お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
出発前
 まゆとバイトに行った日は帰ってからぐっすり眠った。前日とその日の疲れが一気に来たのか春香もまゆもゆいちゃんもめちゃくちゃぐっすり気持ちよさそうに眠っていてかわいかった。
 「りょうちゃん…ゆいちゃん叩き起こして…」
 「はーい」
 まゆに言われてゆいちゃんを起こすが、全く起きてくれない。ゆいちゃん、今日もマイペース……
 「どうしたら起きてくれる?」
 「王子様のキス…」
 ため息混じりに聞いてみるとゆいちゃんがそんなことを言い出した。絶対起きてるでしょ……
 「ゆいちゃん、バカなこと言ってると怒るよ…」
 「ぐーぐーすぴー」
 春香が割とまじなトーンで言うとゆいちゃんは下手くそな寝たふりをする。かわいいなぁ。でも、ゆいちゃん、変な汗かいてるよ…
 「ゆいちゃん、そろそろ起きようか」
 朝が弱くてマイペースで、甘えん坊なかわいいかわいいお姫様のほっぺたを人差し指でつんつんしながら起こすと割とあっさり起きてくれた。(ちょっとボーっとはしているが…)
 「よし、じゃあ、忘れ物ない?」
 まゆに確認されてみんな荷物の確認を始める。春香が寝起きで頭がまともに動いていない分の荷物をチェックしているのを見ると春香がお姉ちゃんみたいに思えた。
 「あ、まゆちゃん、車の鍵、忘れて……」
 「置いてただけ!忘れてないもん!」
 ゆいちゃんの荷物を確認していた春香がたまたま、まゆの車の鍵を見つけてまゆに言うとまゆは顔を真っ赤にして否定する。めっちゃかわいい。
 「あ、りょうちゃん、お財布出して」
 「え?財布?どうして?」
 え…かつあげ?まゆちゃん怖い…まゆの命令を拒否することはできないし拒否する気もないからまゆに財布を渡す。まゆになら、中身全部取られても許せる。まあ、まゆはそんなこと絶対にしないけど……
 「旅行終わるまでりょうちゃんのお財布はまゆが預かっておくね」
 「え…なんで?」
 「りょうちゃんの誕生日プレゼントに贈った温泉旅行なんだからりょうちゃんには財布を絶対に出させません。食事代にガソリン代、家族へのお土産から部活、バイト先のお土産まで、まゆたちのお財布から出させていただきます」
 「いやいや、それは申し訳ないよ」
 「いいから!いつも幸せにしてもらってるお返しにこれくらいさせてよ…もし、りょうちゃんがまゆたちに申し訳ないって思うなら…その気持ちはまゆたちの誕生日とかに返してくれればいいからさ」
 笑顔で言うまゆと隣で頷く春香と頭の悪そうな寝起きのゆいちゃんのそーだよ。の一言を聞いて、それでも財布をまゆに渡さないのは野暮だと思ったので財布をまゆに渡す。
 せっかくだし、お言葉に甘えよう。その代わり、みんなの誕生日に倍返しするからね。
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