お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

夜中のデート





 「りょうちゃん、ドライブデートするのはいいけどさ、やっぱりちょっとお腹すいちゃったから軽く何か食べない?春香ちゃんには申し訳ないけど……」
 「春香も軽く軽食を食べた。って言ってたし、軽く何か食べなよ。って言ってくれたからお言葉に甘えようか」
  「うん」

 僕とまゆのデートにきちんと気を遣ってくれる春香の存在が本当に有り難く感じた。

 「何食べる?」
 「初めてのドライブの時と同じでいいんじゃないかな?」
 「そうだね。そうしようか」

 まゆと初めてドライブした時のことを再び思い出す。行き先が決まり、まゆはすぐにハンバーガーショップのドライブスルーに入る。

 オレンジジュースにポテトを注文してお会計を済ませてドライブスルーを終える。

 「りょうちゃん、まゆに食べさせてくれるよね?」
 「うん」

 あの日は後ろめたさやいろいろ複雑な感情があったが、今は何も抵抗なくまゆにポテトを食べさせてあげている。僕がポテトを食べさせてあげるとたまにわざとらしく僕の指を舐めたりしてくるまゆがばかみたいにかわいく感じた。

 「りょうちゃん、まゆ、行きたいところあるんだけどいい?」
 「いいよ。じゃあ、そこに行こう」
 「ありがと」

 まゆにポテトを食べさせてあげたりしながら僕とまゆはお話をしたりしてドライブデートを楽しむ。暗い海沿いの一本道で景色が綺麗。とかは思わないが、まゆと2人でいるだけで僕は本当に幸せな気持ちだ。まゆはどう思っているのだろう。僕と同じことを思ってくれているのかな。と思いながらまゆの表情を見ると、すごく幸せそうな表情をしてくれていた。

 「まゆ、どこに向かってるの?」
 「えへへ。内緒〜もうすぐ着くよ」

 もうすぐ着く。と言われて周囲を見渡すが、あたり一面真っ暗で薄暗い街灯が少し灯っているくらいだ。真っ暗な海が広がっていて、海面に月の光が当たって少し綺麗だな。と感じたが、行き先はわからなかった。

 「とーちゃく!降りよ!」
 
 まゆに言われて車から降りる。降りた先にあったのは灯台だった。意外と小さいんだなぁ。と思いながら灯台を眺めているとまゆが僕と腕を組んで、「こっち!こっち!!」と僕を連れて歩き始めた。

 「この時間だと人少なくていいね。ほら、座ろ」
 「うん」

 僕はまゆと並んで灯台の下にあるベンチに並んで座った。夏の夜とはいえ海辺の夜は寒い。まゆが寒そうにしていたので、念のために車から持ってきたパーカーをまゆに着せてあげる。

 「ありがと」
 「いいよ。ほら、座ろ」
 「うん」

 僕はまゆと並んでベンチに座る。ベンチに座るとまゆは僕にもたれかかってきた。僕はまゆをそっと受け止める。

 「綺麗だね…」
 「だよね。まゆ、一回来てみたかったんだ」

 僕とまゆは景色を眺めた。暗い海面に灯台の光、月の光がシンクロするように重なりとても綺麗な景色が目の前にはあった。目の前の景色を見るまゆの瞳は、水面の光に照らされてキラキラ輝いて見えてドキッとした。

 「なぁに、まゆを見て?」
 「まゆが綺麗だなぁって思ってさ」
 「えへへ。ありがと」

 そこからはちょっと無言で僕とまゆは景色を眺めていた。

 「りょうちゃん、昨日…春香ちゃんとキスしたんだよね?」
 「うん」
 「ならさ、ここでまゆともキスして」
 「わかった」

 僕とまゆは立ち上がり、灯台の真下にある鐘の前に移動した。灯台の光と月の光に包まれながら僕とまゆは口付けをする。まゆをギュッと握りしめていつまでも続けたかったが、まゆが苦しそうにしだしたタイミングで口を離す。

 「りょうちゃん、今日はありがとう」
 「こちらこそありがとう。楽しめた?」
 「うん!おかげさまですごく楽しくてすごく幸せでした。ありがとう。大好き」
 「僕もまゆのこと大好きだよ」

 そう言って僕がまゆを見つめるとまゆは照れくさそうに目を逸らした。

 「か、帰ろうか。春香ちゃん待たせすぎたら悪いしさ」
 「そうだね。帰ろう」
 「ニヤニヤしないでよ!」

 まゆは恥ずかしそうに顔を隠しながら歩く。そんなまゆをかわいい。と思いながらまゆの横を歩いた。

 「まゆ、ちゃんと前見ないと危ないよ…」
 「りょうちゃんが変なこと言うからじゃん」
 「ご、ごめん」

 僕が謝るとまゆは真っ赤な顔を見せてくれた。そして僕の後ろに回り込んで僕をギュッと抱きしめた。

 「こうすればまゆをりょうちゃんが連れてってくれるよね?」

 まゆに抱きしめられてドキッとしながら僕はまゆを連れて車に戻る。車に乗る頃にはまゆの顔はいつも通りになっていた。車に乗って、僕とまゆは春香が待つアパートに帰る。





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