神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

三十九





 「悪いけど!」
 ミレイは地面を踏み駆け出す。
 「遠慮はしないわ!」
 ミレイは早々に、アイリスとの距離を詰めきり、木剣を振り下ろした。
 だが、アイリスは金属製の杖で受け止める。いや、受け流した。
 受け流された事によって、ミレイは前のめりにバランスを崩す。
 「なっ!」

 アイリスはすかさず、金属製の杖を振り下ろしていく。
 ミレイは、地面に両手をついて、側転をしてかわす。
 次に、空中で体勢を変えると、後ろ向きに着地した。
 「中々やるじゃない」
 ミレイはすぐに突進していく。
 再度、真っ直ぐ距離を詰めるかと思いきや、途中で右斜めに低く跳んで軌道を変える。
 「これでどお?」

 相手の横に移動したミレイは、木の剣を下段から斜め上に振るう。
 アイリスはその一撃を、後ろに歩くことでかわした。
 すぐさま、金属製の杖をミレイの首元に突き付ける。
 「あまり、舐めないで頂けますか? でないと、痛い目みますが?」
 「そっちこそ、寸止めなんて余裕ね」
 ミレイは、仕切り直しのため、後方に跳んで距離を取る。
 「後悔させてあげるわ!」
 力強く地面を踏みミレイは、再度相手に向かっていく。
 次に、途中で高く跳躍すると、アイリスの後ろに着地した。
 すかさず、振り向きながら木剣を横薙ぎに振るう。

 その横薙ぎをアイリスは、後方に跳んで回避した。
 次にすぐさま、聖法術の詠唱を開始する。
 「阻む障壁となりて護りたまえ······ホーリー・ウォール」
 そう唱え終わると、アイリスの目の前に透明な障壁が展開された。
 更に彼女は唱えていく。
 「我が敵に聖なる衝撃を加えよ、ホーリー・ショット!」
 一つの光の球が、障壁をすり抜けて放たれる。
 その光の球を、ミレイは屈んで回避した。
 「そんなの当たらないわ!」

 「では、これならどうですか? 我が敵に聖なる衝撃を加えよ」
 アイリスがそこまで唱え終わると、周囲に幾つもの光球が展開される。
 ミレイは、目を見開く。「なっ!?」
 「ホーリー・ショット!」
 アイリスはそう声を上げて、光球を放っていく。
 ミレイは、右に、次は左にかわす。とにかく、回避していく。
 程無く、光球の攻撃が止んだ。
 「やっとね。今度はこっちの······」
 ミレイの言葉が止まる。

 何故かというと、右手に持つ木剣に衝撃を感じたからだ。
 ミレイは木剣を見る。と、見事に折れていた。
 「いつの間に······」
 アイリスは微かに笑う。
 「攻撃が止んだからといって、それで終わりと思わないことです。まだ残していたので」
 どうやら、聖法術の光球を一つだけ残していたらしい。

 「さあ、どうしますか? 武器を失って、それでも勝てると思いますか?」
 アイリスは問い掛けた。


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