《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第24話「罠」
宿屋を出る。
《透明化》の2人の背中は、まだ捕えられる距離にあった。ヴィルザはケネスにも《透明化》の魔法をかけてくれた。これで、透明人間を透明人間が追いかけるという構図の出来上がりである。
ケネスから相手が見えるが、相手からはケネスが見えないはずだ。王国魔術師たちは、町を出て丘陵を歩いて行く。そっちの方向は帝都のほうだ。
「ヤバいなぁ。帝都に近づいちゃってるよ」
殺人罪で追われている身としては、あまり近づきたくはない。帝都に戻るにつれて、ベルモンド・ゴーランを殺してしまったことが思い出された。陰鬱な気分になる。
「透明になっておるから、気づかれはせんだろう」
「それはそうだけど」
薬草を摘むためにずっと丘陵を走り回っていただけあって、ケネスは足腰だけは自信がある。走るのが速いわけではない。だが、長距離歩くぐらいなら苦にもならない。
しばし、丘陵を歩いていると、洞窟が見えてきた。洞窟じたいはそれほど珍しいものではない。モンスターたちの巣穴になっているのだ。冒険者たちが駆除しているが、巣穴は残る。その1つだろう。王国魔術師の2人は洞窟に入って行った。
「入っていったようだが?」
追いかけるのか、どうするのかという目をヴィルザが向けてくる。
「もう少しだけ、追いかけてみよう」
ここまでついて来たのに、引き返すのは惜しい気もする。何を企んでいるのかつかんでから、引き返したかった。
ケネスは今まで、モンスターのなかで最弱の部類に入るゴブリンすら倒せなかった。モンスターの巣穴に入るのは抵抗がある。しかし、すでに冒険者たちが駆除してくれた、空き巣である可能性も大きい。
そもそも王国魔術師が先に入って行ったのだ。モンスターがいたとしても、彼らが倒してくれるだろう。
洞窟の入口に近寄る。入口は、そこそこの大きさがある。人が手を広げたぐらいの直径だった。《可視化》。暗闇を見通す。見通すといっても限界がある。これは下着を覗けても、さらにその内側まで見えないのと同じ理屈だ。つまり、熟練度が足りない。半径3メートルほどの視界は確保することが出来た。
おそるおそる、足を踏み入れる。
「コゾウ」
と、ヴィルザが話しかけてくる。
「?」
と、目だけでケネスは応じる。
ヴィルザはしゃべっても、その声はケネスにしか届かない。だが、ケネスがしゃべればそれは肉声となり、洞窟内に響くことになる。声をおさえても、王国魔術師に聞きつけられる可能性は大きい。
「罠には気をつけろよ。王国魔術師がここに潜んでいるということは、侵入者にたいする罠を張ってる可能性はあるからな」
「ん」
首をタテに振った。
それに関しては大丈夫だろうという慢心があった。ケネスには《可視化》がある。罠なんか張られていたら、すぐに見つけられるはずだ。それにヴィルザもいる。チカラに頼りたくないとは言っても、魔神が味方にいると思うと油断してしまうのだった。
で。
その慢心ゆえだったのかもしれない。ケネスの足元が薄く発光した。
「あ……」
そこには、仄青く灯る魔法陣が光っていた。ケネスにも見えなかったのは、ただの見落としである。いくら《可視化》があるとはいえ、はじめから視界に入っていないものまでは、視認できない。
「いかんッ。離れろッ」
今まで聞いたことのないほど、鬼気迫るヴィルザの声がケネスの声に届いた。しかし、次の瞬間にはケネスの近くから、ヴィルザの姿は消えていた。
かわりに、ケネスの周囲には大量の青いローブの連中がいた。10人……いや、20人はいる。王国魔術師だ。ケネス自身は鉄檻の中に入れられていた。
《透明化》の2人の背中は、まだ捕えられる距離にあった。ヴィルザはケネスにも《透明化》の魔法をかけてくれた。これで、透明人間を透明人間が追いかけるという構図の出来上がりである。
ケネスから相手が見えるが、相手からはケネスが見えないはずだ。王国魔術師たちは、町を出て丘陵を歩いて行く。そっちの方向は帝都のほうだ。
「ヤバいなぁ。帝都に近づいちゃってるよ」
殺人罪で追われている身としては、あまり近づきたくはない。帝都に戻るにつれて、ベルモンド・ゴーランを殺してしまったことが思い出された。陰鬱な気分になる。
「透明になっておるから、気づかれはせんだろう」
「それはそうだけど」
薬草を摘むためにずっと丘陵を走り回っていただけあって、ケネスは足腰だけは自信がある。走るのが速いわけではない。だが、長距離歩くぐらいなら苦にもならない。
しばし、丘陵を歩いていると、洞窟が見えてきた。洞窟じたいはそれほど珍しいものではない。モンスターたちの巣穴になっているのだ。冒険者たちが駆除しているが、巣穴は残る。その1つだろう。王国魔術師の2人は洞窟に入って行った。
「入っていったようだが?」
追いかけるのか、どうするのかという目をヴィルザが向けてくる。
「もう少しだけ、追いかけてみよう」
ここまでついて来たのに、引き返すのは惜しい気もする。何を企んでいるのかつかんでから、引き返したかった。
ケネスは今まで、モンスターのなかで最弱の部類に入るゴブリンすら倒せなかった。モンスターの巣穴に入るのは抵抗がある。しかし、すでに冒険者たちが駆除してくれた、空き巣である可能性も大きい。
そもそも王国魔術師が先に入って行ったのだ。モンスターがいたとしても、彼らが倒してくれるだろう。
洞窟の入口に近寄る。入口は、そこそこの大きさがある。人が手を広げたぐらいの直径だった。《可視化》。暗闇を見通す。見通すといっても限界がある。これは下着を覗けても、さらにその内側まで見えないのと同じ理屈だ。つまり、熟練度が足りない。半径3メートルほどの視界は確保することが出来た。
おそるおそる、足を踏み入れる。
「コゾウ」
と、ヴィルザが話しかけてくる。
「?」
と、目だけでケネスは応じる。
ヴィルザはしゃべっても、その声はケネスにしか届かない。だが、ケネスがしゃべればそれは肉声となり、洞窟内に響くことになる。声をおさえても、王国魔術師に聞きつけられる可能性は大きい。
「罠には気をつけろよ。王国魔術師がここに潜んでいるということは、侵入者にたいする罠を張ってる可能性はあるからな」
「ん」
首をタテに振った。
それに関しては大丈夫だろうという慢心があった。ケネスには《可視化》がある。罠なんか張られていたら、すぐに見つけられるはずだ。それにヴィルザもいる。チカラに頼りたくないとは言っても、魔神が味方にいると思うと油断してしまうのだった。
で。
その慢心ゆえだったのかもしれない。ケネスの足元が薄く発光した。
「あ……」
そこには、仄青く灯る魔法陣が光っていた。ケネスにも見えなかったのは、ただの見落としである。いくら《可視化》があるとはいえ、はじめから視界に入っていないものまでは、視認できない。
「いかんッ。離れろッ」
今まで聞いたことのないほど、鬼気迫るヴィルザの声がケネスの声に届いた。しかし、次の瞬間にはケネスの近くから、ヴィルザの姿は消えていた。
かわりに、ケネスの周囲には大量の青いローブの連中がいた。10人……いや、20人はいる。王国魔術師だ。ケネス自身は鉄檻の中に入れられていた。
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