この世界のどこかにある呪痕を探している暇なんて、ありはしない。



「まぁ、呪いを解く薬とかあるなら別だがな」



 そんな話をしている間に、子供のお腹のアザはますます濃厚になっている。しかも、その腹が妙にうごめいている。



「な、なんだ?」
 腹の内側からなにか――。



 キシャァァァ。



 腹を食い破って、スライムのようなものが出てきた。ケネスはあわてて飛び退いた。


 
「ほぉ。これは珍しい呪術であるなぁ。時間が経てば、人間の腹から人食いスライムの子供が羽化するらしいぞ」



 ヴィルザは興味深そうに見ているが、ノンキに構えている場合ではない。



「薬だ」
「ん?」



「たしか、無効化のポーションを注文していたはずだ。それを使えば、帝都の人たちを救えるんじゃないか?」



 はじめてヴィルザの顔に、焦りが見られた。



「待て待て待て。それは困る。そのポーションは私が使う予定だったではないか!」



 ヴィルザはそのつもりだったのだろう。



 ケネスは、そのポーションを自分に使って、ヴィルザのことを見えないようにしようと考えていたのだが、今はもうそのつもりはない。ヴィルザには助けられているし、少々さびしがりなところもある。魔神のチカラは怖いけれど、ケネスが魔法陣を出さなければ良いだけのことだ。



「我慢してくれよ。人助けだと思って」



「厭だ。人が何人死のうが私には関係ない。私は無効化のポーションのために、この帝都に戻ってきたんじゃないか」



 ご機嫌斜めのようだ。



「でも、神様がほどこした呪術なんだろう。前にも言ったけど、キノコでつくったポーションなんかで治せるのか?」



「やってみる価値はあるだろう」



「呪痕だっけ? それを探し出して壊せば良いんだろ。将来的にはオレがそれを見つけて、壊してやるから、今は我慢してくれよ」



《可視化》が使えるケネスには、可能であるはずだ。



「ホントウであろうな?」
「……たぶん」



 ヴィルザを復活させたくはない――というのがケネスの本音だ。世界を蹂躙した魔神を復活させたいなんて、逆に誰が思うのか。



「あーッ。ウソだな。ウソであろう。私は、その無効化のポーションを使いたいのだ!」



 ただの、駄々っ子である。
 数千年生きているとは思えない。



「そんなワガママ言うなら、無効化のポーション、オレが飲むぞ」



「へ?」



「もしもオレが飲んだら、オレはスキルを失うことになる。《可視化》がなくなれば、もうヴィルザのことは見えなくなるわけだろ」



 急にヴィルザの表情が歪んだ。
 ケネスの着ているブリオーの顔をうずめてくると、そのまま動かなくなった。



「お、おい。どうした?」
 ヴィルザが顔を離したときには、鼻水と涙でぐっしょりと濡れていた。



「この私をまた1人にするつもりか。おそろしいことを言う。お前は悪魔か」



「悪魔はお前だ」
「ぐぅ」
 と、またケネスの服に顔を伏せてしまった。



「将来的には呪痕とやらを壊してやるから、無効化のポーションは諦めてくれ。だいたい、キノコから作れるんだから、また作れるかもしれないだろ」



「……わかった」
 妥協してくれたようだ。



 しかし、数千年の孤独というのは、並大抵の寂しさではないのだろう。最強の魔神ヴィルザハードをこんなに子供っぽくしてしまうのだから。



「そうと決まれば、すぐにマスクに連絡をとろう。無効化のポーションが今どこにあるのか、聞きださなくちゃいけない」



「仕方がない。よかろう」
 ヴィルザはしぶしぶうなずいた。



 そんなヴィルザが少しだけ、愛おしく感ぜられた。

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