お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

物足りなさ






 4人で一緒になってから数日が経過した。
 基本的にゆいちゃんは僕たちのアパートでお泊まりをするのだが、バイトがある日は自分が借りているアパートで過ごしている。いずれ、ゆいちゃんもここで同居する。と言い出しそうだけど…さすがに4人で住むには狭いよなぁ…どうなんだろう。

 今日は春香とゆいちゃんがバイトで僕とまゆはアパートで2人きりになり部屋の中でごろごろして家事をして、ちょっとだけお散歩して近所のカフェでお茶をして、スーパーで買い物をして夜ご飯を作って春香の帰りを待つ。今日、ゆいちゃんは夜遅くまで、ゆいちゃんが借りているアパートの真下にあるお店でバイトだ。終わる時間が遅いのと、賄いが出るので、夜ご飯が必要ない。と言う理由でゆいちゃんは今日は自分の部屋で過ごすらしい。だから、今日はちょっとだけ久しぶりの3人での生活だ。

 「りょうちゃん、ごめんだけどコンビニ行ってきてくれないかな?ぽん酢がなくなりそうなの…」
 「うん。わかった。じゃあ、行ってくるね」
 「お願いしまーす」

 まゆと一緒に夜ご飯を作っているとまゆにお使いを頼まれたので僕はコンビニに向かった。コンビニに向かい、ぽん酢を購入してアパートに戻る。

 「ただいま」
 「おかえりなさい」

 アパートの扉を開けるとまゆが玄関まで出迎えに来てくれた。

 「まゆ、これ、頼まれてたぽん酢」
 「ありがとう。お疲れ様。夜ご飯もうすぐできるよ。お風呂ももう入れてあるよ。夜ご飯にする?お風呂にする?それともまゆにする?」
 「まゆがいい」

 迷うことなく即答…うん。だって、かわいすぎるんだもん。この誘惑には抗えない。

 「じゃあ、まゆのこと好きにしていいよ…」
 「抱きしめていい?」
 「気の済むまで抱きしめていいよ」

 まゆがかわいすぎて速攻まゆを抱きしめる。まゆを抱きしめて、まゆの頭を撫でるとまゆはえへへ。と言いながら幸せそうな表情をする。あぁ…幸せ……

 「ただいま………」

 玄関でまゆを抱きしめていると、バイトを終えた春香がアパートの扉を開けて玄関に入って来て、僕とまゆを見つめる。

 「あ、えっと、春香…おかえり……」
 「は、春香ちゃん。おかえりなさい。バイト、お疲れ様……」

 僕とまゆは冷や汗をかきながら慌てて離れる。

 「も、もう。りょうちゃん、いきなりまゆを抱きしめないでよ。びっくりしたじゃん」

 ズル…春香の逆鱗に触れたくないからって僕に全責任押し付けようとしてる。ずるい…

 「ま、まゆが夜ご飯にする?お風呂にする?それともまゆにする?とか聞いて誘惑するからじゃん」
 「えーなんのことかまゆわかんなぁい」

 あーもう。かわいい。かわいいかよ。かわいすぎるよ。

 「うん。状況は大体わかったから。とりあえず、リビング行こうか」

 僕が持ってる買い物用のエコバッグと僕とまゆの表情などを見て大体の状況を察した春香は僕とまゆにそう言って僕とまゆの間を通ってリビングに向かう。こ、怖い。

 「ほら、2人とも、はやく。私、バイトで疲れてるからこれ以上疲れさせないでよ」

 怖すぎる。僕とまゆは震えながらリビングまで歩く。まあ、普通、怒るよね。一生懸命バイトして疲れて帰ったら自分だけ除け者にされて僕とまゆが玄関でいちゃいちゃしていたら……ごめんなさい。

 「ま、まゆ、夜ご飯の仕上げ残ってるからそれだけ済ませちゃお…」
 「じゃあ、まゆちゃんは後でね。りょうちゃん、リビングじゃなくて、りょうちゃんの部屋でお話ししようか」
 「は、はい…」

 僕は震えながら自分の部屋に入る。後で…と宣告されたまゆは震えながら台所に戻って行った。

 「抱きしめて…」
 「え?」
 「早く抱きしめて…まゆちゃんだけずるい…」
 「あ、はい」

 春香のご要望通り僕は春香を抱きしめる。

 「まゆちゃんが来るまで抱きしめててね。離したら本当にお説教しちゃうからね」
 「怒ってないの?」
 「怒ってないよ。りょうちゃんは私だけのものじゃないから…仕方ないよ。でも、見ちゃった分、同じように扱ってもらわないと気が済まないの…」
 「ごめんね…」
 「怒ってないから大丈夫。ちょっとからかっただけだよ」

 この前のイタズラといい、最近、春香がいたずらっ子になってきてる気がする……心臓に悪いんだよ。春香のイタズラは……

 その後、震えながら部屋に入って来たまゆにネタバラシするとまゆはめちゃくちゃ安堵していた。そして、3人でリビングに戻って夜ご飯を食べて、3人で映画を観て、順番にお風呂に入って、以前のように3人で眠りについた。久しぶりに3人で生活した。幸せだったけど、ちょっと物足りなく感じてしまう僕は、本当に幸せ者だと思う。







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