《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第18話「孤独の放浪者 人食いスライム」

 しばし歩く。



 その間に、無効化のキノコの特徴を説明した。ケネスはその説明を受けて、どちらに行けば良いのか指示を出した。



「しっ」
 トツジョ。
 緊張感を多くふくんだ声音を、ガルが発した。



 みんなの足がピタリと止まる。



 正面にはすでに湖が見えていた。低木が生い茂っており、足場はあまりよろしくない。湖が近いせいか、それとも鬱蒼と生い茂った木々が陽光を遮っているせいか、足場は酷くぬかるんでいる。



 いや。
 足場がぬかるんでいるのは――。



「スライムがいるからね」
「おやおや。さっそくご登場ですねぇ」



 マスクはそれこそスライムのような、粘着質なしゃべりかたをする。



 湖の周囲に、青いブヨブヨとしたスライムがうごめいている。ただのスライムではない。口元にはびっしりとキバが生えている。俗に、人食いスライムと言われるモンスターだ。



 スライムは弱くても、人を食う。ならばなぜ人食いスライムと呼ばれるか? その獰猛性と残虐性ゆえだ。みっちりと生えたキバで、ユックリと咀嚼しながら食べる。その結果、目も覆いたくなるような、凄惨ひどい現場ができるのは言う間でもない。



「無効化のキノコは、あの水辺の縁に生えてるヤツですね」



 ケネスが指差す。
 紫色に白い斑点を着飾った毒々しいキノコが、生えている。スライムの巣の真っただ中である。



「うわぁ。厄介なところに生えてやがる」
 ガルが眉間のシワを、さらに深くした。



「どうしましょう?」



 テイラはスライムの数を数えた。1……2……3……4匹だ。1匹1匹が半径1メートルぐらいの大きさがある。




 作戦が決まった。



 まず、マスクが水系基礎魔法の《水流波ウェーブ》を起こす。4匹のスライムを一気に湖の奥に押し流す。



 その間に、可能なかぎりの無力化のキノコを採取する。スライムが接近してくるのをガルが剣でけん制して時間稼ぎをする。採取が終わったら、ガルをシンガリにしつつ後退。



「ムリに人食いスライムを倒す必要はない。けれど、出来るだけ無力化のキノコは採取しておきたい。売れば金になるしな」



「では、いきますよぉ」



 マスクが作戦通りに《水流波ウェーブ》を放った。マスクの織りなした魔法陣からは、水が放射される。それを受けた4匹のスライムは、湖に押し流される。作戦通りだ。



「ゆくぞッ」
 ガルを先頭に、先頭から躍り出る。



 水辺に生えている無効化のキノコを摘み取っていく。予想外にたくさん生えている。



「これは金になりますよぉ」
 と、マスクが興奮した声をあげた。



 持ってきた布袋に可能なかぎりの、無効化のキノコを詰め込んだ。その間、ガルが剣でけん制しつつ、人食いスライムの接近を妨げる。



「よし。撤退ッ」
 と、ガルが合図を出す。
 ここまでは作戦通りだ。



 案外チョロイじゃない――とテイラは気をゆるめた。



 しかし――。



 逃げようとした先にも、人食いスライムが3匹いた。別の方向に逃げようとしても、人食いスライムが姿を見せる。



「クソッ。囲まれてるのか?」
「ウソ……」



「囲まれているなら仕方がない。どこか一点を突破して……」



 ガルがそう言っているときだ。



「ヒャッ」
 テイラは転んだ。



 テイラの足を、人食いスライムの手がつかんだのだ。いや。スライムに手があるのかどうかは、よくわからない。ただ、手のようにグーインとスライムが伸びてきたのだ。ヌメヌメとした厭な感触が、テイラの足をとらえて離さなかった。



「いやッ」
 それだけではない。



 ズルズルとテイラのことを引きずり込んでくる。目の前に迫っているのは、スライムの口だ。人食いスライムの名にふさわしい、グロテスクな口だ。びっしりとキバが生えそろっており、飢えているかのように躍動している。



「いやいやいやッ」
 必死に足掻こうとした。地面に生えている雑草をつかむが、簡単にちぎれてしまう。



「テイラッ」
「ガルッ。助けてッ」
「わかってるッ」



 ガルが疾駆してくる。テイラにからみつくスライムの腕。それをガルが断ち斬ろうと剣を振り上げた。そのとき――ガルの剣もまた、スライムの腕に絡め取られてしまった。



「しまったッ」


 ガルの腕にもスライムの腕が絡みついてくる。もはやスライムの腕がクモの巣のように張り巡らされているのだった。マスクにいたっては、四肢をつかまれている。



「こ、こんなところで……」



 溺れまいするかのように、テイラは手足をばたつかせた。無駄な抵抗だ。着実にスライムの口が迫っている。



 怖くて、涙が出てきた。

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