《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第1話「下着を見透かして」
下着を見ていた。
周囲。だだっ広い丘陵になっている。雑草が生い茂り、ふりそそぐ陽光を受けて眩しいばかりに輝いている。
丘陵には街道が通っている。街道部分はだけは、地肌を露出させている。そこを、武装した冒険者や、積荷を積んだ馬車などが行き交っている。
冒険者の鎧の音や、馬車のきしむ音やらが響いている。談笑している者の声もする。
気品のある女性たちが、馬車に揺られている。
ケネス・カートルドは、そんな女性たちの下着を見ているのだった。別に、女性たちが肌をさらけ出しているわけではない。絢爛なドレスに身を包んでいる。どうガンバっても、ふつうなら下着なんて見えない。
ケネスには、見える。
このベルジュラックという世界に生まれてきた人間は、必ず1つ固有のスキルを持っている。
体質的なものかもしれない。
ケネスは、《可視化》というスキルを保持していた。
本来、見えないはずのものを見ることが出来る。透視、という意味もふくんでいる。平素であればクソの役にも立たないスキル。役に立つのは、こういうときぐらいだ。
「ほほぉ」
と、思わず声が漏れる。
清楚な女性を見つけた。黒髪を風になびかせて、透き通るほどに肌は白い。青白い肌をおしげもなく陽光にさらしている。黒瞳には品の良い静けさがある。
見た目のわりには、下着が派手だ。
紫色のヒモのようなブラジャーとパンツを身につけている。馬車の荷台の上で、やわらかそうなお尻が、むっちりと潰れているのが見て取れる。馬車の小刻みな振動にあわせて、胸の果実がタプタプと揺れている。
「ごくっ」
生唾。
ひとえにスキルと言っても、熟練度というものがある。使いこまなければ、上手くは使えないということだ。ケネスはまだまだ熟練度が足りない。下着の内側までは見通すことができないのだった。それが、焦れったいようで、安堵するという微妙な感情をケネスに与えていた。
おっぱいか……。
めくるめく果実に、思いをはせる。
どんな感触をしてるんだろうか。やわらかいんだろうか。それとも、適度な弾力があるんだろうか。
ブラジャーの内側はどうなってるんだろうか
もっと《可視化》を使いこめば、見えちゃったり?
想像をたくましくするにつれて、おのずと鼻息が荒くなる。
「こら」
と、急に後頭部を叩かれた。
「痛てっ」
ケネスは後頭部をおさえた。
振り向く。
見知らぬ青年が立っていた。青髪で、ケネスよりかはじゃかん年上だろうと思われた。ケネスが16歳だから、青年のほうは20歳手前といったところだ。
「ロクでもないスキルを使っているだろう」
「げッ。どうして、わかったんですか」
「オレぐらいにもなると、どこで誰がスキルを使っているかぐらい、敏感に感じ取れるようになる」
「はぁ。……どちらさまでしょうか?」
尋ねると、青年はあきれたような顔をした。
「このオレのことを知らない? 帝国12騎士の1人。ベルモンド・ゴーランさまだ」
青年は、得意気に名乗った。
ケネスは心臓が跳躍するのを感じた。
帝国12騎士というと、帝国内で12人のうちに入る騎士だ。ベルモンド・ゴーラン。双剣使いとして名を馳せている剣士だ。若くして12騎士に入ったというのも、風聞を広める追い風となった。
「こ、これは失礼しました!」
と、ケネスはあわてて頭を下げた。
ケネスは一介の冒険者だ。とてもじゃないが、対等に話し合える立場ではない。
「良い良い。今日は大事な闘技大会の日だからな。変な騒ぎでも起こさなけりゃ、オレも文句を言わねェよ」
名前を知ってくれていたことが嬉しいのか、ゴーランはたちまち上機嫌になった。
「ゴーランさまも、闘技大会に?」
「おうよ。名前を広める良いチャンスだ。勝てば賞金も出る」
今日は、帝都で闘技大会が開かれる。腕に自信のある冒険者、騎士、魔術師がこぞって参加している。見に来る人も多い。それで、こんなに人通りも多いのだった。
「ゴーランさまなら、優勝も狙えるでしょうね
と、言っておいた。
別にゴマをするわけではないが、気にいられて損をする相手ではない。
「わかってるじゃねェーか、コゾウ。他にも帝国12騎士の連中が参加することになってる。あと、帝国12魔術師もな」
帝国12魔術師は、帝国12騎士の魔法ヴァージョンのようなものだ。
「そんなにスゴイ方々が参加されているのですか」
「なにせ帝都の闘技大会だからな。みんながみんな参加するわけじゃないけど、これに参加しない手はないだろう」
デラル帝国は、隣国のケリュアル王国と戦争中だ。今は停戦しているが、すぐに再戦することは目に見えている。闘技大会には、戦争に使えそうな人材調達という意味もあるのだろう。
なににせよ、ケネスには関係のないことだ。
「ガンバってください」
「サンキュー」
と、ゴーランは帝都の入口へと歩いていった。
「はぁ」
思わずため息が漏れた。
すごいよなぁ、と思う。
ゴーランはケネスとあまり歳の差もない。なのに、帝国12騎士の1人なのだ。
一方。
ケネスはどうだ?
Fランク冒険者として日々、薬草集めに奔走しているだけだ。16歳にもなると、優秀な人間は、すでにCランクの冒険者として活躍している。モンスターの生息する、ダンジョン攻略なども行っているようだ。
「はぁ」
ため息が止まらない。
Fランクの冒険者は、周囲から「Fラン」と略されて小馬鹿にされるのが常だった。ケネスだって上のランクに上がりたいと思っている。そのためには昇格試験を受けなければならない。ゴブリンの討伐が、その試験であった。何度か挑戦しているが、そのたびに命からがら逃げだすありさまだ。
(いったいオレに何が、足りないのかねぇ)
根本的に、冒険者に向いてないのかもしれない。固有スキルも《可視化》だ。帝国12騎士と言われるような連中は、みんな戦闘の特化したスキルを保有している。
たとえば、帝国12騎士の中で最強と言われ、英雄とまでうたわれるソーディラス・レオという男は、《製剣》と言われるスキルを保持している。その場で、無数の剣を生成するのだそうだ。
とはいえ――。
才能がないから、冒険者をやめるというわけにもいかない。ケネスは冒険者になるために、帝都まで上京してきたのだ。親の反対まで振り切っての上京だ。後には、引きかえせない。
今も――淑女の下着姿に目を奪われたが――薬草採取の途中である。さっさと仕事を終わらせて、冒険者組合に戻ろうと思った。
周囲。だだっ広い丘陵になっている。雑草が生い茂り、ふりそそぐ陽光を受けて眩しいばかりに輝いている。
丘陵には街道が通っている。街道部分はだけは、地肌を露出させている。そこを、武装した冒険者や、積荷を積んだ馬車などが行き交っている。
冒険者の鎧の音や、馬車のきしむ音やらが響いている。談笑している者の声もする。
気品のある女性たちが、馬車に揺られている。
ケネス・カートルドは、そんな女性たちの下着を見ているのだった。別に、女性たちが肌をさらけ出しているわけではない。絢爛なドレスに身を包んでいる。どうガンバっても、ふつうなら下着なんて見えない。
ケネスには、見える。
このベルジュラックという世界に生まれてきた人間は、必ず1つ固有のスキルを持っている。
体質的なものかもしれない。
ケネスは、《可視化》というスキルを保持していた。
本来、見えないはずのものを見ることが出来る。透視、という意味もふくんでいる。平素であればクソの役にも立たないスキル。役に立つのは、こういうときぐらいだ。
「ほほぉ」
と、思わず声が漏れる。
清楚な女性を見つけた。黒髪を風になびかせて、透き通るほどに肌は白い。青白い肌をおしげもなく陽光にさらしている。黒瞳には品の良い静けさがある。
見た目のわりには、下着が派手だ。
紫色のヒモのようなブラジャーとパンツを身につけている。馬車の荷台の上で、やわらかそうなお尻が、むっちりと潰れているのが見て取れる。馬車の小刻みな振動にあわせて、胸の果実がタプタプと揺れている。
「ごくっ」
生唾。
ひとえにスキルと言っても、熟練度というものがある。使いこまなければ、上手くは使えないということだ。ケネスはまだまだ熟練度が足りない。下着の内側までは見通すことができないのだった。それが、焦れったいようで、安堵するという微妙な感情をケネスに与えていた。
おっぱいか……。
めくるめく果実に、思いをはせる。
どんな感触をしてるんだろうか。やわらかいんだろうか。それとも、適度な弾力があるんだろうか。
ブラジャーの内側はどうなってるんだろうか
もっと《可視化》を使いこめば、見えちゃったり?
想像をたくましくするにつれて、おのずと鼻息が荒くなる。
「こら」
と、急に後頭部を叩かれた。
「痛てっ」
ケネスは後頭部をおさえた。
振り向く。
見知らぬ青年が立っていた。青髪で、ケネスよりかはじゃかん年上だろうと思われた。ケネスが16歳だから、青年のほうは20歳手前といったところだ。
「ロクでもないスキルを使っているだろう」
「げッ。どうして、わかったんですか」
「オレぐらいにもなると、どこで誰がスキルを使っているかぐらい、敏感に感じ取れるようになる」
「はぁ。……どちらさまでしょうか?」
尋ねると、青年はあきれたような顔をした。
「このオレのことを知らない? 帝国12騎士の1人。ベルモンド・ゴーランさまだ」
青年は、得意気に名乗った。
ケネスは心臓が跳躍するのを感じた。
帝国12騎士というと、帝国内で12人のうちに入る騎士だ。ベルモンド・ゴーラン。双剣使いとして名を馳せている剣士だ。若くして12騎士に入ったというのも、風聞を広める追い風となった。
「こ、これは失礼しました!」
と、ケネスはあわてて頭を下げた。
ケネスは一介の冒険者だ。とてもじゃないが、対等に話し合える立場ではない。
「良い良い。今日は大事な闘技大会の日だからな。変な騒ぎでも起こさなけりゃ、オレも文句を言わねェよ」
名前を知ってくれていたことが嬉しいのか、ゴーランはたちまち上機嫌になった。
「ゴーランさまも、闘技大会に?」
「おうよ。名前を広める良いチャンスだ。勝てば賞金も出る」
今日は、帝都で闘技大会が開かれる。腕に自信のある冒険者、騎士、魔術師がこぞって参加している。見に来る人も多い。それで、こんなに人通りも多いのだった。
「ゴーランさまなら、優勝も狙えるでしょうね
と、言っておいた。
別にゴマをするわけではないが、気にいられて損をする相手ではない。
「わかってるじゃねェーか、コゾウ。他にも帝国12騎士の連中が参加することになってる。あと、帝国12魔術師もな」
帝国12魔術師は、帝国12騎士の魔法ヴァージョンのようなものだ。
「そんなにスゴイ方々が参加されているのですか」
「なにせ帝都の闘技大会だからな。みんながみんな参加するわけじゃないけど、これに参加しない手はないだろう」
デラル帝国は、隣国のケリュアル王国と戦争中だ。今は停戦しているが、すぐに再戦することは目に見えている。闘技大会には、戦争に使えそうな人材調達という意味もあるのだろう。
なににせよ、ケネスには関係のないことだ。
「ガンバってください」
「サンキュー」
と、ゴーランは帝都の入口へと歩いていった。
「はぁ」
思わずため息が漏れた。
すごいよなぁ、と思う。
ゴーランはケネスとあまり歳の差もない。なのに、帝国12騎士の1人なのだ。
一方。
ケネスはどうだ?
Fランク冒険者として日々、薬草集めに奔走しているだけだ。16歳にもなると、優秀な人間は、すでにCランクの冒険者として活躍している。モンスターの生息する、ダンジョン攻略なども行っているようだ。
「はぁ」
ため息が止まらない。
Fランクの冒険者は、周囲から「Fラン」と略されて小馬鹿にされるのが常だった。ケネスだって上のランクに上がりたいと思っている。そのためには昇格試験を受けなければならない。ゴブリンの討伐が、その試験であった。何度か挑戦しているが、そのたびに命からがら逃げだすありさまだ。
(いったいオレに何が、足りないのかねぇ)
根本的に、冒険者に向いてないのかもしれない。固有スキルも《可視化》だ。帝国12騎士と言われるような連中は、みんな戦闘の特化したスキルを保有している。
たとえば、帝国12騎士の中で最強と言われ、英雄とまでうたわれるソーディラス・レオという男は、《製剣》と言われるスキルを保持している。その場で、無数の剣を生成するのだそうだ。
とはいえ――。
才能がないから、冒険者をやめるというわけにもいかない。ケネスは冒険者になるために、帝都まで上京してきたのだ。親の反対まで振り切っての上京だ。後には、引きかえせない。
今も――淑女の下着姿に目を奪われたが――薬草採取の途中である。さっさと仕事を終わらせて、冒険者組合に戻ろうと思った。
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