ダークエルフ姉妹と召喚人間

山鳥心士

残念なグレン



 「不気味なぐらい真っ白ね・・・この研究所」


 スミレの案内で複雑に入り組んだ廊下を進んで行く。建物の外観からは想像できないほどの広さを持っていた。


 「・・・不思議、この建物かなり広い」


 「この研究所は主様の知人に作っていただいたものなのです。空間圧縮で見た目以上の広さを確保できるらしいのです」


 「へぇ・・・便利な力ね・・・。あとどれくらいで着きそう?」


 「最後の曲がり角を進んだらすぐです」


 道中は何事もなく進むことが出来た。逆に何も起こらないことが不気味でもあった。


 「皆さん気を付けてくださいです。この廊下にある各部屋は主様が捉えている魔獣が管理されているです。ですが、その魔獣が一体も残っていないです。とても嫌な予感がするです・・・」


 「・・・魔獣が一か所に集められているかもしれないのね。そうだとすると、とても厄介」


 エルザの魔力は戦闘に参加しなかったおかげで、かなりの量を回復させることが出来た。最悪でもあと一回は幻獣召喚を行うことが出来るだろう。もしもの時、自身を犠牲にしてでもここに居る全員を守ろうと思考を巡らせていると。


 「エルザ、無理しようとか考えてるだろ。俺とイルザでどうにかするから、絶対に無茶をするな。最悪、逃げれる分の魔力は残しておけよ」


 グレンに考えを見抜かれていた。


 「・・・お見通しなのね。だけど私も戦うわ、守られるだけは嫌だもの。もちろん、無理のない範囲でね」


 「だったら俺がしっかり守ってやる。ご主人様の妹なんだ、一人増えようが同じだ! それに、可愛い女の子を守れないようじゃあ男が廃るだろ?」


 胸を張って自信満々に格好をつける。


 「・・・ふふっ。そうね、グレンには頑張ってもらわないと。ね? 姉さん」


 「ええ、ふふっ。頼りにしてるわ、ふふふ」


 姉妹揃って堪え切れない笑いを漏らす。緊張で張り詰めた空気が少し和らいだ。グレンは、笑う二人を見て格好付けたはずが不発に終わったことにショックを受けた。


 「グレンさん・・・ほっぺが腫れてるです・・・」


 スミレが残念そうな声と表情で、残念そうにグレンの残念さを教えた。


 「や、やめろ、そんな目で俺を見ないでくれ!」


 さり気なく自分の手で頬に触れ腫れ具合を確認しながら顔を隠す。ヒリヒリ感はずっとあったが予想以上に頬が腫れていた。


 「って、物凄く腫れてんじゃねぇか! もうちょい加減ぐらいしろよ!」


 「もともとあんたの変態行為のせいでしょ。ほら、顔をこっちに向けなさい」


 イルザは腫れている頬に手をかざして、治癒魔法をかけた。頬の膨らみはみるみるうちに治まっていき、元の状態に戻った。


 「はい、これでいいでしょ」


 「・・・面白かったのに残念」


 「露骨に残念そうな顔しないでもらえるかな!?」


 大きくため息を吐いた。さっきまでの緊張感はどこへ行ったのやらと呆れ半分、微笑ましいやり取りに安心感を覚えた。





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