800字以内のファンタジー『星捕り』

月夜野 星夜

800字以内のファンタジー『星捕り』

 僕らは今、星を捕りに鈴ヶ丘に来ている。虫取り網で落ちてくる流れ星を捕まえるんだ。


 「お兄ちゃん、あっち!流れたよ!」


 「よし、急げ!」


 「うん、あーっ!また逃げられちゃった」


 「・・・よし、挟みうちにしよう」


 「挟みうち?」


 「うん、いいか?挟みうちっていうのはこうやって・・・」


 妹と念入りに打ち合わせて、今度は流れてくる星を左右から狙う。


 しばらく星空を睨んでいると、またチカッと光った。落ちてくる!


 僕は妹に目配せをする。妹も僕の目を見つめて頷いた。


 狙いをしっかり定めて・・・、よし、今だ!


 僕らは一斉に飛び出して、網を振るう。流れ星はキラキラと光の粉をまき散らしながら妹の網を逃れようと飛び回る。そうこうしているうちに逃げ場を見失ったのか、誤って僕の網の中に飛び込んで来た。


 「やったー!」


 「さっそく願い事を言わなくちゃ」


 「うん、せーの・・・」


 「また私たちを兄妹として生まれ変わらせて下さい!」
 「また僕らを兄妹として生まれ変わらせて下さい!」


 1年後、某産婦人科。


 「おめでとうございます!元気な双子の兄妹ですよ」


 「ありがとうございます。なんて可愛いの。・・・あら?この子、何か握っているわ」


 母親がそっと、産まれたばかりの息子の手を開いてみると、金色の金平糖のような物が出てきた。


 「何かしら?これ・・・、あっ!」


 母親がその金平糖をつまんで少し力を入れた途端、金平糖は金色の光の粉をまき散らしながら砕け散った。






 

コメント

コメントを書く

「童話」の人気作品

書籍化作品