神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

四十二





 暫くすると、シェインの額から汗が流れ出す。更に時が経過するにつれて、銀色の指輪の一部分が黒く変色しだした。

 その変色は、時が進むと共に広がっていき、半分程で止まる。
 そこでシェインの息が荒くなっていく。「まだ······!」
 指輪の変化は、止まったかと思ったが間違いだった。
 まだ変化していく。
 次は、残りの部分が徐々に金色へ変わりだす。



 かなり時が経って、ようやく指輪の輝きが収まった。
 シェインは、たった一つの神聖具を創っただけで、かなり苦しそうな表情を見せている。
 「この······新しい神聖具の名は······光魔こうまの指輪だよ······この神聖具の力は······」
 シェインは、ヴェルストに光魔の指輪の力について語っていく。
 「そうか······」
 ヴェルストは、創り変えられた指輪を受け取った。

 「さて······残りはミレイの姉ちゃんのだね······」
 シェインは突如、「あれ······?」と声を上げる。その直後、ふらつき横に倒れてしまう。
 「シェイン!」
 姉のソフィーは近付いて抱き抱えた。
 すぐさま、彼女の聖女の力で、シェインは光に包まれていく。
 すると、シェインは地面に手をつき、自分の力で上体を起こしていった。
 「まだだよ······ボクはやり遂げるんだ」

 シェインのその真剣な表情、覚悟に、ソフィーも唇を引き締める。
 「分かりました······シェイン。あなたの体が持つよう、私も協力しますね」
 姉のソフィーは、シェインの両肩を手で支え、聖女の力を使う。
 するとシェインの体が輝きに包まれていく。
 少年はというと······いや彼は、地面に置かれた大斧に両手をかざす。
 大斧は、眩く光だした。

 少しして、又もシェインの額から汗が流れる。
 先程より、その表情は苦しそうに見えないが。それは、姉のソフィーの力によるものだろう。
 やがて、大斧に変化が表れ出した。
 それは僅かだが。大斧の柄の部分に、紋様がうっすらと浮かび上がっている。
 更に柄の下から、紋様が濃くなっていく。
 どの位経過しただろうか?
 そんなに長い時は、経っていないと思われるが。

 紋様が色濃く変わるのが、柄の半分程まできた時、シェインは辛そうな表情を見せ始めた。
 姉のソフィーは、聖女の力を使いつつ、弟が倒れないよう両手で支えている。



 次第に、紋様が柄の上に向かって、色濃く進んでいき、完全に浮かび上がった。
 直後、大斧の輝きが収束していく。
 光は消え、同時にシェインは、姉のソフィーにもたれ掛かる。
 「シェイン!」
 姉のソフィーは、抱き締めて受け止めた。
 「ボク、やり遂げたんだね······」
 「そうですよ······シェイン、あなたは神聖具を創りきったんです······」
 ソフィーの目尻には涙が溜まっていた。

 「······ミレイの姉ちゃん。この神聖具は断罪の大斧······力は······」
 シェインは途切れ途切れに、断罪の大斧の力について話していく。
 それらを伝えきった時、シェインは目をすっと閉じた。

 「シェイン!?」ソフィーは、弟の様子を見て、動揺する。
 だが、すぐにシェインから、息も絶え絶えな呼吸音が聴こえてきた。
 「良かった······シェインは私が絶対に死なせません」
 ソフィーは、シェインを地面に寝かせて、両手をかざす。

 「シェインは頼んだわよ······」
 ミレイは、地面に置かれた断罪の大斧を手に取った。
 「あたし達は行くわ······キマイラを倒しに」
 「ご武運を······シェインの、弟の意思をあなた達に託します」
 ソフィーの言葉に、ミレイは答える。
 「そうね。シェインの為にも、キマイラは絶対に倒すわ······」

 ミレイはディザスター、キマイラのいる所へ向かう為、生い茂る樹木の中に消えていった。
 その後をリア、ヴェルスト、司教アイリスも追っていく。

 「頼みましたよ······」
 ソフィーは、戦いの場へ向かっていったミレイ達にそう呟いた。


「神聖具と厄災の力を持つ怪物」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く