神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

四十四





 「あんなにぼろぼろになって······」
 ミレイはシングをちらっと見る。
 「ミライさん、どうしたのですか?」
 リアは、呟きが気になって問う。
 「何でもないわ······それより、リア!」

 「はいなのです!」
 リアには、その言葉だけで伝わったらしい。魔法の詠唱を開始する。
 「限りを超越せし力、彼の者らに与えよ! オール・ブーストなのです!」
 ミレイ達の体が一瞬輝く。
 「じゃあ、リア! シングは頼んだわよ!」
 ミレイは、キマイラへ向かって駆けだす。
 「はいなのです!」
 リアは、シングへと走って近付いていく。
 「シングさん、大丈夫なのですか?」
 「うん······いつっ!」
 シングは、左上腕の刺し傷を押さえた。
 「あわわっ、血が······! 早速、治療してもらうのです!」
 リアは、シングを神官の元へ連れていく。



 ミレイは、キマイラへ向かっていった後。
 その前肢を断罪の大斧で切りつけて、振り返り様に切り上げを行った。
 その一撃は空を切るが······。と思ったら、断罪の大斧の刃部分から、光の斬撃が放たれる。
 光の斬撃は、曲線を描いて向かっていき、キマイラの首辺りを切りつけた。
 そのタイミングで更に、ヴェルストは魔法で空中を飛行しつつキマイラへ近付いていく。
 手には、魔法によって槍状の竜巻を纏ったダガーナイフ。
 それを前へ掲げ、猛スピードで迫る。

 だが、キマイラの口が大きく開かれ、そこから吸収していた剣や槍が放たれた。
 ヴェルストは、前へ進みながら上昇して、かわしていく。
 「ちっ! なら、これでどうだぁ!?」
 キマイラの真上に到達した時、声を上げる。「リベレイション!」
 するとヴェルストは、下に向かって竜巻の槍を放つ。
 キマイラは大きく口を開けて待ち構えている。
 次の瞬間、信じられない光景を目の当たりにする一同。
 キマイラは、その巨大な槍状の竜巻を吸い込むように吸収していったのだ。

 さすがにヴェルストも驚いた表情を見せる。
 キマイラは続けて、吸収した巨大な竜巻の槍をヴェルストへ吐き放った。
 勢い良く、彼へと迫っていく。


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