ダークエルフ姉妹と召喚人間
数多の閃光
「・・・出口が、消えた?」
「間に合わなかったか、こいつはヤバそうだな」
宵闇の空に黄金より明るい白金の月が光を差す。
「カミヤドルツキ、シンエンヲツラヌク、アマタノセンコウトナレ・・・」
真っ暗な空間にブランらしき低い声が反響する。
「こうなったら最後まで戦うしかないみたいね」
おぶさっていたスミレを下ろし剣を構える。グレンもエルザを座らせ、二人を守るようにイルザと共に構えをとる。
「“神月”」
声だけが響く、そして、イルザ達を取り囲むように白金の矢が無数に並ぶ。
「おいおいマジか」
冷や汗が首を伝う。
「ハナテ」
その言葉と同時に無数の矢がイルザ達に襲い掛かる。
エルザはもう防御魔法は使えない。イルザも使えないこともないが、エルザ程の精度は無い。剣で撃ち落とすほか手段はない。
イルザとグレンは戦えない二人を守るため、矢を叩き落とす。
容赦のない怒涛の攻撃、次々と矢を弾くも止む気配は微塵も感じられない。
更に襲い掛かる矢の数は増していく。
「くっ! 数が多すぎる!」
剣一本で矢を防ぐのに限界が訪れてきた。ギリギリ軌道を逸らし、エルザとスミレへの直撃は避けることはできた。しかし、時間が経つほどに増える矢はイルザとグレンの腕や脚を掠り始めた。
(この攻撃はいつまで続くの!? このままじゃ、守り抜けない・・・!)
永遠の様に感じる時間、矢は治まるどころか数が増えるばかり。
(連結刃に変形させる間すらないわ)
掠る程度だった矢は、剣をすり抜け胴や腕に直撃する。それでも二人は、エルザとスミレには当てさせまいと必死に奮闘する。
「・・・! グレン! 後ろ!」
矢を落とすことに集中していたグレンは背後まで意識がいかなかった。エルザの声が耳に届いた瞬間、背中に鈍痛がはしり前方へ大きく吹き飛ばされた。
突如現れたのは、背に蝙蝠の様な鋭利な翼を携え、顔の半分は百合の紋章が痣の様に侵食され角を生やしたブランだった。
無数の矢はいつの間にか止んでいた。
グレンを蹴りで背後から蹴飛ばし、即座にイルザも蹴り飛ばす。その後、左腕と一体化した“極光の月弓”で自身を矢として放ち、イルザの後を追う。
吹き飛ばされたグレンは受け身をとり、イルザの安否を確認する。視線の先には変わり果てた姿をしたブランが右手でイルザの首を掴んでいた。
「っ! させるかよ!」
“妖精の輝剣”を手にイルザの元へ急ぐ。守るべき主がこの瞬間殺されようとしている。
(急げ・・・! 間に合え!)
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