お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

告白の後




 どうなったんだろう……
 さきは想いを伝えたのかな…
 気になっているが、確認しようがない。
 
 「ゆいちゃん、こんなところでボーっとしてどうしたの?」
 「え、あ、ゆき先輩お疲れ様です」

 私と同じトランペットパートのゆき先輩が私に声をかける。廊下のソファーにボーっと座っていた私はゆき先輩に声をかけられてびっくりした。

 「さっき、あっちでさきちゃんとこう君が2人で話していたみたいだけど、何かあったの?」
 「え、あ、いや…えっと、ゆき先輩、さき、どんな様子でした?」

 気になりすぎて私はゆき先輩にさきの様子を尋ねた。

 「えー、ゆき、ただ近く通っただけだからな…こう君の表情は見えたけどすごく真剣な表情で話していたみたいだったから何かあったのかな…ってちょっと気になったくらいかな…」

 こう君が真剣な表情-じゃあ、さき、想いを伝えたのかな?

 「やっぱり何かあったの?」
 「あはは…内緒です。できれば、さきとこう君が2人でいたことはここだけの話にしてあげてください」
 「あ、もしかしてそういうこと?」
 「わからないですけど可能性は高そうです…」

 私の言葉を聞いたゆき先輩はそっかそっか。とニヤニヤしながら呟く。この人、恋話大好きだもんな…

 「ちなみに、どっちが好きなの?」
 「内緒です」
 「あー、でも、ゆいちゃんが知ってるってことはさきちゃんなのか…さきちゃんくらいかわいければ、男の一人や二人簡単に落とせそうだけどね」
 「さきはピュアなので…」

 私が苦笑いをしながらゆき先輩に返すとゆき先輩はたしかに。と笑う。普段はゆき先輩、めちゃくちゃいい人だけど恋話が混ざるとちょっとめんどくさい……

 「わかっていると思いますけど、ここだけの話にしてくださいね…」
 「うん。わかってるよ。あ、さきちゃんとこう君…」

 私がゆき先輩に念押しするとさきとこう君が二人で歩いてきた。

 「じゃあ、ゆきは消えるね」

 ゆき先輩はそう言いながら慌てて逃げ出した。さきの表情が少し暗い気がするので、なんとなく何かを察したのだろう。
 廊下のソファーに座っていた私に気づいて、こう君はそそくさと私の横を通って部屋に戻って行く。

 「………ジュースでも飲む?奢ってあげる」
 「ありがとう…」

 私はさきの手を取ってさきと手を繋いで廊下を歩き自販機に向かった。

 「何がいい?」
 「コンポタ…」
 「コンポタかい笑」
 「温かいの飲みたい」
 「あ、なるほどね」

 私は自販機にお金を入れてコンポタを2つ買い、1つをさきに渡して近くのソファーにさきと並んで座る。

 「どこまで聞いてた?」
 「さきがこう君に、こう君は特別…みたいな感じのことを言ったところまで…」
 「そっか……」

 さきはコンポタの缶の蓋を開けて少しだけコンポタを飲み込んだ。

 「ダメ…だったの?」
 「うん…あのあとね、私、こう君に告白したの。そしたら…こう君、気になっている人がいるからって…」

 さきは泣きながら私に言って、コンポタをソファーの前にあったテーブルに置いて私に抱きついてきた。私はさきを受け止めてさきの頭をあやすように撫でてあげる。

 「そっか…さきみたいなかわいい子を振るなんてこう君ももったいないことするね…」

 何て声をかけてあげればいいのかわからず、少しふざけたようなことを私はさきに言ってしまった。

 「ゆいには敵わないもん…」
 「え?」
 「こう君…ゆいのことが気になってるって……」

 おぅ…まじか……えーよりによってなんで私……こう君には申し訳ないが……私はまだ、りょうくんに夢中だぞ…ぶっちゃけ、りょうくん以外は無理だ。

 「まじ?」
 
 念のために確認をすると、さきは泣きながら頷いた。まじかぁ……

 「なんか…ごめんね」
 「ゆいは悪くないから…気にしないで…」

 気にするよ。大好きな親友の恋の妨げみたいなことをしてしまっているのだから……
 さきはいっぱい泣いた。すごく悲しそうに、すごく辛そうに泣いた。いっぱい泣いて、泣き止んで、私とさきは女子用の大部屋に戻る。女子用の大部屋は今日、2つ用意されていて、私とさきはりっちゃんさん、ゆき先輩、春香先輩、まゆ先輩、陽菜ちゃん、あーちゃん先輩と同じ部屋だった。
 私とさきが部屋に戻る頃には0時を過ぎていて、あーちゃん先輩に少し注意をされたが、あまり厳しくは言われなかった。きっと、あくびをしながら布団の上でスマホをいじっているゆき先輩があーちゃん先輩に何か言ってくれたのだろう。ありがたい。

 私とさきは歯を磨くために洗面所に向かう。私とさきが歯を磨き終わると、部屋の電気が消される。

 「ねー、ゆきちゃん、これ何?」
 「え、わからないです笑とりあえず面白いから写真撮っておきましょう」

 電気を消してからしばらくして、再び部屋の電気が付いた。並べられた布団はすごいことになっていた。りっちゃんさんに左右から春香先輩と陽菜ちゃんが抱きついていて、春香先輩の背からまゆ先輩が春香先輩を抱きしめて眠っている。何この状況、わけわからん。

 「ゆきちゃん、写真撮ったらダメだよ笑」

 笑いながらあーちゃん先輩がゆき先輩に言うがゆき先輩が撮れた写真をあーちゃん先輩に見せるとあーちゃん先輩は笑いながら「私に送っておいて」と言っていた。ゆき先輩は「りょうちゃんに送っておこう」と言い、りょうくんとあーちゃん先輩に先程の写真を送ったみたいだった。

 「ゆい、一緒に寝ていい?」
 「ん?いいよ」

 私が許可を出すとさきは私の布団に入ってきて私に抱きついて眠りにつく。かわいいなぁ。

 私は傷ついているはずのさきの癒しに少しでもなれているのかな……




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