ショートショート集
花いっぱい
「この世界を、花でいっぱいにしたい!」
少し未来の、地球の、ある国の、ある研究所で、天才科学者であるフラウ博士は、そう考えた。
フラウ博士はその日から、寝る間も惜しんで研究にいそしむことになる。
その甲斐あって1年後には、とうとうフラウ博士の夢を叶える植物が誕生した。
その植物は「花風船」と名付けられた。
「花風船」の種を地中に埋めると、その土地の環境に適した花を咲かせ、花が散って種を宿す頃になると、子房の部分が風船のように膨らんで、やがては風に乗り、世界中へと旅立って行くのだ。
そうして、またどこかの土地に根付いては、その土地の人々の目を楽しませてくれる。
ときには、喜ばしいことに、美味しい野菜や、果実を付けることもあった。
こうして、フラウ博士の「花風船」は世界各地に飛び立ち、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月……と経つうちに、地上は色とりどりの花々で溢れかえり、芳しい香りで満たされた。
そんなある日の夜、突然漆黒の空いっぱいに、極彩色の光が広がった。
驚く人々の頭上で、その光は、あるものはヒマワリを想わせるかのような大輪の花を咲かせ、またあるものは、かすみ草のように細やかな輝きを夜空一面に燦めかせた。
「フラウ博士、これはいったい……?」
助手がフラウ博士に尋ねると、それまで思案顔だった博士は、ポンと手を打って叫んだ。
「そうか! これはきっと、宇宙まで飛んで行ってしまった『花風船』に違いない! そしてそれは、宇宙空間を漂い続けて、とうとう太陽まで到達したのだ」
「なるほど、それでは太陽の地熱で温められた『花風船』は、花火のような光の花を、宇宙空間いっぱいに咲かせた、ということですね」
「うむ。我々の研究が、予想だにしなかった形で花開いた、ということじゃな」
フラウ博士は、満足そうに自慢の白髭を撫でる。
「それにしても、音のしない花火っていうのも、なかなかいいものですね」
助手も、目を細めてフラウ博士の横に並び、うっとりと夜空を見上げた。
太陽の花々は、それからひと月もの間、夜となく昼となく、人々の頭上で輝き続け、次々と花開いては散っていくのだった。
少し未来の、地球の、ある国の、ある研究所で、天才科学者であるフラウ博士は、そう考えた。
フラウ博士はその日から、寝る間も惜しんで研究にいそしむことになる。
その甲斐あって1年後には、とうとうフラウ博士の夢を叶える植物が誕生した。
その植物は「花風船」と名付けられた。
「花風船」の種を地中に埋めると、その土地の環境に適した花を咲かせ、花が散って種を宿す頃になると、子房の部分が風船のように膨らんで、やがては風に乗り、世界中へと旅立って行くのだ。
そうして、またどこかの土地に根付いては、その土地の人々の目を楽しませてくれる。
ときには、喜ばしいことに、美味しい野菜や、果実を付けることもあった。
こうして、フラウ博士の「花風船」は世界各地に飛び立ち、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月……と経つうちに、地上は色とりどりの花々で溢れかえり、芳しい香りで満たされた。
そんなある日の夜、突然漆黒の空いっぱいに、極彩色の光が広がった。
驚く人々の頭上で、その光は、あるものはヒマワリを想わせるかのような大輪の花を咲かせ、またあるものは、かすみ草のように細やかな輝きを夜空一面に燦めかせた。
「フラウ博士、これはいったい……?」
助手がフラウ博士に尋ねると、それまで思案顔だった博士は、ポンと手を打って叫んだ。
「そうか! これはきっと、宇宙まで飛んで行ってしまった『花風船』に違いない! そしてそれは、宇宙空間を漂い続けて、とうとう太陽まで到達したのだ」
「なるほど、それでは太陽の地熱で温められた『花風船』は、花火のような光の花を、宇宙空間いっぱいに咲かせた、ということですね」
「うむ。我々の研究が、予想だにしなかった形で花開いた、ということじゃな」
フラウ博士は、満足そうに自慢の白髭を撫でる。
「それにしても、音のしない花火っていうのも、なかなかいいものですね」
助手も、目を細めてフラウ博士の横に並び、うっとりと夜空を見上げた。
太陽の花々は、それからひと月もの間、夜となく昼となく、人々の頭上で輝き続け、次々と花開いては散っていくのだった。
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