お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
迷子
 「春香、まゆ、次はたこ焼きとか食べない?」
 「いいね!賛成!まゆちゃんは………あれ?」
 「え、まゆ?」
 みたらし団子を口に咥えながら、さっきまでちゃんと春香とまゆと手を繋いでいたはずなのに祭りの人混みでいつの間にかまゆが居なくなっていた。
 「まゆちゃん、はぐれちゃったかな…」
 「連絡してみようか」
 「あっ…」
 僕がスマホを操作し始めると春香が慌てた表情で僕に2つのスマホを見せてきた。1つは春香のスマホ…もう1つは……
 「何で春香がまゆのスマホを?」
 「その…まゆちゃん、片手はりょうちゃんと手繋いでて、もう片方の手で水ヨーヨーで遊んでたから預かってたの……」
 「あちゃー」
 先程、ヨーヨーすくいの屋台で水ヨーヨーを楽しそうに取って楽しそうに遊んでいたかわいらしいまゆの姿を思い返す。かわいいわぁ。って、今はそんな場合じゃない。
 「春とりょうた君にまゆとはぐれたから見かけたら保護しておくように依頼するか…」
 「うん。そうだね」
 僕はまゆに連絡しようとしたのをやめて春とりょうた君に連絡をする。すぐに返事が来て屋台周りながら見かけたら保護して連絡してくれると約束してくれた。
 「まゆちゃん、大丈夫かなぁ…」
 「まあ、さすがに大丈夫だとは思うけど…」
 まゆはたまにぬけてるからなぁ…初めて来た土地でスマホを持たずに1人きり…すごく不安だ。
 「早く探そう」
 「そうだね」
 僕は春香と手を繋いで歩き始める。春香は履き慣れない下駄で歩きづらそうだったので、春香に無理をさせないくらいのスピードで急いでまゆを探し回る。
 「りょうちゃん、春香ちゃん……」
 気づいたらりょうちゃんと繋いでいたはずの手には何も繋がれていなくて、りょうちゃんと春香ちゃんは居なくなっていた。先程まで感じていたはずのりょうちゃんの温もりが消えて寂しさを感じながらまゆはスマホを探すが、先程春香ちゃんに預けたのを思い出して一気に不安な気持ちが倍増した。
 周りを確認しても見ず知らずの建物ばかりでここがどこかすらわからなかった。最初は、適当に歩いていればりょうちゃんと春香ちゃんに会えるかな。と思ったのだが、全然見つからない。しかも、なんとなく人通りが少なくなってきて屋台も減っている気がする。戻った方がいいかな。と思いながら同じ場所を行ったり来たりしていた。
 不安だった。りょうちゃんと春香ちゃんの名前を心の中で何度も何度も呼び続けながらまゆは同じ場所をさまよっていた。気づいたらまゆは泣いていた。情けない話だが、不安でいっぱいでその場で泣いてしまった。
 「え、ちょ、お姉さんどうしたの?」
 まゆの様子を見てすぐ側にあった屋台にいた女性がまゆの元へ駆けつけてくれる。
 「えっと、りょうちゃんと春香ちゃんがいなくて、えっと、えっと…」
 まゆは軽くパニックになっていて自分でも何を言っているかわからないくらいになっていた。
 「はいはい。ちょっと落ち着いて、えっと、迷子…かな?見慣れない顔だし他所の人なのかな…ん?りょうちゃんと春香ちゃん?ねえ、お姉さん、りょうちゃんと春香ちゃんの連れなのかな?」
 まゆは泣きながら黙って頷いた。
 「あの2人、知り合いだから呼んであげる。とりあえずここじゃ落ち着けないだろうしこっちおいで」
 そう言いながら女性はまゆを屋台の側まで連れて行って屋台の横に折り畳みの椅子を用意して屋台に並んでいたリンゴ飴を1つまゆにくれた。なんか、迷子の子どもみたいな扱いされてるけど、まゆは迷子じゃないもん。迷子になったのはりょうちゃんと春香ちゃんだもん。
 「まゆ、よかった…」
 まゆに声をかけてくれた女性が電話をかけるとしばらくしてりょうちゃんと春香ちゃんがやって来てくれた。
 「りょうちゃん、春香ちゃん」
 まゆは速攻りょうちゃんに抱きつく。まゆに声をかけてくれた女性はえ?と割と大きな声で驚いていた。
 「えっと、りょう君?あんた、春香ちゃん悲しませてないでしょうね?」
 まゆに声をかけてくれた女性は拳を握りしめて笑顔でりょうちゃんに尋ねる。なんとなく笑顔が怖かった。さっきまではすごく優しそうだったのに…
 「みのちゃん、お、落ち着いて、大丈夫だよ。私とりょうちゃん、仲良くやってるから、私、りょうちゃんのおかげで毎日幸せだから」
 春香ちゃんが慌てた様子で止めに入るとまゆに声をかけてくれた女性はとりあえず落ち着いた様子になる。
 「みのり先輩、お久しぶりです」
 「久しぶりだね。さっそくで悪いけど、状況説明してくれる?そこの迷子ちゃんとりょう君はどういう関係?私、言ったよね?春香ちゃん傷つけたら許さへんぞって」
 まゆに声をかけてくれた女性は状況が全く理解できん。と言うようにりょうちゃんに問いただし、りょうちゃんは現状を説明していた。
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