お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

昔の思い出





 「田舎って暇でしょう?」

 帰省2日目のお昼前、朝食を食べた後は3人で僕の部屋でグダグダしていた。春香とは昔からよくこうして暇な時間を暇な時間として過ごしていたが、まゆはなんとなくそわそわしている感じがしたので僕は笑いながらまゆに言った。

 「そんなことないよ。りょうちゃんの側にいられるだけでまゆは幸せだもん」

 そう言いながら僕の真横にやってきて僕にもたれかかるまゆがかわいすぎる。そんなまゆに対抗するように春香も僕の真横にやってきて僕にもたれかかる。かわいすぎかよ。まじで幸せ。

 「それにしても暇だねぇ…」
 「春香ちゃんとりょうちゃんは昔、どうやって過ごしてたの?」

 春香が暇、と言うとまゆが春香に尋ねる。春香は、何してたっけ?と言うような表情で僕を見つめるが、僕もどうやって過ごしていたかいまいち思い出せない。

 「駄菓子屋さんとか行ってた気がする…」
 「あー、懐かしいね。3年前に無くなった駄菓子屋さん。りょうちゃんとよくお小遣い握りしめて行ってたね」
 「今無いんじゃ意味ないじゃん…」
 「あとは…あ、夏だと川とか行ってた気がする」
 「懐かしいね。小学生の時、りょうちゃんが調子のって足の届かない深いところに行って溺れそうになった川…」
 「春香、さらっと恥ずかしいこと暴露しないで…」

 僕と春香の昔話をまゆは笑いながら聞いていた。でも、なんていうか、笑顔の中にうっすらと、話に混じれない悲しさのようなものがあったりした。

 「行ってみる?僕たちが行っていた場所、穴場だからあまり人いないだろうし…」
 「行きたい!けど、水着ないしなぁ…」
 「私のやつ貸そうか?実家帰れば昔のやつあるよ」
 「ほんと!?じゃあ、行く」

 というわけで川に行くことになった。お母さんに川に行くって伝えると、だったらお昼は川でバーベキューでもしたら?と言われたのでそうすることにした。家の物置にあるバーベキュー用の道具をまゆの車に乗せて、近所のスーパーでお肉と野菜の買い出し、そして、春香の実家に向かい、春香の部屋で春香とまゆは水着に着替える。

 「りょうちゃん、お待たせ」

 春香とまゆが着替えている間、僕は春香の実家の空き部屋で着替えを済ませて、玄関で春香とまゆを待っていた。まゆに声をかけられて振り返ると着替え終わった春香とまゆが立っていた。水着+パーカーって最強だよね。春香もまゆもすごく綺麗な脚とかいろいろやばい…

 「その水着懐かしいね。たしか、中学生の頃、プール行った時に春香が着て…」
 「りょ、りょうちゃん…」

 それ以上は言っちゃダメ。と言うような視線を春香が僕に向けるが遅かった。

 「春香ちゃんが中学生の時の水着しか、まゆの胸には合わなかったので。下はちょっときついけど、おかげさまで上はちょうどいい感じです」

 と、フリルのついた可愛らしいビキニ姿でまゆは僕に言う。ごめんなさい…悪気はなかったです。中学生…

 その後、車の中でまゆにかわいい。かわいい。と言い続けてなんとか機嫌を直してもらえた。

 というわけで、川に到着!川の側の空き地に車を停めて車から荷物を下ろす。

 「あ、やっと来た」
 「春ちゃん!………」

 車から荷物を下ろしていると妹の春と、春香の弟のりょうた君がやって来た。春もりょうた君も水着姿だから僕たちに便乗して川に泳ぎに来たのだろう。だが、春に合ってまゆのテンションが上がったと思った途端、まゆのテンションが急降下した。どうしたんだろう?と思うとまゆは春の胸を憎むべきもののような目で睨んでいた。まゆの視線に恐怖を感じた春はゾッとした様子で胸を両手で隠した。まゆ、大人気ない……

 春たちも合流して、テキパキとバーベキューの準備をする。昔からしょっちゅうしていた夏の恒例行事なので、まゆ以外の4人でテキパキと準備を済ませてしまう。まゆはすごいなぁーと言いながら先に用意したテーブルで食材とかの準備をしていてくれた。

 という感じで準備を済ませてそれからはお祭り騒ぎだった。5人でバーベキューを楽しんで、川で泳いだりいろいろ楽しんだ。最初は、僕たち4人のノリが理解していなかったまゆも、時間が経つにつれて馴染んで一緒に楽しんだ。

 お昼を過ぎてしばらくすると僕のお母さんと春香のお母さんがやってきてスイカを差し入れてくれた。お母さん同士は先程、僕たちが用意したバーベキュー用の折り畳み椅子に座り日陰でゆっくりお喋りをしていた。僕たちはスイカを食べたりしながら夕方まで子どものように遊び続けた。

 「これが、りょうちゃんと春香ちゃんの思い出の景色なんだね」
 「うん」
 「まゆも、一緒にいたかったなぁ…羨ましい…」
 「これからはずっと一緒だよ」
 「ありがとう」

 泳ぎ疲れて川から出て石の上でまゆと並んで座りながらそんなやり取りをした。その時のまゆの表情はやっぱりまだ寂しそうだった。これからずっと一緒でも、昔からずっと一緒にいたかった。という思いは消えないのだろう。

 「せっかくまゆと一緒に帰省したからさ、まゆもいっぱい楽しんでね。何もない田舎だけどさ、少しでもまゆに僕と春香の地元を楽しんでもらいたいなぁ」
 「ありがとう」

 そうして、川で遊んでいるとあっという間に夕方になってしまったので、川まで自転車で来た春とりょうた君と別れて、僕たちは一度僕の家に戻り荷物を戻して着替えを済ませて、まゆの車の中を掃除して、春香の実家に向かった。






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