神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

七十一





 ミレイは、凄い勢いでアジ・ダハーカとの距離を詰めると、擦れ違い様に右の前脚を狙う。
 「やああっ!」
 断罪の大斧の水平切りは、右前脚を捉えて傷を付けた。

 「おせぇぞ、牛女!」
 ヴェルストは、声を掛けつつ、風を纏ったダガーナイフでアジ・ダハーカを切りつけている。

 「悪かったわね、アホ毛男!」
 ミレイはそう返しつつ、ぐっと膝を曲げ渾身の力で上へ跳んだ。

 シングの方は、遅れて距離を詰めていた。彼は、鋭光の槍を構えると、叫ぶ。
 「おおおおおおっ!」
 すると、槍から光子状の棘が一直線に伸びていく。
 アジ・ダハーカの首元の下辺りに向かってだ。

 棘がディザスターに刺さると、シングは、一旦抜く。続け様にその鋭光の槍で、突きをお見舞いしようとする。が······。

 その瞬間アジ・ダハーカの左の頭部の両目が黒く輝く。
 同時に、広範囲の魔法陣が瞬時に展開された。
 その魔法陣は漆黒のもやを漂わせる。
 すると······。

 「なっ、何っ?」
 ミレイは、胴体の横っ腹を駆け上がっている最中だったが、不意に力が抜け落ちてしまう。
 「これは······厄災の力?」
 シングは、鋭光の槍で体を支えつつ、そう呟く。

 ヴェルストも同様で、舌打ちをする。

 アイリスやリアも膝を突いていたのだった。


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