魔術学院最下位の俺が最強スキル絶対真眼を手に入れちゃいました。~必ず首席で卒業してみせる~

一条おかゆ

第17.5話 何気無い授業


 学院に着き、カレンとクラーラさんと別れた俺は2年の校舎へと向かった。
 そして――ガラガラ。
 と教室の扉を開いた。

「おはようアベル」

 すると、既に登校していたオリヴィアが、席に座りながら挨拶をしてくれた。

「おはようオリヴィア」
「うん。昨日は先に帰っちゃってごめんね」
「いやいいよ。下校時間だし仕方ないよ」
「ありがと。でも今日の歩き方、それどうしたの?」

 やっぱり突っ込まれた。
 まぁはたから見れば、今の俺は血色の良いゾンビに見えるだろう。

「昨日の授業のおかげだよ、はは」
「思いっきり寝転がってたもんね」
「今日もあるのが少し憂鬱だよ」

 俺はそんななんでもない会話をして自分の席に着いた。
 するとすぐに先生が教室に入って来た。

 その後はホームルームを済ませ、いつものように授業を受けた。
 更にカレンとハイトウッド先生との昼食も楽しくすごして、教室に戻った。
 そして――

「古代魔術と特殊魔術を除けば、初等魔術に下位中位上位魔術、そして最上位魔術が存在する。最上位魔術を使えるのは世界でも極僅かで――」

 ――キーン、コーン。

 と授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
 これで、授業は終わりだ。

「……終わりか。じゃあな」

 先生は教室から出て行った。
 俺も先生を追うように教室から出た。
 そして向かうのは演習室。
 俺は演習室に入るなり空いていた席につき、先生を待つ。

 先程終わったのは五限目。
 なので次は六限目。
 そう、六限目――選択授業の時間だ。

「よおおぉぉ!! 昨日ぶりだなアァ!」

 部屋に入って来て早々、ブレイヴ先生は大声を出す。

「元気にしてたかアァ!? 俺は元気だアアァァ!!」

 ……見ればわかるよ。
 というか、見なくても何となく分かる。

 それよりも、ブレイヴ先生を見てみれば一つ気が付く事がある。
 今日の先生の服装は教員の制服である藍色の魔術衣装ではない。
 生地の厚い、白色のロングコートだ。

「……マジか」

 その服装を見て、俺は驚嘆の呟きを漏らす。
 王都生まれの俺はこのコートをよく見ているし、それが何を意味するのかもよく分かっている。
 ブレイヴ先生――彼は近衛剣術師団の者だ。

 近衛剣術師団は近衛魔術師団と肩を並べる、このグヴィデン王国最精鋭の部隊だ。
 同時に世界最高の実力者たちでもあり、剣の腕において彼等を上回れる者はほとんどいないだろう。
 先生は"元"なのかもしれないが、それでも十分にすごい。
 そりゃ一瞬で八回も剣が振れる訳だ……。

「ではァ今日の授業を始めるかアアァァ!!」

 ふぅ……今日も始まるのか。
 しかしまだ走れるだろうか、この足で。
 だがそう思うのも虚しく――

「今日は魔術を学ぶウゥ!」

 え……?
 走らないのか?

「正直お前達がどれ程頑張ったところで、剣術学院の生徒には勝てない。それはお前達も分かっているだろうウゥ!」

 もちろんわかっている。
 剣術学院の生徒は、武器術の才能が普通の人間なんかとは段違いだ。
 しかもその才能を持った天才達が、全てが整った施設で、果てしない努力と重ねているのだ。
 はなから勝てるとは思っていない。

「だがそれは剣術で、の話だアァ! 剣でダメなら魔術、それでも駄目なら知恵を使えエェ、それが本当の実力というものだアアァァ!!」

 ……確かにそうだ、良い事を言うな。
 ブレイヴ先生もただの脳筋という訳じゃないようだ。

「……それに、お前達の筋肉痛ぐらい俺も分かっている。無理をするな」

 先生は少し恥ずかしそうだ。
 先程まで大声を出していた大男のしおらしい態度。
 そのギャップに――

 ――きゅん。

 なんてなる訳が無い。
 ……流石にときめきはしないが、でも先生への評価が上がった。
 完全な脳筋からほとんど脳筋、になった程度だが……。

「先生。理由は分かったのですが、魔術を学ぶとは具体的に何を学ぶんですか?」

 生徒の一人が質問した。

 確かにこれは俺も気になる。
 剣術の先生、それも近衛剣術師団の人間が魔術学院の生徒に教える魔術とは何なのだろうか。

「ふっ、今日教えるのはただ一つウゥ! それは『属性付与(エンチャント)』だアアァァ!!」

 先生が言い放った魔術の名、それは『属性付与』――
 聖騎士や一部の戦士が使う特殊魔術の一つだ。
 効果はいたって単純で、武器に火や水などの属性を付与し、攻撃能力を高める、というもの。

 強力ではある。
 強力ではあるが、そもそも魔術師は――

「言いたい事は分かっているウゥ! 魔術で剣を形成できる、と言いたのだろうウゥ!」

 そうだ。
 上位魔術には剣を形成する魔術が存在する。

「だが、お前達の何人がその魔術を使えるのだ? それともその魔術が使えるようになるまで待て、というのか?」

 少なくとも俺は使えない。
 というか、上位魔術が使えたら選択魔術に剣術を選んでいないだろう。

「『属性付与』は特殊魔術に分類されておるから、詳しくは知らんかもしれんが、幸い簡単な魔術だアァ! 剣術学院の生徒なら数週間を要するがァ、この学院の生徒なら必ずや今日一日で習得できるはずだアァ!」

 先生……。
 以外にも俺達の事を考えて、授業をしてくれているんだな。

「よし! では教えるぞオオォォ!!」

 よし!
 なら、俺も学ぶぞオオォォ!!

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