お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

罰と幸せ





 「あー、春香ちゃんとまゆちゃんずるぃ……」

 部活の練習が終わりアパートに4人で帰ると、ゆいちゃんが駄々を言う子どもみたいに喚きだすゆいちゃんを慰めてあげたいが、僕の腕をギュッと掴んで離してくれない春香とまゆに阻まれてしまう。

 僕にはゆいちゃんを朝から極端に甘やかした罰で今晩、春香とまゆを甘やかすことと、寝坊したのと、僕を寝坊に巻き込んだ罰としてゆいちゃんは今日、じゃんけんに参加する権利が与えられず、僕の隣は春香とまゆが固定になった。

 「寝坊したゆいちゃんが悪いんだよ」
 「そーだよ。りょうちゃんまで巻き込んで寝坊して…朝からまゆと春香ちゃんがどれだけ心配したと思ってるの」
 「ご、ごめんなさい……」

 正論をぶつけられてゆいちゃんは黙り込んでしまう。ちょっとかわいそうだけど、僕に春香とまゆを止めることはできない……

 「先輩2人にいじめられてるよ〜りょうくん助けて…」

 1人じゃ敵わないとみたゆいちゃんが僕に助けを求めてきた。かわいい。けど、僕が加わっても春香とまゆ(主に春香)には絶対に敵わないよ。

 「りょうちゃん、ゆいちゃんを甘やかしたらダメだからね。そうだ、ゆいちゃんが1人でちゃんと起きれるようになるまでゆいちゃんのじゃんけん参加はなしにする?」
 「それだけはやめてください…」

 まゆが意地悪な表情でゆいちゃんに言うとゆいちゃんはガチ泣きしながらまゆにお願いする。まゆは冗談で言ったのだろうが、ゆいちゃんは冗談と受け止めてくれなかった。

 「ゆいちゃん、じょ、冗談だから落ち着いて…ご、ごめんね」

 ガチ泣きしたゆいちゃんを見てまゆが慌ててゆいちゃんに謝るが、ゆいちゃんは泣き止んでくれない。

 「ゆいちゃん、泣き止んでよ。ごめんね。本当に冗談だから許して…」
 「そこ、変わってくれたら許す……」
 「え、えぇ……」

 まゆはギュッと僕の腕を抱きしめて戸惑いの表情をしながら僕になんとかして。と言う目を向けてくるが…

 「いくらゆいちゃんが寝坊したからってゆいちゃん泣かせたらダメだよね。まゆ、ゆいちゃんとじゃんけんしてあげな。ゆいちゃんもそれで許してあげて」
 
 僕の提案を受けてまゆが渋々わかった。と言うと、泣いていたゆいちゃんは泣くのをやめて笑顔でわかった。とか言い出した。泣き真似してやがった……

 それを見たまゆははめられた。と騒ぎ出したがゆいちゃんが問答無用でじゃんけんを始めた。そんな賑やかな様子を僕の腕をそっと抱きしめながら春香は笑顔で見守っていた。

 じゃんけんの結果、ゆいちゃんは負けてまゆが再び僕の腕を抱きしめる。ゆいちゃんはもう一回と泣きながらまゆに訴えるが、嘘泣きであることはバレているので相手にされない。

 久しぶりに4人でアパートで過ごしたが、やっぱりすごく賑やかですごく心地良くて、すごく幸せ。そう感じたのはきっと、僕だけではなく、春香とまゆとゆいちゃんも僕と同じように感じてくれているだろう。






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