お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
側にいること
 「ねえ、まゆって、邪魔者?」
 まゆと交代でお風呂に入って、お風呂から出て部屋に戻ると、まゆは再び泣いていて、春香はまゆを慰めながら困った表情をしていた。僕が部屋に入ってすぐに、まゆが僕にそう尋ねて僕は何とも言えない気持ちになるが、すぐに心を落ち着かせてそっとまゆと春香の側に座る。
 「春香、ちょっと悪いけど、少しだけ部屋の外に出ててくれないかな?たぶん、春とりょうた君帰ってきてるはずだから、少しだけ2人の部屋にいて欲しいな。春とりょうた君にはまゆが足を挫いちゃった。って説明したから何か聞かれたら話を合わせておいて欲しいな」
 「う、うん…わかった。りょうちゃん、まゆちゃんのことよろしくね」
 
 春香は優しい声でそう言って部屋から出て行き僕とまゆを2人きりにしてくれた。
 「まゆ、まゆはまゆのことを邪魔者だと思うの?」
 「わからないよ。だから、聞いてるの。りょうちゃんたちにとってまゆは邪魔者?」
 「そんなわけないよ」
 僕はギュッとまゆを抱きしめる。側にいて。と言葉ではなく行動で示すように僕はまゆを強く抱きしめた。
 「だって…あの人も言ってたじゃん。おかしいって…まゆがいなければ、りょうちゃんと春香ちゃんは2人で幸せになれてたんだよ。まゆは2人の幸せの邪魔者だよ……」
 「まゆ、そんなこと言わないの。大丈夫。まゆは僕にとっては必要な人なんだよ。春香にとってもまゆは必要な人だと思う。まゆは邪魔者なんかじゃない。まゆ、大好き。まゆは邪魔者なんかじゃないからさ、まゆがよかったらずっと僕の側にいて欲しいな…」
 「りょうちゃん…本当に?」
 「うん。仮にさ、まゆが邪魔者だったらさ、まゆが別れるって言い出した時に止めたり、まゆと一緒に暮らしたりしないよ。僕も春香も、まゆのことが大好きだからまゆと一緒にいる。だから、安心して…例え、誰に何て言われても、僕は春香とまゆが望んでくれる限り、3人で一緒にいられることを絶対に守るからさ…」
 
 まゆはりょうちゃん…と何度も僕の名前を呼びながら僕に抱きついてくれる。
 「まゆ、ずっと一緒にいてね」
 「うん。まゆ、絶対にりょうちゃんと春香ちゃんとずっと一緒にいる」
 今、思えば、まゆはすごく繊細な女の子だ。普段は明るくてちょっと頼りがいがあるけど、どこか抜けているかわいらしい女の子だけど、お父さんに関係を否定されたり、今回、みのり先輩に否定されたりすると深く傷つく。これからはそう言ったことからもまゆをしっかり守って、まゆが傷つかないように気を配らなければならない。
 「まゆ、大丈夫?」
 「りょうちゃんが大好き。って言ってくれたら大丈夫」
 「大好きだよ。まゆ」
 「りょうちゃんがこれからもずっと一緒にいてってもう一度言ってくれたら大丈夫」
 「まゆ、これからもずっと一緒にいようね」
 「りょうちゃんが、まゆのこと世界で1番大好き。って言ってくれたら大丈夫」
 「春香とまゆが世界で1番大切だよ。春香もまゆも世界で1番大好き。ずっとずっと、3人で一緒にいよう。もう、どちらかなんて選べない。3人じゃないと嫌だ」
 「そっか、ありがとう。りょうちゃん、これからも春香ちゃんと3人で一緒にいようね」
 ようやく泣き止んでくれたまゆは笑顔で僕に言う。すごく、幸せそうな表情のまゆを見て、僕も幸せを感じる。
 「まゆちゃん、りょうちゃん、そろそろ大丈夫?」
 まるで、タイミングを見計らったようなタイミングで春香が部屋の扉をノックするので、僕は春香に入っていいよ。と伝えた。
 「まゆちゃん、泣き止んだね。よし、じゃあ、こっち!来て!まゆちゃんはちょっと足痛めてる感じ出しながら歩いてよ!」
 部屋に入るなり春香は僕とまゆの腕を掴んで引っ張って歩き出す。
 「え、ちょっ、春香?」
 「春香ちゃん!?」
 「お祭り、途中だったからさ…今からお庭で花火しよーって、春ちゃんとりょうたが花火買ってきてくれたんだ。だから、花火やろ」
 春香にそう言われて庭に連れて行かれる。庭ではお父さんが蝋燭に火を付けていてお母さんがスイカを用意してくれていた。春とりょうた君は笑顔で花火を楽しんでいておばあちゃんがその様子を楽しそうに眺めていた。そこに僕たちも混ざった。この、幸せな家族のような構図に馴染むことが出来ていて、まゆはすごく幸せそうだった。まゆを否定する人はいない。まゆを受け入れてくれていて、まゆはすごく幸せそうだった。
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