《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第20話「孤独の放浪者 分け前と勧誘」
酒場に戻って、分け前の話になった。木造の円卓の中央には採取してきた無効化のキノコの入った布袋がある。それだけではない。人食いスライムのキバや、粘液もついでに採取してきた。
人食いスライムはCランク冒険者相当のモンスターだ。ただ、それは1匹の場合だ。今回は20匹ぐらいの数がいた。それ相応のキバやら粘液を採取してきたから、冒険者組合に持ち込めば、けっこうな値段に買いとってくれるはずだ。
テイラは、呆然とケネスのことを見つめていた。こうして見てみると、悪くない顔に思えてくる。
むしろ、見てるとドキドキしてくる。
我ながら都合の良い女だと思う。
弱いと思っていたときは侮っていたのに、強いとわかった途端に、これだ。いや、そうじゃない。助けてもらった感動が植え付けられているのだ。
「今回は別に、冒険者組合からクエストをもらったわけじゃありません。オレたちが金になると思って、無効化のキノコを採取しに行っただけのことです」
と、ガルが言う。
「ええ」
と、ケネスがうなずく。
「それでも、モンスターの部位を冒険者組合に持ち込めば、お金になると思います。ですので、無効化のキノコはすべて差し上げます。モンスターの部位だけは我々がもらう。そういう分配でどうでしょうか?」
テイラは、あわてて口をはさんだ。
「でも、カートルドさんがいなかったら、私たちは全滅してました。今回は、すべてカートルドさんに差し上げるのが筋かと思いますが」
ケネスで良いですよ――とケネスが言った。
最上魔法を使うような人を相手に、呼び捨てはできない。そんな決まりはない。気持の問題だ。一方で、最上位魔法を使う人から呼び捨てにしても良いと言われるのは、光栄なことでもある。
妥協点としては、ケネスさん、だ。
「オレはホントウに、無効化のキノコの話を偶然聞きつけただけですから。それさえ手に入れば、良いんです」
「じゃあ、こうしましょう」――とマスクが口をはさんだ――「無効化のキノコも、モンスターの部位も一度こちらで預かりますよぉ。で、無効化のキノコを、帝都の薬師に渡して、薬にしておきます。薬にしてケネスさんにお渡しします」
「薬にしてくれるんですか。それは助かります」
これで少なくとも、薬を渡すときに、もう一度会える。
「無効化のキノコがたくさん採取できましたけど、どれぐらいの量をポーションにしましょうか?」
ケネスは思案気に首をひねると、
「正直、どういうポーションなのかオレにはよくわからないんですけど、可能なかぎりつくっていただけると助かります」
「わかりました」
――ということで、交渉は終わった。
分け前の話はここまでだ。
ガルは神妙な面持ちで、次なる交渉を持ちかけた。
『孤独の放浪者』にとっては、こっちのほうが大事な話である。
「もしよければ、『孤独の放浪者』のチームに入ってはいただけませんか?」
「オレがですか?」
「それだけのチカラがあるので、オレたちは足手まといかもしれません。ですが、もし手が空いているときに、手伝ってもらえるだけでも良いのです」
最上位魔法を使う魔術師だ。
どこからでも、引く手あまただろう。だが、チカラを隠しているようだから、ケネスの実力を知っている者は少ないかもしれない。
ケネスは沈鬱な顔をした。
「お誘いはありがたいんですが、色々と事情がありまして」
シツコク勧誘してみたが、ケネスはどうしても首をタテには振らなかった。
「そうですか……」
ガルは落胆を隠し切れていなかった。テイラも同じである。なによりもガッカリしたのは、マスクかもしれない。マスクは魔術師だ。ケネスとともにいれば、勉強になることも多いはずだ。
人食いスライムはCランク冒険者相当のモンスターだ。ただ、それは1匹の場合だ。今回は20匹ぐらいの数がいた。それ相応のキバやら粘液を採取してきたから、冒険者組合に持ち込めば、けっこうな値段に買いとってくれるはずだ。
テイラは、呆然とケネスのことを見つめていた。こうして見てみると、悪くない顔に思えてくる。
むしろ、見てるとドキドキしてくる。
我ながら都合の良い女だと思う。
弱いと思っていたときは侮っていたのに、強いとわかった途端に、これだ。いや、そうじゃない。助けてもらった感動が植え付けられているのだ。
「今回は別に、冒険者組合からクエストをもらったわけじゃありません。オレたちが金になると思って、無効化のキノコを採取しに行っただけのことです」
と、ガルが言う。
「ええ」
と、ケネスがうなずく。
「それでも、モンスターの部位を冒険者組合に持ち込めば、お金になると思います。ですので、無効化のキノコはすべて差し上げます。モンスターの部位だけは我々がもらう。そういう分配でどうでしょうか?」
テイラは、あわてて口をはさんだ。
「でも、カートルドさんがいなかったら、私たちは全滅してました。今回は、すべてカートルドさんに差し上げるのが筋かと思いますが」
ケネスで良いですよ――とケネスが言った。
最上魔法を使うような人を相手に、呼び捨てはできない。そんな決まりはない。気持の問題だ。一方で、最上位魔法を使う人から呼び捨てにしても良いと言われるのは、光栄なことでもある。
妥協点としては、ケネスさん、だ。
「オレはホントウに、無効化のキノコの話を偶然聞きつけただけですから。それさえ手に入れば、良いんです」
「じゃあ、こうしましょう」――とマスクが口をはさんだ――「無効化のキノコも、モンスターの部位も一度こちらで預かりますよぉ。で、無効化のキノコを、帝都の薬師に渡して、薬にしておきます。薬にしてケネスさんにお渡しします」
「薬にしてくれるんですか。それは助かります」
これで少なくとも、薬を渡すときに、もう一度会える。
「無効化のキノコがたくさん採取できましたけど、どれぐらいの量をポーションにしましょうか?」
ケネスは思案気に首をひねると、
「正直、どういうポーションなのかオレにはよくわからないんですけど、可能なかぎりつくっていただけると助かります」
「わかりました」
――ということで、交渉は終わった。
分け前の話はここまでだ。
ガルは神妙な面持ちで、次なる交渉を持ちかけた。
『孤独の放浪者』にとっては、こっちのほうが大事な話である。
「もしよければ、『孤独の放浪者』のチームに入ってはいただけませんか?」
「オレがですか?」
「それだけのチカラがあるので、オレたちは足手まといかもしれません。ですが、もし手が空いているときに、手伝ってもらえるだけでも良いのです」
最上位魔法を使う魔術師だ。
どこからでも、引く手あまただろう。だが、チカラを隠しているようだから、ケネスの実力を知っている者は少ないかもしれない。
ケネスは沈鬱な顔をした。
「お誘いはありがたいんですが、色々と事情がありまして」
シツコク勧誘してみたが、ケネスはどうしても首をタテには振らなかった。
「そうですか……」
ガルは落胆を隠し切れていなかった。テイラも同じである。なによりもガッカリしたのは、マスクかもしれない。マスクは魔術師だ。ケネスとともにいれば、勉強になることも多いはずだ。
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