《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第7話「帝国闘技大会・出場」

 控室を出る。



 練兵場に足を踏み出す。ものすごい歓声が沸き起こった。闘技場は歓声と熱気のるつぼと化しているのだった。しかし、それらはケネスに送られる声援ではない。



 ケネスの対戦相手――なんという巡り合い! 相手は、ついさきほど帝都の外で言葉を交わした相手、ベルモンド・ゴーランであった。



「よぉ。コゾウ、また会ったな。まさか闘技大会にエントリーしてるとはな」



 帝国12騎士の1人。
 双剣のゴーラン。



 この人物と対峙しているだけでも、自分の卑小さを思い知らされる。観衆とは別に熱気のようなものを当てられる。それは、ゴーランから発せられている闘志に違いなかった。場違いな感におそわれて、逃げ出したくなった。



「ま、トーナメントのマッチ相手はランダムだからな。恨みっこなしだ。しかし、闘技大会に参加した熱意だけは認めてやるよ」



「はい」
 もはや、はい、としか言えない。



 対戦相手は強大だし、こんな大衆の前に出るのもはじめてだった。緊張が唇すら動かせない。



 審判をしていた騎士が、ピー、と開戦の笛を鳴らした。



 ゴーランは、さっそく得意の双剣を取りだした。両方ともグラディウスと言われる比較的に小さい剣だ。



 小さいといっても60センチほどはある。デラル帝国にとどまらず、ベルジュラック全体に広く流通しているものだ。しかし、問題なのはそれが刺突武器だということだ。鎧の隙間なんかを狙って刺しこむのに特化している。



 つまり、確実にどこか深いケガをする。



「ゆくぞ。コゾウ!」
 ゴーランは疾駆した。



 ゴーランは布の鎧クロスアーマーを身にまとっていた。重装備でないのは機動性を重視しているためだろう。その分、速い。それこそまさに刺突する一本の剣のように駆けてくる。



 刺突と速度。



 その2つこそが、ゴーランを帝国12騎士の地位まで押し上げた要素だった。どれだけ重装備でも、鎧には必ず隙間がある。


 
 ゴーランは俊足で近づき、その間隙を確実に突く。騎士というよりも、あるいはその剣技は暗殺者とも言えた。少なくとも1対1の接近戦では、ゴーランの右に出るものは数少ないだろう。


 ケネスは、唖然とそれを見つめていた。
 あまりの速度に、見惚れていたのだ。



「こらッ。ボーッとするな。貴様は受けることが出来んであろうがッ」
 ヴィルザの声を受けて、ケネスはハッと我にかえった。



 そうだ。



 ケネスに受けはない。
 魔神に任せていれば何とかなるだろうと思っていた。なので、これといった装備はしていない。魔術師は魔法によって皮膚を硬化させたりするが、そういった魔法武装もしていない。



 オマケの武器は、雑草を摘み取ったりするために使っていた、ナイフ一本だ。じゃっかん錆びている。



「ど、どうすれば……」
「魔法陣だ!」



「わかった」
 すぐさま魔法陣を展開した。



「クソッ。攻撃魔法は間に合わん。防御魔法を展開するぞ」



 ゴーランはすでに、ケネスの眼前にまで迫っていた。おそるべき殺気をふくんだ目を、ケネスに投げかけてくる。それだけで失禁しそうになった。



 そして――。
 ガッ。
 グラディウスによる刺突が、ケネスの右肩に刺しこまれた。



「うわぁぁッ」
 ケネスは弾き飛ばされた。



 10メートルは吹っ飛んだ。お尻からみっともなく着地する。着地の衝撃が尻から、脳天にしびれあがってくる。



「くぅぅ。痛ててて」
「ふぅ。間に合った」
 と、ヴィルザは安堵の息を落とした。



「何をしたんだ?」
「土系上位魔法である、《鉄の皮膚アイアン・スキン》を使った」



 魔法というのは基礎魔法が「火、土、水、風」の4種だ。その上位魔法が「酸、鉄、氷、葉」となる。さらにその最上位魔法が「熱、硬、凍、斬」の4種になる。



 上位魔法までは自然界に存在する物質を召喚する魔法となる。たとえば、火球の魔法であれば、炎の球を出現させる。相手を溺れさせようとするなら水を出現させる。



 最上位魔法となると様子が変わる。魔法というチカラによって直接その現象を起こすのだ。物を熱しようと思えば、炎を出現させなければならない。しかし、最上位魔法は物を熱しようとすれば、火を起こすことなく直接、沸騰させることが出来る。



 簡単に言えば、最上位魔法ともなると何でもあり――ということだ。組み合わせ次第でも、自在に魔法を発現できる。魔神が最初に見せたように、大地をめくり、マグマを吹きださせるようなことも可能となる。もちろん、それは個人の魔力の量にもよる。しかしながら、だいたいの魔術師は基礎魔法の習得までだ。



 で――。
 今使用されたのは、土系上位魔法だ。
 鉄魔法ということになる。



鉄の皮膚アイアン・スキン



 おそらくゴーランが刺突したケネスの皮膚を、鉄にしたのだろう。その結果、刺されることはなく、吹き飛ばされることになったのだ。

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