お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

世界一幸せな朝





 「りょうちゃん、おーきーて。朝ですよー」

 朝、かなり早い時間にまゆに起こされた僕はあと少しだけ…と言って再び布団をかぶる。

 「だーめ。まゆがりょうちゃんを独占できるのは今日と明日のバイトまでなんだから時間がないの。まゆ、りょうちゃんと2人でしたいこといっぱいあるから時間がいくらあっても足りないの…だから、ね。早く起きて…」

 悲しそうな表情でそう言われて起きないわけがない。僕は飛び起きてまゆを抱きしめる。

 「そうだよね。せっかく2人きりなんだから、満喫しないとだよね。ごめんね」
 「えへへ。まゆを抱きしめてくれたから許してあげる」

 めっちゃ幸せそうな表情でそう言ってくれるまゆを見てキャンとしてしまう。かわいすぎるよこの子…

 「りょうちゃん…今日はまゆのお願い全部聞いてくれる?」
 「うん。可能な範囲でなら何でも言うこと聞くよ」

 春香とゆいちゃんから提示された条件を破らないようなお願いなら、全部叶えてあげるつもりだ。僕の返事を聞いたまゆは幸せそうな表情でありがと。と言ってくれる。

 「じゃあさ、早朝ウォーキングしよ。それで、近くの喫茶店でモーニングね!」
 「うん。いいよ」

 外に出るために着替えたり寝癖をなおしたりしてからまゆと手を繋いで外に出る。まゆと一緒に海沿いの景色が綺麗な道を歩く。早朝なので海辺に人は全くいなくて僕とまゆは2人きりの空間でまったりと海沿いの道を歩く。

 最初は手を繋ぐだけだったが、まゆは突然手を繋ぐのをやめて甘えるように腕を組んでくる。かわいい。かわいすぎる。

 「歩き辛くない?」
 「大丈夫だよ」
 「このまま歩いていい?」
 「もちろんだよ」

 やった!と喜びながら僕と腕を組んで歩くまゆがかわいすぎる。抱きしめたい。

 そんな幸せな気分を味わいながら海沿いの道から少し外れた場所にあるまゆの行きつけの喫茶店に入る。落ち着いた感じの喫茶店でモーニングで僕はサンドイッチとコーヒー、まゆはトーストとコーヒーを注文してサンドイッチとトーストを半分こしていただいた。

 ゆっくりと今日の予定を話しながらモーニングをいただいてコーヒーをゆっくりと飲み、お会計を済ませて喫茶店を出る。今日、せっかく2人きりのデートだし、普段の感謝の気持ちも込めて、今日は意地でも財布は全部僕が出すと決めていたため、お会計の時はちょっと揉めたりしたけど僕が支払って喫茶店を出る。

 「りょうちゃん、ありがとう。ごちそうさま」
 「いえいえ、これくらい当然だよ」

 普段、まゆにはいっぱい助けてもらってるから、こうやってデートできる日はきちんとお返しをしたい。

 「今からはどうする?」
 「お家帰ってお菓子作り!りょうちゃんが好きなお菓子いっぱい作ろう」
 「ありがとう。まゆが好きなお菓子もいっぱい作らないとね」
 「まゆはりょうちゃんが好きなお菓子は全部大好きだから大丈夫。だからりょうちゃんが好きなものいっぱい作ろ」
 「ありがとう」
 「えへへ。こちらこそありがとう。りょうちゃんとお菓子作り楽しみだなぁ」

 そう言って再び僕と腕を組んでくれるまゆの笑顔を横目に、僕はまゆと一緒に歩き始める。

 帰り道もゆっくりと海沿いを歩いて、太陽の光が当たり、美しく輝く海の景色を眺めながらまゆと一緒にまゆの実家へと歩く。

 「りょうちゃん、こっち向いて」
 「ん?」

 まゆがかわいすぎるから直視できずに前を見て歩いているとまゆに声をかけられて僕は横にいるまゆに顔を向ける。すると、唇に何か柔らかいものが当たった感触がする。それと同時に、幸せという温かさが体全体に伝わり、反射的にまゆを抱きしめて、僕は幸せのお返しをした。

 「ちょっ、いきなり抱きしめてキスしないでよ…び、びっくりするじゃん……」
 「先にキスしてきたのはまゆでしょ。お返しだよ。ありがとう。すごく幸せだよ」
 「そっか…まゆの方こそありがとう。いっぱい幸せをくれてありがとう。まゆは、本当に幸せだよ。今のまゆは世界一幸せな女の子だと思う」
 「大袈裟だなぁ…」
 「大袈裟じゃないよ」

 まゆは笑顔でそう答えながら再び僕と腕を組んで歩き始める。

 「ずっとまゆだけが世界一幸せだったらなぁ…」

 僕には聞こえないくらい小さな声でまゆは呟く。海沿いの風の強さから発生する風の音で、まゆの小さな声は掻き消されてしまい、よくも悪くも、僕の耳にまゆの呟きが届くことはなかった。






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