神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

八十三





 「貴様はっ!」帝国指揮官は、忌々しそうな目で睨む。
 大剣を振るったその者は、武器を地面に突き刺すと、豪快に笑った。
 「そう! 我こそは、先導の騎士が一人にして、剛腕の巨人! カードックであるぞ!」

 「生きていたんですね! カードックさん!」
 シングは声を掛ける。
 「そこにいる魔女殿に助けられましてな! シング王子、会えて嬉しいですぞ!」
 カードックは笑い、続けて声を上げる。「ここは、我とモルガナ殿にお任せあれ! シング王子達は、行くと良い!」

 ミレイとシングは、目配せをして頷き合う。
 「行こう、皆!」
 「そうね、行くわよ!」

 「準備は良いですか?」
 魔法使団長レナードは問い掛け、ミレイ達は覚悟のある眼差しを見せた。
 レナードは、その目を見て察したのか、詠唱を始める。
 「汝らを送るは······」
 「そうはさせるか!」
 帝国指揮官は、声を荒げる。
 すると帝国兵が進軍してきた。
 「「「おおお!」」」

 「させないよ!」モルガナは詠唱を始めだす。

 レナードも、魔法発動のため続けて、言葉を紡ぐ。
 「······輝く導き手」

 モルガナは、早口に詠唱を終えると、叫ぶ。「連雷!」
 上空から、雷が幾つも降り注いでいく。余りの威力に帝国兵達は、倒れていった。
 「まだだぁ! 続けぇぇぇ!」
 帝国指揮官は、自分は動かず命令を下す。

 「その導きを辿り、彼の地へ到らん!」レナードの詠唱が終えた時、帝国指揮官は叫んだ。
 「させるかぁぁぁ!」
 ミレイ達へ向かって、押し寄せてくる帝国兵士達。

 その大勢をカードックが、大剣で薙ぎ払って吹っ飛ばす。

 最後にレナードは、魔法名を口にする。「センド・ディスティネイション!」
 ミレイ達五人の体が、光に包まれる。
 次の瞬間、消えていった。
 その後は、光のざんしが、上へ向かって流れるのだった。



 「ここね」
 「うん。でもいきなり、こことはね」
 ミレイの言葉に応じるシング。どこか、苦笑いの表情だが。
 目の前には、そびえ立つ巨大な城があった。
 恐らく、帝国の都にある城だろう。

 それより、周囲には警備兵がいた。唖然としていた彼らだったが、やがて、大声を上げる。

 「「し、侵入者だぁぁぁ!」」


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