神聖具と厄災の力を持つ怪物
四十八
それから何度、朝を迎えただろうか?
ミレイは、悪夢から覚めたかのような声を出して目を開ける。
「んっ······? ここは······?」
「ミレイさん、気が付いたのですね!」
リアは心配そうに、寝具に横になっているミレイの手を両手で握っていた。
「あたしは······確か······」
「ここは宮殿なのですよ。ミレイさん、ずっと目を覚まさないから······心配で······」
「リア······」ミレイは、上体を起こす。
「そうなのです! 皆を呼びに行ってくるのです!」
リアは走って部屋を出ていく。
ミレイは、倒れる直前の事を思い出していた。
「あたしは······。んっ······?」
彼女は何か違う事に気付く。生えている牛の尻尾が長くなっていたのだ。
「なっ、これは!? まさか!」
ミレイは、頭部の二本の角を手で触る。
「角も長くなってるじゃない!」
思案する彼女。間違いない······ディザスター化が進んで······。
ミレイは確信した。
時が経過して。
ミレイのいる一室に、聖女ソフィーと司教アイリス、ヴェルスト、リアが集まっていた。何故か、シングの姿がない。
ミレイは、その事も気掛かりだったが、今はこの重い沈黙が居心地良くなかった。
暫くして、聖女ソフィーが口を開く。
「ミレイ······あなたには申し訳なく思っています······」
ミレイは、何の事か察しは付いていた。
「その先は言わなくていいわ······ディザスター化が進んでいるのよね?」
「······その通りです」
「ミレイさん······リアがあの時止めていれば······!」
  リアは、今にも泣きそうな表情をしている。
「リアのせいじゃないわよ······これは、ディザスター、ミノタウロスの呪いみたいなものなのよ······仕方ないわ」
又、重い雰囲気に包まれる。
「それはそうと、シェインは······?」
ミレイは話題を変えた。
「シェインは······今は落ち着いていますよ······只、力を使って体力がないみたいで、今は寝ている時間が多いのです」
「そう······あたしに構わないでシェインのとこ行っても良いのよ?」
その言葉に、聖女ソフィーは複雑そうな表情をする。
暫くして。
「今日はまだ······シェインの所に行ってないので失礼しますね。ミレイ、申し訳ありません」
聖女ソフィーは頭を下げる。
「では私も失礼致します。聖女様と同じく、シェイン様の事が気になるので」
そう言うのは、司教アイリス。
二人は揃って、退室していく。
「ならオレも、ここに用はねぇから行かせて貰うぞ」
ヴェルストも部屋を出ていった。
すると、部屋にはミレイとリアの二人だけになった。
「リアもいいのよ?」
その言葉に、リアは横に首を振る。
「リアは······ミレイさんといるのです」
「そう······そういえば、シングは?」
「シングさんは、更に元気がなくて大変なのです」
リアの言葉を聞いて、ミレイは思案する。
程無くして。
「リアに任せたい事があるわ」
「任せたい事······なのですか?」
「そうよ。あたし達はシング支援同盟よね?」
「そうですね······?」
「なら、あんたにシングを任せるわ!」
「リアにですか?」
「そうよ」
その肯定を聞くと、リアの表情が嬉しさで満ちていく。
「······ミレイさんがそう言うなら。リアにお任せなのです!」
リアは部屋を出ていくと、シングを探すため通路を歩きだした。
「どこにいるのですかね? シングさんは······?」
ふと、リアの視界に探していたシングが映る。
「シングさんなのです······」
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