《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第23話「王国魔術師の影」

「ん――?」


 ケネスは水を飲みながら、周囲を見ていた。宿屋のいる人たちのことを見ていた。帝都には出稼ぎにエルフが来たり、獣人族と言われる獣と人間の混血なども多くいた。しかし、このあたりは人間ばかりだなぁ――と、そんなことを思いながら、目を巡らせていた。不審な人物を発見した。



「どうかしたか?」
「透明人間がいる」



 普通なら見えないはずだ。



 ケネスに見えているのは、《可視化》のスキルの影響だ。半透明になって見えている。それが逆に、ケネスの目には目立って見えるのだった。「私は不審者です」という看板をぶら下げて歩いているようなものだ。



 2人。
 青い服ローブをはおっている。帝国では、あまり見かけないローブだなと感じた。遠方からの旅人という可能性はある。イタズラ目的で、カラダを透明にしているのかもしれない。相手は見えていないと決めつけているのだろう。だから、ケネスも見えていないフリをした。



「どんなイデタチをしてるか、説明してみよ」



 ヴィルザが上から目線でそう言う。自分よりあきらかに年下の少女に、命令されるのはあまり面白くない。面白くないが、中身が魔神だとわかると変な矜持プライドなんか、あっさり消すことが出来る。



「青いローブを着てる」
「頭巾は?」
「かぶってる」
「他に特徴は?」



 ヴィルザと頬を寄せ合うように話をした。まるで愛をかたらう恋人だ。こういうときだけは、少女の香を感じることが出来るので、接触できることにありがたみを覚える。



「ローブにフォークみたいな模様が入ってる」



 今ちょうど、テーブルの上にはフォークが置かれている。拾い上げて、なんとなく手慰みにした。



「それは、王国魔術師の服だな」
 ヴィルザは平然とそう言った。



「詳しいんだな」



「トウゼンだ。いったい何年この世界をさまよっていると思っておるか」



 存在を消されて、世界中を旅していたのかもしれない。



「でも、どうして王国魔術師がこんなところにいるんだよ」



 ここは、帝都が近い。
 王国軍からしてみれば、敵陣の心臓付近ということになる。



「今は、停戦中であるから、ノンビリ敵国を観光――なんてあるはずないな。おそらく、諜報部隊か何かであろうと思う」



 透明になっていれば、敵国に用意に侵入できる。
 その理屈はわかるが――。



「《透明化トランスパレント》して入ってくるヤツの対策とか、してないのか?」
 尋ねると、ヴィルザは吹き出した。



「くはははッ。面白いことを言う」



「なんでだよ。別に間違えたこと言ってないだろう」



 帝国に魔術師がいれば、王国にだっている。
 ふつうは魔法にたいする何かしらの対抗策を練るだろうと思う。



「たしかに並の魔法であれば、対抗策も練れる。しかし、《透明化トランスパレント》は風系最上位魔法。最上位魔法を使える人間は限られてくるし、その中でも《透明化トランスパレント》を使える者は、このご時世そうはおらん。つまり、それだけ対抗策も難しい。もっとも、コゾウのような目を持っていれば別だがな」



《可視化》


 今までたいしたスキルではないと思っていた。女性の下着を覗く以外に、使用用途を見出せなかったのだ。《透明化トランスパレント》を見破れると考えれば、けっこう使えるかもしれない。だが、限定的すぎる。



 そんなことを考えている場合ではない。



「つまり、王国魔術師の優秀な人物が、帝都に潜り込もうとしてるってことかな?」



「かもしれんな」
「どうしよう」



「私にとっては、どうでも良いがな。しかし、祖国を思うならば、王国魔術師が潜り込んでいることを、帝都の人間に知らせたほうが良いであろう」



 ホントウに関心がなさそうに、ヴィルザは言った。



透明化トランスパレント》している人物が、ふとケネスのほうを見た。見ているのが、バレた? そんなはずはない。ケネスは、誤魔化すために何気なく水を飲んだ。不審に思われなかったようだ。宿を出て行った。



「帝都の人間に知らせるって言っても、オレの今の立場じゃ、知らせられないよ」



 殺人罪で追われているのだ。
 騎士と顔も合わせられない。



「ならば、放っておけば良い」
「どうなるんだろう?」



「さあ。さすがにそこまでは私にもわからん。だが、帝都の有利になるようなことには、ならんだろうな」



 停戦中とはいえ、敵国の優秀な魔術師が潜り込んでいるのだ。
 これは非常事態である。



 別に、熱狂的愛国者というわけではない。だが、いちおうは自分の生まれ育った国だ。見捨てることは出来ない。



 厄介なのはこの非常事態を、ケネス1人しか認知していないということだ。周りの人に言っても、信じてもらえるはずがない。相手は透明なのだ。



「何か、証拠が必要だ」
「尾行してみるか?」
「……うん」



 王国魔術師が何をやろうとしているのか、不審な気配の尻尾をつかむのだという正義感があった。それ以上に、好奇心もあった。なににせよ、ここで見過ごすという選択肢はない。

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