お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

メザメ





 昔の夢を見ていた。懐かしい。ずいぶんと前の記憶を思い返すように、夢を見ていた。

 「頭いた…」

 目を覚ますと普段とは違う感覚がした。もう、朝?昨日の記憶がほとんどない…私、いつ寝たんだろう……

 隣でぐっすりと私を抱きしめながら寝ている最愛の人の頭を優しく撫でながら、先程まで見ていた夢を思い返す。

 私には、憧れのお姉ちゃんがいた。お姉ちゃんと言うよりもお姉さんの方がふさわしいのかもしれない。だって、実際の姉のような存在でも、血が繋がってるわけではないから。

 あの人は私に持ってないものを全て持ってる。あの人の名前から、一文字いただいたのに、私はあの人に似つかなかった。すごく可愛いらしさがあって、すごく家庭的で、怒ると怖いけど…いつも優しくて…大人しくて清楚で……私なんかと違って、すごく女の子で…私にとって、憧れの存在だった。

 だから、私の兄が羨ましかった。私の憧れからの愛を独占していたのだから…あんなクソみたいな兄貴のどこがいいのかわからないけど…お兄ちゃんといると幸せそうにしているあの人の表情を見て、お似合いだな。って思った。

 それなのに、いつの間にかわけのわからん女とひっついて二股したと思ったら、今度は三股?許せるわけがない。3人全員幸せ?綺麗事でしかない。だって、3人に分散されてる愛情とか時間を独り占めした方が、絶対にいっぱい幸せだもん。

 この前は…二股なんかして、絶対にいつか崩壊すると思ってた。だから、そうなってから、お兄ちゃんとあの人が2人でいる道を選べばいいと思っていた。お兄ちゃんがあの人を捨てるなんてありえないから……

 だから、表面上は仲良くしてた。邪魔者だと、鬱陶しく思っていたが、仲良くしてた。実際、すごくいい人だし、可愛くて、ちょっとドジだけど、すごく前向きで明るい人で…一緒にいて楽しかったけど、それでも、長年、お兄ちゃんと2人で幸せそうにしていたあの人を見ると……やっぱり邪魔者でしかないと思ってた。

 いずれ崩壊する。そう思っていたのに、二股どころか三股して…どうしてそうなる?って思った。邪魔者が2人に増えた。

 崩壊しないのなら…させてしまおう。あの人には幸せになって欲しい。私が大好きなあの人に幸せになって欲しい。そのために邪魔者は駆除する……

 起き上がって、部屋のベランダから外の景色を眺めると、旅館の側で、平気で三股するクズと邪魔者その1が手を繋いで歩いていた。あなたに恨みはない。でも、私が大好きなあの人の幸せのために…そこから消えて……そこにいるのが相応しい人は…あの人だから……






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