お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

慣れ






 「ねー、春香」

 ぷい。というような効果音がつきそうな感じで春香はどこか別の方向を向いてしまう。悲しい…

 「はーるーかー」
 
 僕が強引に春香と目を合わせると春香は顔を真っ赤にしながらバイト行ってくる。って言って逃げるようにアパートから出て行ってしまう。

 「春香ちゃんにはまだ刺激が強すぎたのかなぁ」

 春香が出て行ってしまった後、僕に抱きつきながらまゆが言う。ちなみに、春香が出て行く前にゆいちゃんもバイトに行ってくるね。と僕に抱きつきながら言って頭を撫でて見送ってあげたので、今、アパートには僕とまゆだけしかいない。

 「僕、そんなやばいこと書いてた?」
 「うーん。普通にまゆたちのことをめちゃくちゃ愛してくれてることがわかる内容で、熱烈だけど過激ではなかったと思うよ」
 「春香には刺激が強すぎるって?」
 「そのままの意味だよ。まゆとかゆいちゃんはりょうちゃんにずっと好き。って言ってもらえてたからさ、好き。って想いを純粋に受け入れられるけど、春香ちゃんはさ、長すぎたんだと思うよ。ずっとずっと、幼馴染みだったからりょうちゃんの好き。って感情を純粋に受け入れられないんだよ。別に、りょうちゃんのことが嫌いってわけじゃないし、あの手紙が嬉しくなかったわけじゃないはずだから、あまり気にしなくていいと思うよ」

 春香とのことを本気で心配していた僕を見てクスリと笑いながらまゆは教えてくれた。そう言われて、僕が春香に対して現在の意味で好き。と伝えることができたのは、本当に最近の出来事だったことを思い出す。春香と出会ってから十数年、ずっと、春香には今みたいにな意味で好き。とは伝えていなかった。なのに、文章でいきなりドカンと、好き。って全力で言われて、どう反応すればいいのかわからないのだろう。そう考えると、先程の春香の反応がめちゃくちゃかわいく思えてくる。

 「バイトから帰ったらさ、春香ちゃんきっと夜ご飯用意して待ってくれてると思うから、優しく声をかけてあげてよ。きっと今頃、春香ちゃん、りょうちゃんに悪いことした。ってめっちゃ後悔してると思うから」

 そう言いながらまゆは春香とのメッセージのやり取りを笑いながら見せてくれた。そこにはりょうちゃんに悪いことしちゃったよね。とか、りょうちゃんに嫌われたらどうしよう。とか、後悔と不安の言葉が並んでいた。

 あれくらいのことで僕が春香を嫌いになるわけないのに。十数年前からずっと、好きだったのだから。ずっと、伝えてなかったけど、ずっとずっと好きだったんだから。

 「わかった。まゆ、ありがとう」
 「いえいえ」

 そう言いながら僕を強く抱きしめて、抱きしめてアピールをしてくるまゆを抱きしめる。あとで、春香もこうやって優しく抱きしめて、優しく大丈夫だよ。と言って、好きだよ。と改めて伝えよう。そう、思った。






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