神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

六十二





 その降ってくる光を、横へ飛行しつつかわしていく。
 次にアジ・ダハーカは、徐々に曲がりながら移動していき、威圧感のある三つの顔面が一同の前に向けられた時。

 アジ・ダハーカの周囲に魔法陣が展開されていく。しかも、複数だ。
 「来るぞ! 総員備えろ!」
 王国指揮官は上空を見つつ呼び掛けた。
 次の瞬間、魔法陣から巨大な火球が放たれ、地上に降り注いでいく。
 皆、兵士達などはかわそうと、走る。
 中には、無理だと判断して盾で防ごうとする者もいた。
 だが、盾は壊れてその身に受け、体が燃えていく。
 「うわああああああああ!」

 ミレイはというと、なんとか回避している。「何なのよ!」
 シングも同様だった。
 「くっ!」
 その反面ヴェルストは、持ち前の素早さとアクロバティックな動きで、かわしている。
 アイリスは、聖法術による光の壁を多重に展開し、防いでいた。
 最後にリアは慌てふためいていたのだった。「ど、ど、どうしようなのです!?」

 「リア、なんとかしなさい! 女である前に魔法使いでしょ!」
 ミレイはかわしながら、軽く一瞥した。
 「······やるのです! リアの本気を見せてやるですよ!」

 リアは杖を上空へ掲げ、詠唱を始めていく。「魔力を打ち消す力······此は、対なる方にある······霧散せよ! なのです!」
 リアの掲げる杖の先端が輝き出す。伴って、巨大な魔法陣が形成されていき、完成した時。

 叫ぶ。
 「アンチ・マジック!」
 声高らかに響き、眩い光が上空から降ってくる火球を照らした。
 すると、火球一つだけでなく、全てが霧散していくのだった。


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