《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第25話「捕縛」

 いったい何が起きたのか。
 すぐにはわからなかった。



 周囲を見渡す。



 洞窟の中であることに、変わりはないようだ。大空洞になっている。天井には岩のツララができている。岩のツララからは水滴がポツン……ポツン……と、一定のリズムを落としている。



 暗くはない。
 炎の球が大量に浮かんでいるからだ。魔法でつくりだした炎だろう。



「ほほぉ。まさか、こんなガキが引っかかるとはな」
 しわがれた声がした。



 ケネスはもう16歳で大人に片足を踏み入れていると思っていた。だが、最近何かとガキとかコゾウとか言われることが多い。あんまり面白くない――とか言っている場合ではない。



「これはいったい?」
「転移術式を張っておいて正解じゃった」
「転移術式……」



 術式ということは、魔法ではない。
 呪術だ。



 絵を描いて効果を発動するというもの。すると、あらかじめ描かれていた魔法陣を、ケネスは踏み抜いてしまったのだろう。



 そして、ここに転移させられたのだ。



「ワシらを尾行しておったじゃろう。それでチッと罠を仕掛けさせてもらった。コゾウを、ここに転移させたというわけじゃ」



「バレていたんですか。尾行」



「このワシをナめられては困るのぉ。自己紹介でもしておこう。ワシは王国6大魔術師の1人。ゲヘナ・デリュリアス。人はワシのことを、呪い師とも呼ぶ。自分で言うのもなんじゃが、呪術のほうの造詣を深めておってな」



 ゲヘナと名乗った男は、もうかなりの老人だった。頭は禿げている。わずかだが長い髪が残っている。眉は白く太い。目元には年の疲れが宿っている。鼻は高くて、若いころはイケメンだったのではないかと思わせられた。口元はだらしなく開いている。アゴからもチョロチョロと数本の長い白髭が伸びていた。顔の老衰とはウラハラに、首は太く、姿勢はカクシャクとしている。そして、王国魔術師のローブを着ている。



「ここは、さっきと同じ洞窟ですか?」



 ならば、ヴィルザが見つけ出してくれるはずだ。転移させられたせいで、ヴィルザの気配は完全に消えてしまっている。



「さあな。それを教えるわけにはいかん」
「いったい何を企んでいるんです」



「帝都に致命的な一撃を打ち込むためにな。ワシらが《透明化トランスパレント》して帝国に忍び込み、こうして転移魔法で仲間を呼び集めるという算段じゃ」



 大空洞の地面には巨大な、六芒星が描かれている。その星の中央がうすぼんやりと光った。すると、光の中から赤い甲冑を着た人間が、3人あらわれた。



「王国騎士を、ここに転移させておる。戦力が整い次第、帝都に乾坤一擲の戦を仕掛けるという算段じゃ。なかなかうまく考えたじゃろう?」



 転移の呪術を使えば、国境を突破する必要もなく、大部隊を侵入させられるというわけだ。



 たしかに画期的な作戦だが、なかなか出来ることではない。《透明化》を使える魔術師。転移呪術を使える呪術師。最低でもその2人が必要になる。王国軍にとってそれは、ゲヘナ1人いればその条件はクリアしている。



 問題は、それだけではない。



 敵陣近くに潜り込むということは、逆に、逃げられない可能性も大きい。ゲヘナという戦力を失う可能性は充分に考えられる。



 まさに、王国軍にとって乾坤一擲の戦というわけだ。



 ちょっとした正義感と好奇心によって、こんな災禍に跳びこむことになるとは思ってもいなかった。



「今は、停戦中ですよ」



「停戦中だから、警備がすこし緩い。やるなら今しかなかろう」



「国際問題になります。他の列強諸国が黙ってませんよ」



 捕えられたケネスは、これから自分がどういう処遇を受けるのか不安で仕方がない。何か、しゃべっていないと落ち着かないのだった。



「帝都さえ落とせば、王国は覇権国家となる。そうなれば他の国など、どうとでもなるわい」



 たしかにその通りだった。



 列強諸国とはいえ、帝国と王国は群を抜いた戦力を誇っている。万が一、帝都が落ちるようなことがあれば、これから数百年は王国に敵なしと言われている。それは、逆のことも言える。王国さえ隷属させれば、帝国に敵なしとなる。だからこそ2国は、互いに戦争を続けているのだ。



 ヴィルザが魔法で助けてはくれまいか――と期待して、魔法陣を展開してみた。反応なし。



 かっかっかっ――とゲヘナが笑う。



「ムダじゃい。この檻にも呪術をかけておってな。並の魔法は発動できんようになっておる。魔法陣を展開しても、魔法は使えんじゃろう」



「……」
 それで手足の拘束がないのだろう。
 魔法陣だけ展開できても、どうにもならない。



「コゾウも、《透明化トランスパレント》を使うということは、そこそこ腕に自信のある魔術師なのじゃろうが、この呪術はやぶれまい」



「はぁ」
 どちらにせよ、ケネスはもとから、魔法なんて使えない。
 ヴィルザが見つけてくれるまで、待つしかない。



 ゲヘナか表情をひきしめると、
「この作戦には王国の命運がかかっておる。失敗するわけにはいかん。帝国側にバレる前に、実行に移さねばな」
 と、強い語調で言った。



 その語調からして、考え直すつもりはないようだ。まぁ、ここまで周到に準備をしていて、いまさら引き返しはしないだろう。



 ゲヘナはナイフを引き抜いて、ケネスに近づいてきた。



 ……チビりそう。

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