神聖具と厄災の力を持つ怪物
七十六
暫し、緊張感のある静けさが続いていた。両者共々、睨みあっている。
ふとして、相手の指揮官は剣を抜き放ち、声を上げる。
「かかれ!」
応じるように、王国軍総指揮官も剣を前へ掲げ、声を発する。
「帝国軍を迎え撃て!」
ディザスター、ヒュドラも動き出し、ミレイとシング、ヴェルストは駆け出す。
リアの声が響いた。
「オール・ブースト!」
魔法によってミレイ、シング、ヴェルストの走る動きが更に加速していく。
ヒュドラの九つある頭部の一つが、ミレイに襲い掛かる。
彼女は、右斜めへ跳んでかわすと、距離を詰めていく。
更に、ヒュドラのもう一つの頭が、牙を剥き出しにして迫る。
ミレイは回避しつつ、手にした断罪の大斧に光を纏わせた。
そのまま走り、次に首元目掛けて跳躍する。巨大な光の刃に覆われた大斧を横に振るい、ヒュドラの首を断った。
ミレイは、ディザスターの斜め後ろの地面に着地する。と同時に、ヒュドラの頭が落ちた。
だが。
頭が再生していく。
ミレイは、その様子を見るなり驚く。
「なっ!? どうゆうこと? 神聖具で切ったから、再生は······」
「そうか!」
その時シングは、顔を彼女へ向ける。
「ミレイ、ヒュドラは全ての首を一気に落とさないと駄目なんだ!」
「それは本当なの!?」
「幼い頃に見た文献の内容だから間違いないよ」
「そう。あんた達、一気に決めるわよ!」
「うん、やろう!」
「言われるまでもねぇ」
ミレイ、シング、ヴェルストは武器を構え、各々緊張感のある表情を浮かべていた。
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