幻想自衛隊 ~我々は何を守るべきか~

メガネ2033

第2話 着いた先は幻想郷!!part1

2023年8月15日pm6:15   太平洋 伊豆諸島沖 イージス艦‘‘みょうこう’’ CIC


「砲雷長、気象レーダーが艦隊前方で急速に発達する低気圧を捉えました」


「低気圧なんていつもの事だろ。マニュアル通りに進めてくれ」


「しかし、レーダーで確認してからわずか1分でここまで大きく発達するのはいくら何でも想定外です。念のため本土の気象隊に詳しい情報を求めたいのですが…」


「わかった。だがこっちで勝手に判断するわけにはいかないから取り敢えず艦長へ報告してからにしてくれ」


「了解しました。艦橋へ繋ぎます」






2023年8月15日pm6:20   ‘‘みょうこう’’艦橋(田中一佐視点)


「何、異常な速度で発達してる低気圧ががあるだと?うん、ああそう、わかった伝えておく」


艦長が話し終わるのを待ってから副長が尋ねた。


「艦長、CICからはなんと?」


「あぁ、本艦隊の正面に異常な速度で発達をしている低気圧があるそうだ。副長、悪いが横須賀気象隊に現在地付近の詳細な天候予測を問い合わせてほしいのだが頼めるか?」


「了解しました。すぐに確認します」


さぁ今からが正念場だな

旗艦への伝達、気象隊から送られてくるデータを基にした航路の見直し、荒天準備の命令などなど…考えるだけでやる気が失せそうなレベルで仕事が山積みなのだ

取り敢えず最初にできそうな仕事から片付けるか…

そう思い立ち艦内マイクを手に取り全艦放送に切り替える


「あ~達する。艦長の田中だ。現在、本艦の前方で低気圧が発生し急速に発達している。直ちに荒天準備となせ!」


艦長が面倒な仕事を一刻も早く片付けようと悪戦苦闘してる間、横須賀気象隊もまた基地の気象レーダーと民間の気象衛星アメダスに表示される不可解な事実をどう解釈するべきかで悩みぬいていた




そして低気圧発生の一報からわずか15分後に『その事件』はおきた






2023年8月15日pm6:35   ‘‘みょうこう’’艦橋


低気圧発生からたった15分で護衛艦隊はこの土砂降りに見舞われていた


「艦長、横須賀気象隊からの返信です。読み上げます。『先程貴艦が送られた座標の付近を調べたが1つもそれらしき低気圧及び雨雲は確認できなかった。本当にこの座標であっているのか再度お聞きしたい』とのことです」


「で、結局こっちの座標は正しかったのか?」


「はい、一切の間違いはありませんでした」


「座標に誤差はないのか…とすると気象隊の方のレーダーに異常が発生したのか?気象隊に返信〝座標に誤差はない。もう一度確認していただきたい〟この内容で頼む」


副長が返信を打とうとした瞬間まばゆい閃光と爆音と共に艦が揺れた


「何があった!?」


「落雷です!本艦、艦橋構造物に直撃しました!」


艦長の問いに艦の舵を取っていた航海長が速やかに答えた


副長があわてて無電池電話をひっつかみマイクに向けて怒鳴り始めた


「応急指揮所、被害状況を報告せよ」


副長が怒鳴るとすぐに応急指揮所から切迫した声が返ってきた


「被害報告、機関停止、対空レーダーなどが使用不能、僚艦及び衛星との通信が途絶しました」


「馬鹿な!SPY-1レーダーが使用不能だと!?」


「落ち着け副長、まずは僚艦との連絡が最優先だ」


「そうですね。信号長、僚艦は確認出来るか」


「残念ながら雨が激しく視界がゼロに等しいため確認できそうにありません」


「クソ、原因究明及び復旧急げ」






2023年8月15日pm6:50 ”みょうこう”艦橋


先程のトラブルが嘘であったかのように今の艦橋は復旧の知らせであふれていた。しかし、雨が上がり視界が回復したとたん艦橋にいた乗組員全員が凍りついた。


「艦長、我々は先程まで太平洋にいたんですよね」


副長がこんなことを言うのも無理もなかった。何せ艦隊を囲むように陸ができているのである。


「僚艦の発見はいいとしてこの陸は何だ、ここはどこなんだ」






2023年8月15日pm7:00   護衛艦隊 旗艦”いずも” 会議室  (古賀海将視点)


「今回、諸君らを本艦に招集したのは言うまでもないが謎の陸地を受けての対応策の立案のためだ。現状打破のため何か意見のあるものは遠慮なく発言してほしい」


最初に案を出したのは”むらさめ”艦長の稲垣一佐だった


「私は救難信号を送って待機すべきだと思います。下手に上陸するよりこの国の救助隊を待つべきだと思います」


この意見に異を唱えたのは”みょうこう”艦長の田中一佐だ


「稲垣一佐の意見では救助隊がいつ来るか不明なため本来の目的である米軍との合同演習ができなくなってしまいます」


「ちょっと待て、こんな状態に陥っていては米軍との演習などと言う前に本土に戻ることすら危うい状況なんだぞ」


「だからこそ本土と連絡をとるために陸に上がってこの国の政府とコンタクトをとろうと言っているんだ」


「上陸は危険すぎる。第一この国が我々に対して友好的だとは限らないんですよ」


状況が切羽詰まると考えがまとまらず相手の意見を否定してばかりで妥協案を作ろうとしなくなる。

自分の意見を伝えるのは大いに結構だが意見はまとめてこそ価値あるものになる。ということを今回に限って伝えなかった私の落ち度でもあるんだがそれくらい自分たちで気付いてほしいものだな


議論が始まって5分ほどたったとき陸上自衛隊の司令官伊藤一佐が遅れて会議室に入ってきた。


「伊藤一佐、この大事に遅刻とはどういう事ですか?」


他の艦長と意見が食い違いストレスがたまってきていた稲垣一佐怒りを遅れてきた陸の伊藤一佐にぶつけた

彼はマニュアル通りに仕事をさせれば右に出る者はいないが逆にとっさの事態で柔軟な対応ができないという欠点を持っていた


「すみません、こっち側の幹部と話し合ったんですが、意見をまとめるのに少し時間がかかり過ぎまして」


私はこの場の空気の改善を祈り伊藤一佐の意見に期待することにした


「ほぉ~伊藤一佐、時間をかけたからには現実的な意見なんでしょうね」


「勿論です。落胆はさせませんよ」


「そうですか、ではそちら側の案を聞かせてください」


「了解しました。古賀海将」


伊藤一佐は笑顔でそう答えポケットからまとまった案の内容が書いてあるであろう紙を取り出した。





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