神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

三十一





 それから三日が経ち、ディザスターを倒すため出立の日がきた。

 ミレイ達は宮殿前にて、今か今かと待っている。
 「出発はいつかしら?」
 ミレイのその言葉に、シングは「いつだろうね······」と答えた。
 彼は、緊張した面持ちで拳を握り締めている。やはり、まだ吹っ切れていないのだろう。
 そのシングとは違って、リアとヴェルストは緊張等とは無縁だった。

 「ディザスターと戦うの初めてなのです! リアの力、見せてやるのですよ!」
 「ちっ、めんどくせぇな······」

 ミレイは、三人を見比べて、(ばらばらじゃない······)と思う。
 そう思うと共に、シングの事も心配だった。
 (······大丈夫。あたしがあんたを、支えてあげるから)

 「それにしても、本当に遅いわね······」ミレイは、そこで何かを見る。一人の神道兵をだ。
 だが、すぐに視線を外す。
 「気のせいね······」



 かなりの時が立って、ようやく準備が整い、出発の時がきた。
 出発の際に、ニコラス教皇から包みに入った何かを渡される。
 それは手に収まる大きさだった。一体何だろうとミレイ達は思う。
 「それでは、シング殿······戦場に着いたら、その包みを司教にお渡し下され。頼みましたぞ」
 そうニコラス教皇に言われて、ミレイ達は見送られる。

 道中、ミレイ達はディザスターのいる場所について、聞く。
 話によれば、六日か七日で着く東の方向に森林地帯があるらしい。
 その場所で何とか、司教率いる神官と神道兵達が、ディザスターの進行を遅れさせているという。
 「そのディザスターを倒せば良いって訳ね。こっちには、神聖具があるんだから倒せるはずよ」
 ミレイのその言葉に対して、ヴィンランド王国の指揮官は「だがこちらに、神聖具があると言っても油断は出来ません」と諫める。

 「そうね。それはそうと、リア。何さりげなく、こいつの腕を組んでいるのよ」
 ミレイはリアを睨み付けた。
 見れば、リアはシングと腕を組んでいた。
 「ミライさんの許可がいるのですか? 初耳なのですよ」
 リアは挑発するように言う。
 「離れなさい、リア!」
 ミレイはそう言いつつ、シングの片方の腕を引っ張って、リアから離そうとした。
 「ミレイ、痛い、痛いから! 引っ張るのはめよう!」
 シングは本気で痛がっている。
 当然といえば当然だろう。
 ミノタウロスの厄災の力によって、ミレイの腕力等は上がっているのだから。

 程無くして、ミレイとリアの争いは止む。
 話し合いにより、互いにシングと腕を組むという形で。



 それから、七日後の夕暮れ時に、戦場の中でも後方の隊と合流する。
 「それでは、日が暮れるまでお待ち下さい。今日の戦闘が終われば、司教が来ますので」
 一人の神道兵はそう言うと、負傷した者を天幕に運ぶ手伝いに戻った。

 ミレイ達は、夜になるのを待つ。



 程無くして、日が暮れ少し経った時、ミレイ達に近付く足音が聞こえた。
 「お待たせ致しました」
 丁寧な口調の女性の声が響く。

 ミレイ達は声のした方を見るのだった。


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