お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
朝の憂鬱
 「りょうちゃん、おはよう」
 「うん。まゆ、おはよう」
 やばい。どうしよう。まゆとおはよう。って言っただけで僕もまゆも顔が真っ赤になってしまう。僕が起きるよりも前に目を覚ましていたまゆは今みたいにずっと、僕を抱きしめてくれてたのかな……
 「りょうちゃん、おはよう」
 「春香、おはよう」
 台所からエプロン姿の春香が朝ごはんを用意してくれながらおはよう。と言ってくれる。朝からめっちゃ幸せだわ。
 「なんか、すごく久しぶりな感じするね」
 僕と春香とまゆがおはよう。と言いあっても、僕の腕をギュッと抱きしめて幸せそうな表情で眠るゆいちゃん。この状態のゆいちゃんを起こすの大変なんだよな。こんな気持ちよさそうに寝てるゆいちゃんを起こしてしまう罪悪感もハンパないし……
 「りょうちゃん、ゆいちゃんが起きるまでゆっくりしてていいよ。ま、まゆちゃん…申し訳ないけど…朝ごはんの準備終わったらそこ代わって…お願い…」
 「うん。いいよ。手伝おうか?」
 「大丈夫だよ。交代までの間ゆっくりしてて」
 僕を抱きしめているまゆがはーい。と返事をするのを聞いて春香は台所に戻って手際よく朝ごはんを用意してくれる。ゆいちゃんがいつ起きるかわからないので、冷めても美味しいサンドイッチを用意してくれている辺り気が利いている。
 「まゆちゃん、交代!」
 「はいはい。じゃあ、まゆは、りょうちゃんの枕になってあげる」
 そう言って春香と交代したまゆは僕から枕を取り上げて枕があった場所で正座して、僕の頭をそっと載せてくれる。久しぶりの膝枕…最高に幸せです。
 まゆに膝枕されて、春香とゆいちゃんに抱きしめられていて、ぐっすり眠っているゆいちゃんの可愛らしい寝顔を堪能しながら、春香とまゆと返事をお喋りする。そんな、すごく幸せな時間がずっと続くと思った。
 「りょうちゃん、電話なってるよ」
 「え、あ、うん。誰からか見てもらっていい?」
 「うん。えっと…え、あ、りょうちゃんのお母さんから電話…」
 布団の上にあったスマホを両腕が塞がっていて確認できない僕の代わりにまゆに確認してもらう。普段、お母さんから電話がかかってくることなんて珍しい。嫌な予感しかしない。
 「は、春香ちゃんの電話も…」
 「え?誰…から?」
 「お、お母さんから…」
 春香のお母さんからも電話がかかってくる。嫌な予感しかしない。幸せな雰囲気は一瞬で凍りついてしまう。
 「りょうちゃん、まだ、ゆいちゃん寝てるから起こさないようにそこにいてあげて。まゆちゃん、りょうちゃんの側にいてあげて…私、ちょっと電話してくる。だ、大丈夫だよ。大丈夫だからそんな心配そうな表情しないで。何かあってもなんとかするから」
 そう言って春香は僕のスマホと自分のスマホを持ってリビングを出て行った。僕のスマホも持って行ったのは僕がお母さんからの電話に出ないようにするためだろう。
 僕のお母さんと春香のお母さん、2人が同時に電話してきた事実がすごく怖くて…春香のことを心配しながら春香が戻ってくるのを待つ。
 本当は春香のところに行きたいけど、不安そうにしているまゆと、まだ眠っているゆいちゃんを放っておく訳にはいかないし、大丈夫。と言ってくれた春香を信じて待つことにした。
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