お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
ありがとう。
 朝、起きてから春香とホテルを出るとまゆとゆいちゃんが迎えに来てくれていた。まゆとゆいちゃんと合流して大学に向かって、講義を受けて、今日はそれぞれバイトに向かう。
 「りょうちゃん、また明日ね」
 「うん。まゆ、春香のことよろしくね」
 「はーい」
 バイトが終わり、今日はゆいちゃんと2人だけの約束をしていたので、まゆにゆいちゃんのアパートまで送ってもらう。春香のことを頼むと唇に手を当てて物欲しそうな表情をしてきたので、一度だけキスをしてから車を降りてまゆを見送る。
 「りょうくん、いらっしゃい」
 ゆいちゃんの部屋のインターホンを鳴らすとエプロン姿のゆいちゃんが出迎えてくれた。まじ天使だわ。
 「りょうくん、バイトお疲れ様。荷物持つよ」
 「いや、大丈夫だよ。ありがと」
 僕の荷物を持ってくれようとしたゆいちゃんだったが、女の子に荷物を持たせるのは申し訳ないので、僕はゆいちゃんの頭を撫でてあげるとゆいちゃんは満足そうにえへへ。と言ってくれる。かわいいよぅ。
 「夜ご飯もう少しでできるけど、先お風呂入る?それとも、私にする?」
 かわいいかよ。最高にかわいい。
 「お腹空いたしゆいちゃんが用意してくれる夜ご飯が待ちきれないから先夜ご飯がいいな」
 「はーい。じゃあ、すぐに用意するね。ちょっと待ってて…じゃ、じゃあ、りょうくん、夜ご飯の後は一緒にお風呂入ろうね」
 顔を少し赤くしながらそう言ってくれるゆいちゃんがかわいすぎた。かわいすぎてまじであかんよ。
 「りょうくんとここで2人きりってかなり久しぶりだよね」
 夜ご飯を机まで運びながらゆいちゃんは僕に言う。たしかに、そうだよな。基本、僕とゆいちゃんが一緒にいる時は春香とまゆも一緒だし、ゆいちゃんがバイトとかでこのアパートで寝る日も、僕は春香とまゆと一緒だし…
 「なんか、いつもは1人だと広く感じちゃうけど、2人になるとちょっと狭いね…」
 笑いながらそう言うゆいちゃんを見て、少し申し訳なくなってしまう。いつも、僕が、春香とまゆと幸せな時間を過ごしている時、ゆいちゃんはこの部屋で1人…寂しいだろうな。毎回毎回、この部屋で1人になる度にゆいちゃんが僕と春香とまゆに電話してくる理由がよくわかる。
 「りょうくんを責めてるわけじゃないんだよ。私はさ、わがまま言ってばかりの私を受け入れてくれたりょうくんと春香ちゃんとまゆちゃんに感謝してるから。それにね。バイト終わって、この部屋に戻って、寂しい。って思えるってことは普段、りょうくんたちと一緒にいられることが本当に幸せ。ってことだから…りょうくん、ありがとう。こんな私を幸せにしてくれて……」
 涙を浮かべながら、幸せそうな表情でそんなことを言われて、僕も泣いてしまう。そして、反射的にゆいちゃんをぎゅっと抱きしめる。
 「りょうくん、大好き」
 「僕も、ゆいちゃんのこと大好き」
 「私のことどれくらい好き?」
 「世界同率1位」
 「あはは。同率かぁ」
 「ごめん…」
 「謝らないの。りょうくんは間違ってないから。ありがと。私のこと、本当に好きになってくれて」
 心の底から僕に感謝するような声と瞳で、ゆいちゃんは僕にそう言ってくれた。お礼を言わないといけないのはこっちなのに……
 「ありがとう。僕なんかを好きになってくれて。僕を…僕たちを選んでくれてありがとう」
 気づいたら、僕の瞳からも涙が流れていた。僕とゆいちゃんはお互いに涙を流しながら、そっと顔を近づけて、ありがとう。と唇を重ねた。
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