《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第16話「孤独の放浪者 森の入り口」
森の周囲は木の柵で囲まれている。
入口は、木造の門になっている。
森というのは資源の宝庫だ。木々、動物、果実、清流。なんでもそろっている。帝国は森を自分の領地にしたいと考えているが、そう上手くはいかない。
森には先住民たちがいる。エルフだ。人間はエルフたちとの交渉によって、木々を得ている。魔法で木材を出しても、魔法で生み出したものは一定時間が経つと消えてしまう。人間たちが無闇に森林を伐採しないために、勝手に森に入ることは、エルフたちが許していない。
ただ、許可を取れば入れる。
「冒険者だ。モンスター退治のついでに、無効化のキノコを探している。中に入れてもらいたい」
門兵のエルフに、ガルが言った。
「良かろう」
と、門が開かれた。
「無効化のキノコは、ここより南西にある湖の近くに自生している。ただし、人食いスライムの巣になっているから、気を付けるように」
と、助言までくれる。
冒険者は、森に入りやすい。
森の中にはモンスターが跳梁跋扈しており、これにはエルフたちも悩まされている。モンスター退治を仕事としている冒険者を、エルフは歓待してくれる。冒険者組合としてもエルフとは、政治的同盟をむすんでいる。
「良かったのですか? あれを仲間に加えても?」
テイラは、ガルにそう問いかけた。
後ろから遅れてついて来る青年――ケネス・カートルドのことだ。
「どうしても無効化のキノコが欲しいって言うんだから、別に良いだろう」
「足手まといでしょう」
と、テイラは一蹴した。
一緒について来たいと言うから、身分を明かしてもらった。冒険者だと言う。冒険者証明書を見せてもらった。たしかに冒険者だった。ランクはF。Fランクと言えば、薬草摘みが関の山である。
無効化キノコが自生している場所には、人食いスライムがいる。門兵のエルフが言っていたことに間違いはない。ハッキリ言って、足手まといである。
こうして見ていても、Fランクという階級に納得がいく。筋力を鍛えている気配もないし、魔法を使えるような雰囲気もない。
ただの男性だ。
「無効化キノコは、Cランク冒険者相当のモンスターだ。まぁ、オレたちなら何とかなるだろう」
「数にもよります」
「うん。まぁ、そうだけど、人助けは大切なことだからな」
無効化のキノコは、滅多に使われるものではない。それを必要としているということは、きっと両親なり、友人なりに、呪いに犯された人がいるのだろう――というのがガルの推測だった。
「人が良すぎます。ただ、無効化キノコを売ってやろうという、狡い悪党かもしれないじゃないですか」
テイラは口に出してみて、ありえる、と思った。
イデタチからして、そういった小者の雰囲気がプンプンする。
「まさか。小者ではあるだろうけど、あれは悪いヤツじゃないよ。オレの目はそう見ているね」
ガルは自信満々に言った。
眉間にシワが寄ったまま笑うから、知らない人が見ると凄んでいるように見えてしまう。けれど、見慣れると愛嬌のある笑顔だとわかる。コワモテだが、あきれるほどの聖人君子なのだ。
「そうですねぇ。あれはきっと悪い人物ではないでしょう。弱そうですけどねぇ」
と、マスクも言う。
マスクがマスクをしているのは、顔にヤケドをおっているせいだ。そこにエピソードがあるわけではない。火系魔法の練習中に、自分の顔を焼いてしまったらしい。
「そうですか。そうでしょうとも。良いですよ。あんな足手まといを連れて行く結果、危ない目にあっても知りませんからね」
自分だけ性格の悪いような感じになってしまって、テイラはふてくされた。
「仮に騙されていたとしても、それであの青年が助かるのなら良いじゃないか」
「それはさすがに、人が良すぎます」
ガルもマスクも人が良い。
それは彼らの出自にも、何等かの影響があるのかもしれない。『孤独の放浪者』の3人は、孤児だった。
帝都の孤児院の経営をささえるために、冒険者となったのだ。それで帝都周辺の治安維持もかねて仕事をこなしている。孤児院の貧しさは、まだ若いガルの眉間に刻まれたシワが物語っている。
最年長はリーダーのガル。次にマスク。
最年少は、14歳のテイラとなる。
冒険者はいちおう14歳からなれる。しかし、最年少のテイラがチームの要でもある。テイラは癒術を使える。傷を受けたものをすぐに回復させられる癒術者がいると、モンスター退治もかなり楽になる。また、この3人の中では自分がイチバンしっかりしてるんじゃないかしら――とさえテイラは思っている。
「そろそろ気を引き締めて行動するぞ。薄暗くなってきた」
まだ、日はのぼったところだ。
暗くなってきたのは、鬱蒼としげる森のせいだ。明かりは木の葉をかいくぐってまだら模様を落としているが、奥に行くにつれてもっと暗くなりそうだ。
入口は、木造の門になっている。
森というのは資源の宝庫だ。木々、動物、果実、清流。なんでもそろっている。帝国は森を自分の領地にしたいと考えているが、そう上手くはいかない。
森には先住民たちがいる。エルフだ。人間はエルフたちとの交渉によって、木々を得ている。魔法で木材を出しても、魔法で生み出したものは一定時間が経つと消えてしまう。人間たちが無闇に森林を伐採しないために、勝手に森に入ることは、エルフたちが許していない。
ただ、許可を取れば入れる。
「冒険者だ。モンスター退治のついでに、無効化のキノコを探している。中に入れてもらいたい」
門兵のエルフに、ガルが言った。
「良かろう」
と、門が開かれた。
「無効化のキノコは、ここより南西にある湖の近くに自生している。ただし、人食いスライムの巣になっているから、気を付けるように」
と、助言までくれる。
冒険者は、森に入りやすい。
森の中にはモンスターが跳梁跋扈しており、これにはエルフたちも悩まされている。モンスター退治を仕事としている冒険者を、エルフは歓待してくれる。冒険者組合としてもエルフとは、政治的同盟をむすんでいる。
「良かったのですか? あれを仲間に加えても?」
テイラは、ガルにそう問いかけた。
後ろから遅れてついて来る青年――ケネス・カートルドのことだ。
「どうしても無効化のキノコが欲しいって言うんだから、別に良いだろう」
「足手まといでしょう」
と、テイラは一蹴した。
一緒について来たいと言うから、身分を明かしてもらった。冒険者だと言う。冒険者証明書を見せてもらった。たしかに冒険者だった。ランクはF。Fランクと言えば、薬草摘みが関の山である。
無効化キノコが自生している場所には、人食いスライムがいる。門兵のエルフが言っていたことに間違いはない。ハッキリ言って、足手まといである。
こうして見ていても、Fランクという階級に納得がいく。筋力を鍛えている気配もないし、魔法を使えるような雰囲気もない。
ただの男性だ。
「無効化キノコは、Cランク冒険者相当のモンスターだ。まぁ、オレたちなら何とかなるだろう」
「数にもよります」
「うん。まぁ、そうだけど、人助けは大切なことだからな」
無効化のキノコは、滅多に使われるものではない。それを必要としているということは、きっと両親なり、友人なりに、呪いに犯された人がいるのだろう――というのがガルの推測だった。
「人が良すぎます。ただ、無効化キノコを売ってやろうという、狡い悪党かもしれないじゃないですか」
テイラは口に出してみて、ありえる、と思った。
イデタチからして、そういった小者の雰囲気がプンプンする。
「まさか。小者ではあるだろうけど、あれは悪いヤツじゃないよ。オレの目はそう見ているね」
ガルは自信満々に言った。
眉間にシワが寄ったまま笑うから、知らない人が見ると凄んでいるように見えてしまう。けれど、見慣れると愛嬌のある笑顔だとわかる。コワモテだが、あきれるほどの聖人君子なのだ。
「そうですねぇ。あれはきっと悪い人物ではないでしょう。弱そうですけどねぇ」
と、マスクも言う。
マスクがマスクをしているのは、顔にヤケドをおっているせいだ。そこにエピソードがあるわけではない。火系魔法の練習中に、自分の顔を焼いてしまったらしい。
「そうですか。そうでしょうとも。良いですよ。あんな足手まといを連れて行く結果、危ない目にあっても知りませんからね」
自分だけ性格の悪いような感じになってしまって、テイラはふてくされた。
「仮に騙されていたとしても、それであの青年が助かるのなら良いじゃないか」
「それはさすがに、人が良すぎます」
ガルもマスクも人が良い。
それは彼らの出自にも、何等かの影響があるのかもしれない。『孤独の放浪者』の3人は、孤児だった。
帝都の孤児院の経営をささえるために、冒険者となったのだ。それで帝都周辺の治安維持もかねて仕事をこなしている。孤児院の貧しさは、まだ若いガルの眉間に刻まれたシワが物語っている。
最年長はリーダーのガル。次にマスク。
最年少は、14歳のテイラとなる。
冒険者はいちおう14歳からなれる。しかし、最年少のテイラがチームの要でもある。テイラは癒術を使える。傷を受けたものをすぐに回復させられる癒術者がいると、モンスター退治もかなり楽になる。また、この3人の中では自分がイチバンしっかりしてるんじゃないかしら――とさえテイラは思っている。
「そろそろ気を引き締めて行動するぞ。薄暗くなってきた」
まだ、日はのぼったところだ。
暗くなってきたのは、鬱蒼としげる森のせいだ。明かりは木の葉をかいくぐってまだら模様を落としているが、奥に行くにつれてもっと暗くなりそうだ。
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