神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

二十九





 夕食を取り終わった後、早速ミレイ一同は聖女ソフィーに案内されていた。
 勿論、警護のため数名の神道兵も付いてきている。

 「······話って何なのかしら?」
 ミレイは、小声でシングに話し掛けた。
 「さあ、何だろうね」
 「もしかして······リアが知らずに無礼を?」
 リアは、そう言って心配をする。
 「それなら、ヴェルストの態度の方が無礼だと思うわよ」
 ミレイの言葉に、ヴェルストはぼやく。
 「余計なお世話だ······」

 そうこう会話をしている内に、大きな扉の前に一同は辿り着いた。
 神道兵二名が進み出て、扉を押していく。
 扉が開き終わると、聖女ソフィーは「では、中にどうぞ」と言い、まず自分が入っていった。
 ミレイ達も中に足を踏み入れる。
 すると、背後でゆっくり扉が閉まっていく音が聞こえた。

 扉が閉まり終わると、聖女ソフィーは表情を真剣なものに改める。
 「話があると言いましたが、それは弟のシェインの事です······」
 「それは、先程の救世主と同じ力を持ってるって言ってた事と関係が······?」
 シングは、そう問う。
 「そうなのです······。私の弟シェインは、救世主と同じ力を確かに有しているのです」
 その聖女ソフィーの言葉に対して、ミレイ達は驚愕の表情を見せた。
 「信じられないわ······本当に、だったなんて」
 「まさか······! 事実なんて······」

 ミレイとシングの言葉に、聖女ソフィーは続きの言葉を発する。
 「事実なのです······」
 「なら何故、神聖具を創ってすぐにでも······」
 シングは問おうとするが、聖女ソフィーに遮られる。
 「それが出来ないのです!」
 聖女ソフィーの必死な表情と言葉に、シングは発言出来なかった。

 暫くして、再び聖女ソフィーは発言する。
 「······取り乱して、申し訳ありません。弟のシェインには、神聖具を創る力があっても、それが出来ないのです······弟は······心臓に病をもっていて、力を使うと体が耐えれるか······」
 「もしかして······本人は······」
 ミレイがそう言うと、続きの言葉を聖女ソフィーは補完する。
 「はい······シェインは病の事は知りません」

 その場が、沈黙に包まれる。

 再び、聖女ソフィーは発言する。
 辛そうな表情をして。
 「私の······聖女としての力でも癒すことは出来ます······でも、一時的になんです! 傷などとは違って、病だけは再び発症してしまう······。私は、出来る事なら、弟の好きなようにさせてあげたいのに······」

 又、場が静まり返る。

 それから暫くして、話が終わったという事で、部屋に戻っていいことになった。
 勿論、この話は他言無用と釘を刺されたが。

 ミレイはその夜、長旅で疲れていたのかいつの間に眠っていた。






 翌朝、部屋の扉をノックする音が響いた。


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