お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

帰省初日





 「「春ちゃん!」」

 道中、偶然出会った妹の春と、春香の妹のりょうた君を見て、春香とまゆが僕から手を離して春をギュッと抱きしめてかわいい。かわいい。とめっちゃかわいがっていた。う、羨ましい…

 それにしても春のどこがかわいいのだろう。かわいさのカケラもない。ほら、今だってドヤ顔で羨ましいか?と言うように僕を見てるし…

 「りょうた君、久しぶり、元気だった?春は迷惑かけてない?」
 「お久しぶりです。おかげさまで元気ですよ。春ちゃんとも毎日楽しく暮らせてます」

 クソ生意気な春とは違ってりょうた君は春香に似て素直でいい子だ。春香に似て少し大人しいところがあるから春の尻に敷かれていないか心配だったけど大丈夫そうだ。

 「春香お姉ちゃん、まゆお姉ちゃん、ちょっと苦しいなぁ…」
 「「あ、ごめんね」」

 わざとらしー。お姉ちゃんとか言っちゃってまじわざとらしいわー。春香とまゆも騙されちゃダメだよ。本当に、生意気でかわいさのカケラもないからね。猫かぶってるだけだよ……

 「そういえばりょうた君と春は何してるの?」
 「お母さんに頼まれてお買い物です。りょうさんたちはもしかして家に向かってる途中でした?」
 「うん。そうだよ」
 「そうですか。お母さん、お姉ちゃんが帰ってくるの楽しみにしていたから喜びますよ」

 礼儀正しくてめっちゃいい子…なんでこんないい子が春なんかと付き合ってくれたのだろう。僕は春香とまゆにチヤホヤされてドヤ顔を僕に向けているかわいさのカケラもない妹を見てため息を吐く。

 「春ちゃん、そろそろ行かないとお母さん困っちゃうから急ごう」
 「そうだね。春香お姉ちゃん、まゆお姉ちゃん、また明日お話とかしよーね」

 最後まであざとさを残して春はりょうた君と手を繋いで商店街がある方へ歩いて行った。時間的に夕飯に必要なものの買い出しだろうなぁ。

 「春ちゃんめっちゃかわいかったね」
 「うん…天使だよあの子は…」

 僕と手を繋ぎなおしたまゆと春香がそんなやり取りをしているのを聞き、どこが天使なんだ?と疑問を抱きながら僕は歩いた。少し歩くと春香の実家に到着して、春香のお母さんに挨拶する。

 春香のお母さんに春香が用意したお土産を渡して玄関先で少し話した。その際、春香のお母さんから娘をよろしくお願いします。と改まって言われて、春香のお母さんが春香のことをどれほど大切に思っているのかが、伝わってきた気がした。

 「そういえば、春はご迷惑かけてないでしょうか?」
 「春ちゃん?大人しくてすごくいい子よ。さっきも豆腐切らしてるって言ったらすぐに買い物に行ってくれて助かってるわ」

 春の猫かぶるスキルすごいなぁ…みんな騙されてるよ。そんなこと僕の家族の前で言っても絶対信じないからね。

 「りょうちゃん、そろそろ行こうか。お母さん、明日また改めて来るね」
 「はいはい。りょうくんのお母さんによろしく言っておいてね」
 「帰ってきたのにゆっくりできなくてごめんなさい」
 「気にしないでいいわよ。春香はもう大人なんだから、自分がしたいようになさい」
 「うん。ありがとう」
 
 親子の会話って感じがしていいなぁ。と僕とまゆが思っていると別れ際に春香のお母さんがとんでもない爆弾を投下した。

 「春香、もう20歳になったし、明日はお父さんがゆっくりお酒でも飲みながらお話したいって言ってたわよ」

 お酒…と言う単語を聞いて僕とまゆはぞっとする。春香、酒癖悪いから…いや、悪くはないんだけど…なんか、いろいろ大変なんだよ。春香が酔うと……

 「うん。わかった。お父さんにも明日ゆっくり挨拶するよ」
 「じゃあ、明日の夜はお寿司でも頼んでいただきもののいいお酒開けようかしら」

 わかっちゃダメ。お願いだから、お酒だけは……と思うが時すでにお寿司だった。明日の夕食は…大変そうだ。って言うか、春香のお父さんお酒飲んでるところ見たことないけど大丈夫だよね?春香みたいにお酒めちゃくちゃ弱いってオチはないよね?不安…

 不安に思ったのは僕だけでなく、まゆもだった。まゆも酔った春香の被害に遭ってるからなぁ…でも、なんだかんだでまゆもお酒めちゃくちゃ弱いし、明日はまゆだけでも通常通りいてもらうようにしよう。僕1人で酔っ払いの相手はしたくないから…

 そう決意しながら僕は春香の実家を出て春香とまゆと手を繋いで家に帰る。家に帰ると夕食が出来上がっていて久しぶりの実家の料理を楽しみ、移動の疲れが溜まっていたのか、夕食を食べ終え、お風呂に入ると、帰省1日目はすぐに眠りについた。








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