神聖具と厄災の力を持つ怪物
五十三
「魔法で姿を消してるのは分かってんだ。とっとと、姿を現しやがれ!」
ヴェルストがそう言うと、相手の姿が足から顕になっていく。
「魔法を使ってるのまで見破るとは······流石だな、ヴェルスト・ハーディ」
姿が完全に見えるようになった時、そこにいたのは、スレンダーな二十代前半の女性だった。
腰には剣を携えており、顔立ちは美人の部類に入るといっていいだろう。
前髪は長く、左の目元を隠したヘアースタイルをしている。
「あっ? てめぇ何で、オレを知ってやがる?」
「ワタシが王国に在籍しているからだ。キサマの事は、何年も前から知っている。かつての魔法使団長の弟子だった事もな」
そう言われると、ヴェルストの顔色が変わる。
「それ以上言うんじゃねぇ!」
「ほぉ? やはり、触れられたくなかったかな?」
「ヴェルスト、どうゆう事よ?」
「そうなのです! かつての魔法使団長の弟子だったとは?」
ミレイとリアは問う。
ヴェルストは舌打ちをし、仕方なく答え始めた。
「当時の魔法使団長が、オレの師匠だったってだけだ」
「でも、あんた······魔法曲芸士の一座にもいたじゃない······?」
「輝炎の一座にいたのは、それより後の事だ」
「一体、何があったのよ······?」
ミレイは疑問に思い、つい問うように呟く。
すると、女性は不敵に笑った。
「知りたいか? ならワタシが教えてやろうか?」
「てめぇ、それ以上喋るんじゃねぇ!」
「そいつの師匠はな、死んだんだ。正確には、何者かに毒殺されたのさ」
その言葉を聞き、一同の表情が険しいものに変わる。
中でもヴェルストは、不快さと怒りを顕にしていた。
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