神聖具と厄災の力を持つ怪物
五十四
「······聞いた事あるわ。五年前、ヴィンランド王国の魔法使団長が亡くなったって······」
ミレイの言葉に続けて、リアは問う。
「でも、どうゆう事なのですか······? 毒殺されてたなんて初耳です」
女性は口を開こうとする。だが。
「恐らくは、只の者の手による行いではないのでしょう······他国によるものと考えているのでは?」
アイリスがそう言うと、間が空いた。
やがて、女性は息を吐いて答える。
「そうだ······王国はそう考えたらしい。まだ、掴んでないがな」
「その物言い、どの国か見当は付いているのでしょうか?」
「さぁな······これ以上は何も言えん」
アイリスの追及に、女性がそう答えた所で。
リアは「······あの~」と声を上げた。
「何だ?」
「お姉さんを、何と呼べば良いですか?」
「ああ、名か······ワタシの事はノワールと呼んでくれれば良い」
「では、ノワールさん、よろしくです! ちなみにリアなのです!」
「ああ······」
ノワールは素っ気なくそう返すと、室内の寝具に座る。
「おい、盗人はいいのか?」
「ヴェルスト・ハーディ······その事なら、対象の動きを把握出来るようにしてある······それに、向かいにも宿があるだろ? 対象はそこにいる」
「だったら、今すぐに神聖具を取り返すべきだろうが!」
「考えが浅はかだな、ヴェルスト・ハーディ。王国は誰が神聖具を奪おうとしてるか明らかにしたいのだ」
その言葉を聞くと、ヴェルストは舌打ちをする。
「······そーゆ事は先に言えってんだ」
それから、ミレイ達は宿の一室で暇な時間を過ごした。
外の日差しがなくなり、夜になって暫くした時。
「早くに寝といた方が良い」とノワールに勧められ、就寝するミレイ達。
そこから夜が深まっていき、時が経過して朝日が差し始めた頃。ノワールは突如、目覚めた。
「動いたか······」
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