魔術学院最下位の俺が最強スキル絶対真眼を手に入れちゃいました。~必ず首席で卒業してみせる~
第4話【裏】 誘い
【※カイン視点です】
ここは……どこだ?
夕日が窓から射し込んでくる。
周りには机と椅子が散らかっている。
……俺の教室か。
周りには誰もいねぇな、俺一人じゃねぇか。
確かオリヴィアを呼び出して、言い合いになって、それから――
……くっそ。
思い出した。
バカベルの野郎に殴られたんだ。
「……うぅ……」
……くっそぉ。
頭がいてぇ、ガンガンする。
「バカベルの野郎……覚悟しとけよ」
俺は怒りを覚えながらも、取り合えず立ち上がった。
めちゃくちゃ痛む後頭部を触ってみるが、血は……出てねぇな。
ひとまず帰るか。
「少し待ちなさい」
なッ!?
誰だ!?
俺は声のした方を向いた。
そこにいるのは、すらっとした黒いスーツ姿の男。
眼は蛇のように細く嫌らしく、どこか怪しい雰囲気をかもし出している。
というか……
「……誰だお前ッ」
基本的にこの学院は、生徒は青色、教師は藍色の魔術衣装を着ている。
確かに例外はいるが、こんな黒スーツで決めている奴なんて見た事ない。
明らかに部外者だ。
「まだ名乗るべきではないでしょう。ね、カイン君」
――ゾワゾワッ!!
鳥肌が立つ。
理由は分からないが、何故か感じ取れる。
こいつはヤバイ奴だ……。
「て、てめぇ、何で俺の名前を知ってんだ」
「それは勿論、あなたのの事を調査したからですよ、隅々までね」
再び鳥肌が俺を襲う。
「き、気持ちわりぃな」
「そうですか? 前に振られたはずの女性に、無理矢理迫る男の方が気持ち悪いと思いますよ」
「ってんめぇ!」
ここまでこけにされたら、黙っていられない!
さっきバカベルの分もこめて、ボコってやろうか!?
「まぁまぁ落ち着いてください、喧嘩を売りに来たわけじゃありません」
「あァ!? じゃあなんだってんだよ!」
「あなたに"絶対的な力"を授けに来ました」
……は?
絶対的な力?
俺に授ける?
なに馬鹿な事言ってるんだこいつは。
「茶化すなら俺以外の奴にでもやっとけよ」
「いいえ、嘘ではありませんよ」
そう語る男の眼は真剣だ。
嘘をついているとは思えない。
そして畳みかけるように、
「カイン君はこのままでいいのですか?」
悪魔のささやきを放ってくる。
「このまま、っていうのは?」
「あなたの好きなあの少女や、先程の少年の事ですよ。絶対的な力さえあれば、あの少女の身体などいくらでも自由に出来ますし、あの少年をねじ伏せる事だって可能です」
「それは……本当か?」
「えぇ本当ですとも」
「そうか……」
どうしようか?
まだ完全に信じた訳じゃない。
でもこいつの言ってる事は本当っぽいし、もしこの話が本当だとしたら、俺は物凄いチャンスを逃すことになるぞ。
俺はオリヴィアが欲しい、あいつは本当にいい女だ。
容姿はクラスで一番可愛いし、態度も俺の好みの凛々しさだ。
去年の冬に振られたのもあるし、どうしても手に入れたい。
でも今の俺に見向きもしてないのはわかってる。
……だからこその力だ。
あんまり気は乗らないが、無理矢理……ってのも悪くはねぇな。
俺に見向きもせずバカベルに構ったオリヴィアが悪いんだ。
一度抱かれればきっとオリヴィアも気付くさ――俺の方がいい男だと。
「その話、乗ったぜ!」
「それは好ましい事ですね。もし断られたら無理矢理連れて行ってましたよ」
「俺は力を得てやりたい事があるからな。ビビってばっかの奴らと比べるんじゃねぇよ」
「それは失礼しました。では私達の拠点に向かうとしましょうか」
スーツ姿の男は俺に手を差し伸べる。
だが俺はその手に触れる前に、
「何で俺なんだ?」
一つ質問をした。
この学院には俺なんかよりもっと強い人間がごまんといる。
最下位のバカベルはともかく、オリヴィアだって魔術戦の順位は俺より圧倒的に上だ。
何故俺より強い人間を差し置いて、俺が選ばれたんだ?
「力を得るのにも条件がいるからです。魔術的素養と魔力的親和性、そして強い負の感情が必須なんですよ」
魔術的素養は分かる。
俺だって大陸最高峰のバルザール魔術学院の生徒だからな。
魔力的親和性もまだ理解できる。
これは多分、俺と力の相性がたまたま良かったのだろう。
しかし……強い負の感情か。
心当たりはある、やっぱりオリヴィアとバカベルの件だろう。
でも、悔しいしあんまり認めたくねぇな。
「あー分かった。ま、取り合えず強くしてくれ」
俺は差し出されたスーツの男の手に平に、自分の手を重ね合わせた。
これで俺は力を手に入れに、こいつの拠点に連れて行ってもらえるのだろう。
覚悟しとけよバカベル。
お前にはきちんと復讐してやる。
覚悟しとけよオリヴィア。
お前は必ず俺の女にしてやる。
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